第067話 一方そのころ……
「さあ、今日もがんばろー!」
ダンジョンにやってくると、サクラさんが元気に手を挙げた。
「おー! って、お姉ちゃん、どうしたの?」
実弟ではないパリティが私を姉呼びで声をかけてくる。
「いえ……いつもはキミドリさんがいたのに今日はいないので、違和感があっただけです」
「お姉ちゃんは心配性だなー。サクラお姉ちゃんの元気を分けてあげたいよ」
お姉ちゃんって呼ぶな!
あと、サクラお姉ちゃんとも呼ぶな!
「まあ、キミドリさん達もそのうち来るでしょ。それまでは、この3階層でコボルト相手にウォーミングアップといこうよ。今日はお父さんの依頼も最後だし、今度からはこの3人で探索するんだからアンジュも慣れないとね」
サクラさんは本当に優しい。
主はきっと世界を優しさに溢れさせるためにこの子を産んだのだろう。
主よ、感謝します!
「お姉ちゃんさー、いちいち祈るのをやめたら?」
「パリティは黙っててください」
私はパリティのことを呼び捨てで呼んでいる。
私は基本的に他人を呼び捨てにすることはないのだが、一応、姉弟という設定なので、こうなっている。
このうさんくさい天使を呼び捨てで呼ぶのも、お姉ちゃんと呼ばれるのも非常に不快だが、こればっかりは仕方がない。
「パリティ君はお姉ちゃんのことが心配なんだよねー」
「実はそうなんだよー」
嘘つけ!
これまで何度か一緒に行動して気付いたが、パリティは嘘ばっかりつく。
サクラさんと同じで明るく、社交的だが、裏表のないサクラさんとは正反対だ。
「姉弟っていいねー。私、一人っ子だからなー」
サクラさんは羨ましがっているが、私達は姉弟ではない。
でも、兄弟姉妹が欲しかった時期は私にもあるので、気持ちはわかる。
「こればっかりは仕方がないよ。将来、素敵な伴侶を見つけて子供を産んだら弟や妹を作ってあげるといいよ」
地味にセクハラでは?
「あははー。そうしよっかなー。素敵な旦那さんかー。いるかなー?」
サクラさんは彼氏と別れたばっかりらしいからなんて声をかければいいかわからない。
「じゃあ、僕が立候補してあげるよー。今ならアンジュもついてくるよー」
「あははー。パリティ君、ナイスアイデア!」
「でしょー? 3人で仲良く暮らそうよー。あはは」
陽キャ共め…………
正直、根暗で陰キャな私はこの2人のノリについていけない時がある。
「じゃあ、ウォーミングアップを始めよっかー。金髪姉弟、ついてこーい!」
「いえーい! リーダー、かっこいい!」
パリピ過ぎるよ…………
サクラさんはわかるけど、パリティは天使のくせに何でそんなに明るいんだろう?
私はこのノリに加わらないといけないのかなと思いつつ、自分には無理だと思い、落ち込んだ。
その後、私達は3階層のコボルトを倒していく。
基本的にはサクラさんが槍で戦うが、たまに剣を持っているパリティも戦闘に加わっている。
私は基本、サマンサさんに教えてもらったバフ、デバフ魔法で援護をしていた。
私達が何匹かのコボルトと戦い終えたが、未だにキミドリさん達はやってこない。
「キミドリさん達、遅いねー。集合は1時だったよね?」
サクラさんも遅いと思っているようで、首を傾げる。
「ですね。今は……えっと、2時前です。さすがに遅いかと思います」
私は操作に慣れていない携帯で時間を確認した。
「ふふ。きっとおもしろいトラブルに巻き込まれたんだよー。くっ、ぷぷ」
パリティは何かを知っているらしく、笑いを堪えている。
『何かあったんですか?』
私は気になったが、サクラさんの前であの≪少女喰らい≫のことを聞くのをためらったため、念話を使ってパリティに聞くことにした。
『いやいや、≪少女喰らい≫の通常運転だよ。未成年に手を出して、警察に捕まりそうになっている』
ああ…………確かに通常運転だ。
≪少女喰らい≫のハルカ・エターナル・ゼロ。
アトレイアでは知らぬ者はいない伝説の吸血鬼である。
恐ろしいまでの魔力を持つ王級吸血鬼だが、非常に憶病であり、遭遇してもすぐに逃げ出すレアな吸血鬼だ。
ほぼ無害で有名な吸血鬼だが、一つだけ注意しなければならないことがある。
少女はあれと出会ってはいけない。
雑魚で有名な王級吸血鬼だが、相手が少女だと恐ろしい行動力を発揮し、襲ってくる。
逃げられた者はいない。
そして、一度、吸血されると、虜になってしまう。
最悪のペドフィリアであり、全世界の敵、それが≪少女喰らい≫なのだ。
『大丈夫ですかね?』
『大丈夫でしょ。王級吸血鬼だもん』
それが逆に心配ではある…………
「うーん……」
私とパリティが念話で話していると、サクラさんが私達を見て、考え出す。
「サクラさん、どうしました?」
私はサクラさんが気になり、聞いてみる。
「いや、アンジュとパリティ君って、たまに2人でアイコンタクトをするよね。なーんか疎外感がある」
念話中は黙ってしまうからサクラさんからしたら気になるのか…………
「僕達は姉弟だからねー。家族だからこそ分かり合えることがあるのさ」
こいつ、本当に嘘つきだ…………
「うーん、ずるいなー」
「家族の特権だよー」
「いいなー。パリティ君、私と結婚しようか?」
「さ、サクラさんっ!?」
サクラさんは何を言っているんだ。
よりによって、こいつはない。
このうさんくさい天使を伴侶に選んではいけない。
「あははー。やったねー。僕、サクラお姉ちゃんのことが大好きだから本当にうれしいねー。でも、サクラお姉ちゃんのお父さんが怖いからノー」
「フラれっちゃったー。お父さんめー」
サクラさんはフラれても明るく笑う。
パリティも笑っている。
なんだ冗談か…………
「あははー。サクラお姉ちゃん、ごめんねー」
「謝んないでよー。私、みじめになっちゃうじゃん」
「ううん。本当にごめんね?」
さっきまで笑っていたパリティが真面目な顔になった。
「パリティ君? 急にどうしたの?」
そんなパリティの顔を見たサクラさんも真顔になる。
「いやー、こんなことになるとは予想外だったなー」
パリティはサクラさんの問いには答えず、私を見た。
「パリティ?」
私も意味が分からず、パリティに聞く。
「アンジュ、君はどんだけへっぽこなのさ? 聞こえないの?」
パリティはさっきまでお姉ちゃん呼びだったのに呼び方が変わった。
いや、姉弟設定から天使モードに戻ったのだ。
私は真面目な顔をしているパリティを見て、ただ事じゃないと思い、言われた通り、耳をすませる。
すると、通路の奥から鈴の音が聞こえてきた。
最悪の鈴の音だ…………
「ここはダンジョンよ! 何でゾロネがいるの!?」
ゾロネは鈴をつけている天使で有名なのだ。
鈴が鳴れば、≪無情≫が訪れる。
そして、命を奪いにやってくる。
何で!?
何で、ダンジョンにいるの!?
私はゾロネと戦う覚悟は出来ていた。
でも、今はマズい。
今は…………サクラさんがいる。
私はサクラさんには絶対に見られたくないのだ。
そして、私の正体を教えたくない……
「ゾロネ? 人の名前? 知り合い?」
サクラさんはまったくわかっていない。
当然だ。
サクラさんはこの世界に生きる普通の人間なのだから。
「僕もゾロネがダンジョンに来るとは思っていなかったなー。というか、あいつが人が多い昼間に現れるのは完全に想定外だったよ…………ほら、来たよ」
私とパリティは話し合いの中で決めていたことがある。
それは私達とゾロネの争いにサクラさんやサクラさんの家族を巻き込まないこと。
「え?」
サクラさんの間の抜けた声が聞こえた。
今、私達の目の前にぼろぼろのコートを着て、フードを被ったゾロネが現れたからだ。
ゾロネは俯いているため、顔が見えない。
「やはり天使か…………天使? いや、ハーフか……アンジュだな…………それと人間か……?」
ゾロネはぶつぶつとつぶやくように言い、顔を上げ、私達を見る。
そして、ゾロネが私達を見たことで私達にもゾロネの顔が見えた。
「ひえっ!」
後ろからサクラさんの悲鳴が聞こえる。
それもそのはず、ゾロネの顔には肉も皮もついていないのだ。
「が、骸骨!? もしかして、スケルトン? でも、スケルトンって、4階層だよね?」
サクラさんは状況をまったく理解していない。
私達はサクラさんやサクラさんの家族を巻き込むつもりはない。
でも、一緒にダンジョン探索をしていた。
その理由がゾロネのこの顔だ。
ゾロネは骸骨の姿をした天使なのだ。
だから、こいつがこの世界で発見されると大問題になる。
どう見ても人外だし、モンスターにしか見えない。
ゾロネだって、それはわかっているだろう。
だから、私達はゾロネが昼間に行動することはないと踏んでいた。
しかし、ゾロネは間違いなく、ここにいる。
ダンジョンに来るには必ず、協会を通過しないといけないのに…………
もし、協会にこんなのが来たら大騒ぎになるはずだ。
訳が分からない。
「アンジュ、落ち着いて。サクラお姉ちゃん、悪いけど、下がっててくれるかな。こいつは僕とアンジュの敵なんだよ」
パリティはそう言って剣を構えた。
「ここでやるの?」
私は冷静さを取り戻し、他に手がないことはわかっているが、パリティに確認する。
「逃げ切れると思ってんの? ここ、ダンジョンだよ?」
ダンジョンは基本的に一本道で遮蔽物がない。
確かに逃げても背後から魔法を撃たれるだけだろう。
「ねえ、あれってモンスターじゃないの? だったら私も戦うよ?」
パリティが剣を構えたことでサクラさんも槍を構える。
「サクラさん、ごめんなさい。あれはモンスターじゃないんです…………あとで説明するから下がっていてください。あれは人間を殺さないから……」
天使は人間を殺さない。
天使にとって、人間は愛玩動物だから……
「アンジュ、援護をお願いね」
パリティがそう言うと、パリティの姿が消えた。
直後、パリティがゾロネの右から現れ、持っている剣で切りかかる。
しかし、ゾロネはいつの間にか持っていた剣でパリティの剣を受けた。
2人とも速い!
さすがは戦闘タイプの天使だ。
魔力うんぬんではなく、単純に戦闘能力がすごい。
剣を受けられたパリティだったが、すかさず何度も切りかかる。
しかし、その度にゾロネは剣で受け、時には隙をついて反撃していた。
私もパリティにバフ魔法をかけ、能力を向上させたり、逆にゾロネにデバフをかけ、能力を低下させているが、パリティは劣勢だ。
魔力も身体能力もゾロネの方がはるかに上なのだ。
「ね、ねえ、人間を殺さないんじゃないの? パリティ君、殺されそうじゃない?」
サクラさんが不安そうに聞いてくる。
「ごめんなさい、ごめんなさい。私達は人間ではないんです。巻き込んでしまってごめんなさい」
はっきり言って、パリティ程度では勝てないだろう。
つまり、パリティはここで死ぬ。
だが、サクラさんは殺されないだろう。
でも、殺されないだけだ。
天使は人間の絶望を好む。
どうなるかはわからないが、ゾロネがサクラさんをそのまま逃がすことはない…………
私のせいだ。
やはりパリティの申し出を受けるべきではなかった。
いや、違う。
受けた時に私はサクラさんから離れるべきだったのだ。
でも、私にはそれが出来なかった。
200年近く、一人だった。
だから、サクラさんの家に居られることが幸せだったのだ。
サクラさんもおばさまもおじさまも、皆、優しかった。
久しぶりに家族に会えたようだった。
「サクラさん、逃げてください。このまま真っすぐ行けば、4階層に行けます、4階層に着いたらワープの魔方陣で1階層に戻ってそのまま家に帰ってください」
そうだ。
ここはサクラさんを逃がすことだけを考えよう。
はっきり言って邪魔だし。
「アンジュ、何を言っているの!?」
サクラさんが怒った。
当然だろう。
私が逆の立場でも怒る。
「サクラさん、私達は悪しき存在なのです。あなたを巻き込むわけにはいきません。そのようなことを主はお望みではありません」
「ハァ!? 私にあなた達を置いて、逃げろって言うの!? ふざけんな!!」
「サクラさん、お願いだから聞いてください」
パリティはともかく、私はどうとでもなる。
でも、サクラさんだけには…………
「あーあ、結局、君はその選択か……」
パリティの声が聞こえたので振り向くと、すぐ近くでパリティが剣を構えたままゾロネと対峙していた。
「どういう意味です?」
私はパリティの残念そうな声が気になった。
「そのまんまの意味。君は本当に憐れだねー。まあ、いいけどね。じゃあ、後は頑張って」
パリティはそう言って、構えを解いた。
「は?」
どうしたんだ、急に?
「サクラお姉ちゃん、また後でね」
パリティはサクラさんにそう声をかけると、対峙しているゾロネとは反対方向に走っていってしまった。
「え? え?」
こいつは何を言っている?
いったい、何をしている?
「アンジュー! 頑張ってねー!!」
パリティは遠くで私に手を振り、消えていった。
あ、あのガキ!
逃げやがった!!
私を置いて逃げやがった!!
私はすぐに振り返り、ゾロネを見る。
ゾロネはパリティが逃げていった通路を見ていた。
「逃がさん…………でも、その前にアンジュを殺す…………忌まわしき呪いの子め……」
ああ…………また言われた。
呪いの子…………
何度、その言葉を耳にしただろうか?
何度、こうやって殺されかけただろうか?
ん……?
いや、私は天使と戦ったことなんかない。
そうそう、ずっと逃げてきたんだった。
私は襲ってきた天使を殺して…………いやいや。
ああ……思考が歪む。
心が乱れる。
「ゾロネ様、私は抵抗しません。私を殺すのは構いませんが、この子はただの人間です。見逃してあげてください」
私はその場で跪き、懇願する。
「アンジュ!!」
いいから逃げてくれないかなー。
サクラさん、マジで邪魔なんだけどなー。
「良かろう……」
ゾロネは小さく頷いた。
多分、嘘だろうな……
でも、本当かもしれない。
いや、んなわけねーか。
このクソ骨が私の頼みを聞くわけねーしな。
殺そう。
こんな雑魚は私の敵じゃないし、一瞬で粉々にしてやろう!
「うるさいっ!!」
私は何かが癇に障った。
どうして、どいつもこいつも私の邪魔をするんだろう?
あと少しなのに……
あと少しだったのに!
「あ、アンジュ……? どうしたの?」
私が急に叫んだため、サクラさんはびっくりして私を見る。
「…………アンジュ?」
顔がドクロなため、表情はよくわからないが、ゾロネも驚いたっぽい。
見るな。
私を見るな!
殺すぞ!!
「ああ、主よ……さあ、ゾロネ様、私を殺してください。でも、サクラさんだけは見逃してあげてください。サクラさん、行って」
私は250年間も生きた。
もう十分だろう。
悲しいけど、パパとママに会えると思えばいいかもしれない。
ぷぷっ。
ウケる。
「あ、アンジュ……? …………何で笑っているの?」
笑っている?
当然だろう。
「貴様、アンジュか……? あの≪清廉≫か? なぜ…………そんな醜悪な笑みを浮かべている」
あはは。
「笑う? そりゃそうですよ…………だって、これからお前の断末魔の悲鳴を聞けるからな!!」
アハハ!
お前の絶望をくれ!
「…………たかが男爵級の分際でほざくな」
ゾロネ様が怒っている。
…………まーじで滑稽だ!
「あはっ! たかが伯爵級天使の分際でこの大公級天使、アズラー様に逆らうとは!! バーカ!!」
もういい。
めんどくせー。
サクラさんはあとで催眠魔法をかけて誤魔化せばいい。
どうせ、最初からそのつもりだったのだ。
邪魔なこいつを始末すれば、パリティもどっかに行くだろう。
そうすれば、2人きりだ。
サクラさんは私の物になる。
私の、私のためだけの…………
「……大公級? アズラー? ≪死神≫…………? 貴様、何を言ってる……?」
「うるせーよ! ゴミクズ!! ちゃんとしゃべれや!!」
私は相変わらず、ぶつぶつとつぶやくようにしゃべるゾロネに腹が立ち、ゾロネの顔面を殴った。
「ごっ!!」
ゾロネの顔は私の拳を受けると、頭蓋骨が砕け、地に落ちた。
「それがお前の断末魔の悲鳴か? もっと甲高くしろよ。つまんねー」
私は一撃で終わった雑魚を見下ろす。
「…………何故、私がお前ごときに…………なんだ、その力は…………」
たった一発で沈んだ雑魚にお前ごときって言われちゃった。
「おー! いいねー! 素晴らしい絶望だ!! 自分よりはるかに下だと思っていたヤツに殺される気分はどうだ? 最高だろう? アハハ! マジクソウケる!!」
笑いが止まらんし!
「くっ……貴様」
「あー、もういいや…………飽きたわ。ばいばーい」
私はそう言って、地面に落ちているゾロネのしゃれこうべを踏み砕く。
直後、私の体内に魔力が入ってくるのがわかった。
「あー、久しぶりの魔力だわー。でも、全然足りねー」
伯爵級程度の雑魚じゃこんなもんか。
「…………アンジュ? どうしたの、アンジュ!?」
サクラさんが私の肩を掴み、ものすごい表情で聞いてくる。
「いや、放せや。あー、説明、説明…………って、あのクソボケはどこまで逃げたんだ?」
こういう説明はパリティがやるべきだろ。
私、口下手だからそういうのは得意じゃねーし。
「アンジュ…………」
「あー、説明ね? するする。でも、ちょっと待って。もうちょっと魔力補充をしたいんだわ」
「魔力補充って?」
私はサクラさんを無視し、通路の奥に目を向けた。
すると、複数の声が聞こえてくる。
「――――やっぱ私は悪くないと思うんだ。愛に年齢は関係ないし」
「いや、年齢ではなく、暴行がマズいんですよ。簡単に言えばレイプですよ」
「そういう言い方は好きじゃないなー。皆、心の奥底にある欲望に気付いてないんだよ。私はその心の扉を開いてあげてるだけ」
「どう言い繕っても、あなたは警察に捕まりかけた。賭けは私の勝ちです」
「まだ捕まってないもーん。キミドリちゃんの速度違反の方が早いと思うね……って、アンジュとサクラちゃん、はっけーん。ごめんね。遅くなって」
≪少女喰らい≫がキミドリさんと≪狂恋≫を連れてやってきた。
「やあ、≪少女喰らい≫」
私は≪少女喰らい≫に声をかける。
「んんー? アンジュ? 雰囲気違くない? 遅れてきた反抗期?」
私はこいつと初めて会った時からずっと思っていたことがある。
「反抗期じゃねーよ」
「もしかして、遅れてきたことを怒ってる? ごめんって言ったじゃーん。いやー、実は税金泥棒が私を捕まえようとしてたんだよ。まあ、私の機転でどうにかなったけどね!」
こいつはバカだ。
そして、死んだ方が世のためだ。
主もそれを望んでおられるだろう。