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第056話 百合を見るのは好きだが、君達は大きすぎ


 天使アンジュの正体を聞き出した後、サマンサが魔法を教えることになった。

 サマンサが簡単なバフ、デバフ魔法を教えると、アンジュはすぐに習得した。


 アンジュは魔法があまり得意ではないと言っていたが、半分は天使なため、普通に優秀なメイジのようだ。


 サマンサがアンジュに魔法を教え終え、やることがなくなった私は、ウィズとサマンサと適当におしゃべりをしながら時間をつぶしていた。

 アンジュは教えてもらった魔法の反復練習をしており、非常に熱心で真面目な子だと思う。


 私達が各々に時間をつぶしていると、キミドリちゃんとサクラちゃんが戻ってきた。


「アンジュー、どうだったー?」


 サクラちゃんはアンジュを見つけると、小走りで近づき、指導の結果を聞く。


「うん。バフとデバフの魔法を教えてもらった。やっぱり私は前には出ない方がいいみたい」


 サクラちゃんに話しかけられたアンジュは嬉しそうに笑った。

 本当に仲は良いようだ。


「だと思うよー。大丈夫! 私に任せておいて! アンジュの晩御飯代は稼いでみせるから!」

「さ、サクラさん…………! 主よ、この世にこんなすばらしい子を産んでいただき、感謝します」


 アンジュはサクラちゃんの頼もしさに感動したようで、神に祈っている。


 晩御飯代で感動するなよ…………

 やっすい天使だなー。


「ハルカさん、アンジュさんはどうでした?」


 アンジュとサクラちゃんが楽しくない百合をしている間に、キミドリちゃんがこちらにやってきた。


「まあ、キミドリちゃんが言った通り、戦いは無理そう。だから、サマンサにバフ、デバフ魔法を教えさせたわ。あと、まあ、例の事は帰ったら話すわ。とりあえず、害はなさそう」

「なら安心です」


 キミドリちゃんはほっとしている。


 キミドリちゃんは普段はこんなにいい子なのにねー。

 昨日の夜、私の血でカクテルを作りたいとかめっちゃ猟奇的なことを言っていた女と同一人物とは思えない。


「そっちは?」


 私はサクラちゃんの出来を聞いてみる。


「優秀ですね。どうやら結構前から練習していたようです。運動神経もいいですし、戦闘では慎重です。いい探索者になるとは思いますね。ただ、やはり心配です」


 サクラちゃんは優秀で見込みがあるらしいが、キミドリちゃん的には気になるところがあるらしい。


「女だから?」

「まあそうです。そして、人が良すぎます。なんかあっさり騙されそうな気がしますね」


 まあ、それはちょっと見ただけでもわかる。

 コミュニケーションおばけらしいが、それは逆に言えば、他人に対する警戒心が低いということでもある。

 もし、アンジュが性悪天使だったら、家に招き入れた時点でアウトだった。


「アンジュは頼りなさそうに見えるかもだけど、一応、男爵級らしいし、警戒心は高そうだし、大丈夫だとは思う」


 あれで警戒心が低かったら、アトレイアでは1年も生き残れないだろう。


「そうですか………………え? あんなのが男爵級? 絶対に私の方が強いのに…………」


 キミドリちゃんは本当にそこを気にするなー。

 黒い本音が出てきてるよ……

 キミドリちゃんはドラゴンAで十分だと思うが…………


「いや、キミドリちゃん、アンジュはあれでも250歳以上らしいから年季が違うんだよ。あんまそこを気にしない方がいいよ。キミドリちゃん、十分に強いし」

「そうですかね? 私、天使にボコボコにされた記憶しかないんですけど…………」


 まあ、それは相手が悪いとしか言えない。


「いやいや、実際、キミドリちゃんは強いよ。ね?」


 私はサマンサにも話を振る。


「まあ、そうですね。私達は見ての通り、戦闘タイプではないので、とてもキミドリさんのようには戦えません」


 さすがはサマンサ。

 お昼だと空気が読め、まともだ。


「うーん、でも、サマンサさんは公爵級なんでしょー?」

「はるるん様もおっしゃっていましたが、そこはあまり気にしない方がいいですよ。魔力が高いと強い傾向にあるのは確かですが、必ずしもそうとは限りません。キミドリさんは魔力を使って戦うというより、剣技や力で戦うタイプです。下手に魔力にこだわると、逆によくありません」


 サマンサがすごくまともなことを言っている。


 知ってる?

 この子、昨日の夜、お尻を叩いてって、懇願してたんだよ?


「うーん、なるほどー。サマンサさんが言うと、説得力がありますねー」


 微妙に私をディスってるな。


「私はキミドリさんのようになれませんから素直に尊敬しますよ」


 絶対に嘘だな。


「すごい。この変態ロリ、心にも思ってないことを平気で言う…………私をプレイの道具にしか思ってないくせに」


 キミドリちゃんもわかったらしい。

 まあ、わかるよね。


「私って、信用ないんですね」


 サマンサが落ち込む…………ふりをしている。


「あると思ってんのがすごいですね」


 ほんとにねー…………いやいや、私は信じているけどね!

 かわいいし!


 私は手招きをして、サマンサを呼ぶ。

 すると、落ち込むふりをしていたサマンサは笑顔になり、私のところに寄ってきて、抱きついてきた。

 私はそんなサマンサの頭を撫でる。


「それよりも、これからどうすんの?」


 私はサマンサの頭を撫でながらキミドリちゃんに今後の指導方針を聞く。


「次は連携ですね。まあ、教えることはありません。あとは慣れるだけですので」

「じゃあ、帰ってもいいの?」

「一応、見守ります。ハルカさん達は今日だけ付き合ってもらえればいいです。次からは時間を見て、私がついていきますので」


 まあ、私やサマンサが教えられることなんてないし、元Aランクにして、元ギルマスのキミドリちゃんがついていれば、問題ないだろう。


「じゃあ、今日だけは最後まで付き合うよ。一応、依頼だし」

「お願いします」


 私達はその後、サクラちゃんとアンジュを前に歩かせ、ゴブリン討伐の様子を見守った。


 サクラちゃんはキミドリちゃんが言うように運動神経が良く、ゴブリン相手にも怯まなかった。

 確かに、センスはあると思う。


 アンジュはサクラちゃんの後ろにおり、サクラちゃんの能力を上げる魔法を使ったり、疲れたサクラちゃんを回復魔法で癒したりしている。


 素人目から見ても、バランスのいいコンビではないかと思う。


 今日はサクラちゃんとアンジュが20匹近くのゴブリンを狩ったところでお開きとなった。


 私達は狩りを終えると、ダンジョンから戻り、武器屋で武器を預け、受付に向かった。

 受付に戻ると、まずはサクラちゃんとアンジュが精算を行う。


 2人の精算の結果はゴブリンのドロップ品である小鬼の角が24個で19200円だった。


 サクラちゃんとアンジュはこれを等分に分けていた。

 アンジュは9600円をもらい、神に祈っている。

 サクラちゃんも嬉しそうだ。


 キミドリちゃんはそんな2人を微笑ましく思っているようで、にこやかに笑っていた。


 うーん、キミドリちゃんがギルマスっぽい。


 そして、次は私達の番である。

 といっても、私達はモンスターを倒してないので、依頼の方だ。


「えーっと、2人でゴブリンを24匹も狩れるのなら2階層はもう十分ですかね?」


 受付嬢がキミドリちゃんに尋ねる。


「十分だと思います。この感じなら3階層、4階層も余裕でしょう。次の探索で3階層に行ってみようかと思います」


 キミドリちゃんは今日見た2人の総評を伝えた。


「わかりました。では、2階層までの依頼達成となりますので、御三方に40万円ずつが支払われます」


 ん?

 2階層で40万なん?

 1階層は何もしてないんだけどな。


「いいの? ってか、サマンサの分もなの?」


 まあ、アンジュに魔法を教えたのはサマンサであり、むしろ、何もしていないのは私の方だけど。


「キミドリちゃんとロビンソンさんが話し合われた結果、一応、5階層で100万円が目安となっています。また、他の人も同様に支払われる契約となっていますね。正直、破格すぎです」


 受付嬢は若干、呆れている。


 気持ちはすごくわかる。

 ハッキリ言って、バカだろう。

 まあ、貰えるものは貰っておくけど!


「ふむふむ。あ、私とサマンサの順位はどうなったの? 100位以内に入った?」


 この依頼の最大の報酬はそこである。

 100位以内に入って、ランクをCに上げ、16階層以降で稼ぐのだ。


「そうですね。では、探索者カードをお返しします」


 受付嬢はそう言って、私達に探索者カードを返却する。

 私は受付嬢から探索者カードを受け取り、カードの表紙を見た。




 名 前   : ハルカ・エターナル・ゼロ

 二つ名   : 少女喰らい

 パーティー : ノーブル

 ランク   : D

 順 位   : 100位

 

 


 確かに100位以内に入ってはいるが…………


 私は気になったので、サマンサの探索者カードを覗いてみる。




 名 前   : サマンサ

 二つ名   : -

 パーティー : ノーブル

 ランク   : D

 順 位   : 100位

 


 

 うーむ、やっぱりサマンサもちょうど100位か…………

 すごく作為的な感じがする。


 私は何も言わずに、受付嬢を見る。

 すると、受付嬢はニコッと笑った。


 何も言ってはいけない、何も聞いてはいけないということだろうか?


 受付嬢を見続けるが、受付嬢はニコニコと笑うだけで、何も言わない。


 うん、これはあまり触れないでおいた方が良さそうだ。


「私とサマンサのランクアップをお願い。あとキミドリちゃんも」

「わかりました。審査結果は次に来られた時でよろしいですか?」


 あ、これは絶対に落ちないわ。

 というか、それも含めて、キミドリちゃんが手を回しているのだろう。


「…………うん」


 キミドリちゃんは本当に職権乱用というか、ダメな子だなー。


 私が呆れながらキミドリちゃんを見ていると、キミドリちゃんもこちらを見た。

 そして、親指を上げ、笑顔でサムズアップしてくる。


 うん、実に頼もしい!

 さすがはキミドリちゃんだぜ!


 



本日の成果


 ロビンソンからの依頼  = + 400000円

 

 計   +400000円       


 はるるんの所持金 360万円

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― 新着の感想 ―
ランキング100位が二人居るのですが?
[一言] 何気に、キミドリちゃんの有象無象ランクが ドラゴンAに上がっててニッコリ
[一言] 完全に財布別なのね
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