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第065話 やっぱりあんたはのり弁でも食ってな


 18階層で大根ことマンドラゴラを狩っていた私だったが、いい加減、飽きてきた。

 もう何匹狩ったのかもわからないぐらいに狩ったのだ。


「キミドリちゃーん、代わってよー」


 私は私の後ろで動画を撮り続けているキミドリちゃんにお願いする。


「うーん、私も一人の時にここで狩る予定なんですよねー。出来たら遠慮したいです」


 キミドリちゃんは私のお願いを断った。


 まあ、確かにBランクになるまでここで狩るとしたらとんでもない数のマンドラゴラと戦わないといけない。

 うーん、私の比じゃないくらいに嫌になりそう。


「じゃあ、サマンサ、代わりなさい」


 私はキミドリちゃんに断られたのでサマンサに声をかけた。


「あのー、私、サイレンスの魔法をかけているんですけど…………」


 そういえば、そうだった。

 そして、サマンサ以外は誰もサイレンスを使えない。


「ウィズー。たまにはウィズの良いところを見せてよー」


 絶対に断ってくると思うが、ウィズにも聞く。


「おぬし、どうせ妾の活躍も見ずに後ろでペチャクチャとしゃべっておるだけじゃろ」


 うーん、いつぞやのことを根に持っているな。

 ウィズって、こういうところがちっちゃいんだよなー。


「おぬしに言われたくないがな…………」


 おや、聞こえた?


「大根に飽きたんだよー」

「まあ、そんだけ狩ればなー。仕方がない……妾がやるか。もう十分に撮れたし、撮影はいいぞ」


 ウィズ監督はキミドリちゃんカメラマンに撮影を止めるように言った。


「ウィズさんの動画で一気にバズれますよ?」


 キミドリちゃんの言う通り、絶対にバズるな。

 だって、猫だもん。

 猫がしゃべって、魔法を使ってモンスターを倒す。

 うん、間違いなく、バズる。


「妾は天下の魔王じゃぞ。そんな見せものにはなりたくないわ」


 あのー、あなた、私を見せものにしてません?


「え? 私って、見せもの?」

「おぬしは容姿に優れておるし、かっこいいからな。これもカリスマを持つものの定めじゃ」


 カリスマ?

 ふふ、私、カリスマ!


「そっかー。じゃあ、しょうがないね」

「じゃなー…………すまん」


 何故に謝る!?


「ウィズ、変なことしてない?」


 こいつ、さっきから私の目を見ない。


「さーて、これからは妾の華麗な魔法を見せてやろう。妾は魔法のスペシャリストじゃからなー」


 ウィズはキミドリちゃんの肩から降りると、すたすたと奥に歩いていく。


「ちょっと待ちなさい」


 私はそんなウィズを追いかけ、問い詰めたが、猫は一切、しゃべらなかった。


 その後、大根狩りをウィズと交代し、ウィズの華麗な魔法を見ていたが、ウィズも大根狩りに飽きたらしいので、帰ることにした。


 私達はギルドで精算を終えると、自宅に帰宅し、宴会を始めた。


「いやー、大根狩りはつまんないけど、儲かったわねー」


 私は上機嫌にビールを飲みながらキミドリちゃんに話しかける。


「ですねー。54匹で135万円ですかー。やばいですねー」

「だねー。これで当分、働かなくていいね」

「まあ、いいんじゃないですかね? あ、でも、ゾンビゲームは進めないでくださいよ。私がやるんですから」

  

 別にいいけど、キミドリちゃん、ぎゃーぎゃーうるさいんだよなー。


「それはいいけど、キミドリちゃん、最近、ゲームばっかしてない?」

「別にいいじゃないですか。私だって、ゲームは好きですもん。学生の頃とかめっちゃやってましたよ」


 まあ、私にネタバレを食らわすくらいだしねー。


「いや、料理は? するとか言ってたのに全然する気配がないじゃん」


 キミドリちゃんは以前、コンビニ弁当に飽きたから料理をやると言っていた。

 あれから結構経つのに、キミドリちゃんは未だに同じのり弁を食べている。

 よく同じものをずっと食べられるよね。


『ハルカのバカ、余計なことを思い出させるな』

『マンションが燃えちゃいますよ』


 ウィズとサマンサが念話でこっそりと咎めてくる。

 でも、キミドリちゃんは…………


「余計? 燃やす? よーし! 明日、帰りに実家に寄って、道具を取って帰りますから明後日は私が作ります!」


 ほらー……

 キミドリちゃんは念話を盗聴できるんだよ。

 おかげでムキになっちゃったよ。


「よしたほうが……」

「やめたほうが……」


 ウィズとサマンサは本当に嫌そうだ。


「いーえ、やります! 出来る女と評判だった私が実力を見せてあげますよ」


 キミドリちゃんは外面がいいからなー。

 出来る女と評判だったのは嘘ではないだろう。

 前にロビンソンもキミドリちゃんはすごいって言ってたし。


「頑張ってー」


 私だけでも応援してあげよう。


「何を言っているんですか。ハルカさんもやるんですよ。手伝ってくれるって言ってたじゃないですか!」


 えー…………まじかい……


「手伝いをする程度ならいいんだけど、本当に戦力にはならないよ?」


 認めよう。

 私は器用じゃないし、包丁で指を切るタイプなのだ。


「大丈夫ですよー。私だって、料理酒とみりんが何なのかすら知りませんし」


 そんなんで何故、料理をしようと思ったのか…………


「妾は猫缶があるから自分達の分だけ作るんじゃぞ」

「私もお菓子でいいので、大丈夫です」


 ウィズとサマンサは逃げるようだ。

 私も逃げたい……




 ◆◇◆




 翌日、私はダンジョン探索を休みにし、家でゴロゴロしていた。

 キミドリちゃんは一人でダンジョンに行き、借金返済のために頑張っていたのだが、夕方に家に帰ってくると、本当に調理道具を持って帰ってきた。

 どうやら酔った時の戯言ではなく、本当にやるみたいだ。


 そして、その翌日、私とキミドリちゃんは料理をした。

 というか、その様子を生配信で流した。


 その時のことは思い出したくない。

 絶対に思い出したくない。

 サマンサは逃げ出し、キミドリちゃんと私をものすごい目で見ていた。


 ウィズはキミドリちゃんと私に二度と料理をするなと厳命した。

 キミドリちゃんは反省どころか、首を傾げながら『おかしいなぁ……』とつぶやいていた。

 私はほぼキミドリちゃんのせいだと思っている。


 あれから一週間が経つ。

 私はあの日からダンジョンに行かず、ずっと家で遊んでいた。

 サマンサやウィズも同様だ。

 ただ、キミドリちゃんは借金返済のために探索に行ったり、サクラちゃんやアンジュの指導を行っていたりしていた。


 その間、アンジュと組んだ伯爵級天使のパリティは本当に探索者になったようだ。

 そして、サクラちゃんとアンジュのパーティーに加入した。


 サクラちゃんはパリティの加入も特に反対はしなかったらしい。

 パリティはうさんくさいが、アンジュの弟設定になっているので、サクラちゃんはそれを信じたようだ。

 ロビンソンがサクラちゃんを過剰に心配する理由がわかってきた。


「あいつら、どんな感じ?」


 私は夜の宴会中にキミドリちゃんに聞いてみる。


「いいと思いますよ。というか、パリティさんが強すぎですね」


 キミドリちゃんはお酒を飲みながら答える。


「何? あいつ、無双してんの?」


 そりゃあ、戦闘タイプの伯爵級天使だから低階層のモンスターなんかは相手にならないだろうけど、大人げないなー。


「いえいえ。メインはサクラさんですよ。でも、サクラさんが危なくなったりすると、的確に援護を入れています。しかも、速いです。戦闘タイプの天使と聞いていましたが、頷けますねー。あれは相当の実力者ですよ。少なくともハワーよりは強いです。見た目は子供ですけどね」


 キミドリちゃんはパリティを冷静に分析しているようだ。


 キミドリちゃんはこういうところはすごいんだなー。

 お、キミドリちゃんの尊敬できるところを見つけたぞ!


「上手くいっているのなら良かったよ。じゃあ、もう依頼はいいんじゃないの?」

「ですねー。明日、5階層に行きますので、それで最終チェックをします。まあ、5階層はキャタピラーなんで余裕だと思いますよ」


 キャタピラーかー。

 ロビンソンに頼まれて、サクラちゃんの彼氏のために糸を集めたのが懐かしい。


「そういえば、キャタピラーで思い出したけど、サクラちゃんの彼氏とやらは? 探索者にならないのかな?」


 彼女が探索者になるんだから付き合えばいいのに。


「あー……そのことは触れないであげてください。サクラさんが探索者になったことで、終わったようです」


 あちゃー……


「彼氏君は探索者にならなかったんだ?」

「ですねー。どうやらそういうアクティブな人じゃなかったらしいです。それで、サクラさんが探索者になることも反対し、まあ、終了って感じらしいです」


 彼女が危険な仕事をしようとするのを反対するのもわかる。

 自分が向いていないのなら、なおさらだろう。

 まあ、こればっかりはしょうがない。


「だから一人だったのか……」


 あんなに明るいサクラちゃんが一人で探索者になったのはそういう理由があったからのようだ。

 それでもすぐにアンジュと組むあたりはさすがだ。


「ですねー。あ、ロビンソンさんの依頼も明日が最後になりますけど、ハルカさんも付き合いません?」


 うーん、めんどいなー。

 でもなー。


「そうだねー…………最後くらいは付き合うかなー」


 これまでずっとキミドリちゃんに任せていたが、私も依頼料をもらっているし、最後くらいは付き合うべきかもしれない。


「そうしましょうよー」

「じゃあ、そうするわ。ウィズはどうする?」


 私はウィズにも聞く。


「妾が行くと、天使2人が嫌がるじゃろ。留守番しとく」


 確かにアンジュとパリティのリアクションから見て、ウィズは行かない方がいいかもしれない。


「サマンサは?」


 どうせ来ないだろうな。


「うーん…………一応、ついていった方がいいですかね? アンジュさんに魔法を教えたのは私ですし」


 おー! あのサマンサが他人を気にかけている!

 この子も成長したんだなー。


「うんうん。じゃあ、サマンサも一緒に行こうか」

「わかりました」

「一応、気を付けてなー。妾は寝てるから」


 よー寝る猫だなー。


「おぬしに言われたくないわ」


 ですよねー。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ウィズはキミドリちゃんの肩から降りると、すたすたと奥に歩いていく。 [一言] なるほど、撮影画面を確認する為にキミドリちゃんに乗ってたのかw 細かい描写もしっかりしてる♪
[一言] ふと、思ったのだけれど 美味しいおやつが作れるようになったらパートナーが喜ぶって考えはでないのかな? サマンサちゃんとか、バレンタインを知ったらはっちゃけそう。
[良い点] 料理配信何があったんだ……
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