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第052話 私って、かっこいいな


『高貴なる吸血鬼ちゃんねるー』


 何だ、これ?


『さあ、始まりました、高貴なる吸血鬼ちゃんねる。この動画は究極、そして、偉大なる吸血鬼であるハルカ・エターナル・ゼロ様の活躍を配信していく動画です』


 私の目にはキャッチーな文字で書かれた『高貴なる吸血鬼ちゃんねるー』という文字が見えている。

 そして、動画の説明をしている声は小さいながらも聞き取りやすい。


 姿は見えないが、この声はサマンサである。


『よろしければ、高評価、チャンネル登録等をお願いします』


 サマンサに何をさせてんだよ…………


 私がこの動画を作ったであろうウィズに呆れていると、動画が始まった。


 動画内では、鏡とかで見たことある金髪のロリが映っている。


『愚かなる下等生物どもよ…………我に逆らったことを懺悔し、後悔するがいい…………エターナルフォースブリザード!!』


 動画内のロリはめっちゃかっこいいことを言い、氷魔法を放っている。


 やばい!

 私、かっこよすぎ!!

 でも、相手がポイズンスライムなのは、ちょっとしょぼいな……


 それに、魔法を変なエフェクトで見えなくしている。

 まあ、これはしょうがないか…………

 自慢だけど、威力がすごいもん。


 その後もかっこいい金髪ロリはかっこいいセリフを言いながらポイズンスライムを倒していく。

 そして、数匹倒したところで、サマンサが動画の終了を告げた。


「んー…………あ、おまけ動画もある」


 動画が終わると、画面におまけ動画が出てきたので、私はその動画を再生しようとした。


「あ、それはダメじゃ……テスト動画みたいなものだから、後で消す」


 私が再生しようとすると、ウィズが止めてきた。


「あ、そうなの? じゃあいいか…………それにしても、なかなかの動画を作ったもんねー。私、めっちゃかっこよかった」


 詠唱シーンが特に良い。

 この無駄にかっこいい詠唱を考えたエターナル・ゼロも天国で喜んでいることだろう。


「じゃろう?」


 ウィズは満足げだ。


 ここ最近はダンジョンに毎日のように行っていたのだが、今日はお休みにした。

 せっかくの休みなので、私とサマンサはゲームをしていたのだが、パソコンの前にいるウィズに呼ばれた。

 そして、先ほどの動画を見せられたのだ。


「あんた、こんなことが出来るのねー。でも、おもっきし吸血鬼って言ってるのは?」


 ヤバくない?


「おぬしらが隠す気ゼロだから、いっそ、この路線で売っていこうかなと…………どうせ誰も信じんし、どう見ても、厨二病にかかった中学生じゃ」


 厨二病と言ってはならない。

 1000歳のエターナル・ゼロへのディスになっちゃう…………


「邪気眼って言ってもらえる?」

「一緒じゃね? まあ、おぬしは素のままでいいから楽じゃろ。それに評判も良さげじゃし」


 ウィズはそう言って、評価欄を見せてくれる。


 視聴回数:922

 高評価数:15

 低評価数:0

 コメント数:8


「これって高いの?」


 私はネット動画自体を見ないし、これがすごいのかすごくないのかわからない。


「おぬしがかけだしのルーキーと考えれば、かなりいいぞ。まあ、おぬしは探索者になって、すぐに話題になったからな。このくらいは行く」


 うーん、よーわからん。


「これでいくらになんの?」

「視聴回数×0.5円じゃ」


 えーっと…………

 500円に届かないくらいか……


「安いわね……」

「そらそうじゃろ」


 まあ、ウィズの趣味みたいなもんだし、別にいっか。


「コメントは?」

「あー、それは見んほうがいいな。おっきいお友達からじゃ」


 私はウィズの言葉でコメントの内容をほぼ察した。


 そうだろうな…………

 私を好きになるヤツは大抵がそういうのだ。


「まあ、どうでもいいわ。せめて、カメラ代とかパソコン代くらいは稼いでね」

「任せろ。そんなもんすぐじゃ」


 ホントかな……?


「ほどほどにね…………あと、サマンサに手伝わせるのはいいけど、サマンサを映しちゃダメよ。あの子はそういうのが好きじゃないから」


 私はテレビの前でひたすらゲームをしているサマンサを見る。


「わかってる。それにあやつを動画に出すとBANされるわ」


 まあ…………ね。


 実はこの前、家でカメラを見せてもらった時に、冗談でサマンサにカメラを向けたことがあった。


 私がサマンサを呼び、カメラを向けると、サマンサはいきなり服を脱ぎだし、私に抱きついてきた。

 どうやら、そういうプレイだと思ったらしい。


 サマンサは普段は頭が良く、大人しいくせに、急に変態スイッチが入ることがあるからめんどくさい。

 これを言ったらサマンサの≪狂恋≫が発動するから言えないけど。


「また投稿するの?」

「おぬしがCランクになったらな。さすがにポイズンスライムばっかな動画はつまらんじゃろ」


 だろうなー。

 ただでさえ、スライムなんか相手にしても映えないのに、そればっかな動画を誰が見るんだって話だ。


「はるるん様ー。生意気な王子がいなくなったんですけどー」


 一人でゲームをしていたサマンサが私を呼んだ。


「あー、ごめん、ごめん。ウィズもおいで。一緒にゲームしよ」


 私はウィズを抱える。


「妾はゾンビのゲームがいいなー」

「あんた、ああいうのが好きよね」


 私はウィズを抱え、サマンサのもとに戻り3人でゲームをすることにした。




 ◆◇◆




 その後、私達は3人でゲームをしていた。

 RPGやゾンビのアクションゲーム、3人で出来るパーティーゲーム。

 ゲームは結構な数を持っているので、3人でやりたいゲームを適当に選んで遊んでいた。


 そして、夕方になると、誰かが玄関の扉を開ける音がした。


「ただいまでーす」


 ダンジョンに行っていたキミドリちゃんが買い物袋を持って、リビングにやってきた。


「おかえりー」

「おかえりなさい」

「ご苦労じゃったな」


 私達は仕事を終えたキミドリちゃんの労をねぎらう。


 キミドリちゃんは買い物袋をテーブルに置くと、袋の中から缶ビールを取り出し、飲み始めた。

 それを見た私はゲームを止め、キミドリちゃんの所に行く。

 そして、キミドリちゃんが買ってきた袋の中からビールを取り出した。


「どうだった?」


 私はビールを取り出し、蓋を開けると、キミドリちゃんに聞く。


「いやー、ルーキーはフレッシュでしたよ。懐かしかったし、変なのもいなかったんで楽な仕事でした」


 キミドリちゃんはビールを飲みながら楽しそうに答える。


 キミドリちゃんは今日、探索者の実技試験の試験官をやっていたのだ。

 キミドリちゃんはまだDランクだが、元Aランクで元ギルマスなため、こういう仕事をよく回されるらしい。

 給料は正直、あまり良くないが、横領や不祥事を見逃してもらっている手前、断りにくい。

 まあ、キミドリちゃん的にも元部下というか、仲の良い元同僚の頼みを断るつもりはないらしい。


「例のあれは? ロビンソンの娘」

「サクラさんですね。まあ、普通に合格しましたよ」


 今日の実技試験には、ロビンソンの愛娘であるサクラちゃんも参加すると聞いていたが、無事に合格したらしい。

 まあ、あの試験で落ちるとは思わないが、ロビンソン的には落ちてくれた方が良かったんだろうな。


「しかし、年ごろの娘がよく探索者になろうと思いますよね。お金に困っているわけではないのでしょう?」


 サマンサの声がしたので、振り向くと、サマンサがウィズを抱え、こちらにやってきていた。

 サマンサはそのまま私の隣に座り、買い物袋の中から缶酎ハイを取り出す。


「面接も私がしたんですけど、まあ、一種の憧れを持っている様子でしたね。お父さんが有名な実力者ですし、思うところがあったんだと思います。仲の悪い親子ではないので」


 サマンサの疑問にキミドリちゃんが答えた。


「ロビンソンのことだから、どうせ、娘に自慢してたんでしょ。かっこいいパパをアピールしたかったんじゃない?」


 安易に想像ができる。


「だと思います」


 バカだなー。


「それで、そのサクラさんはどんな感じでした? いけそうです? パーティーを斡旋するとか言ってましたけど」


 サマンサも一応、話は聞いていたのか……

 あの時、この子は濁った目で無表情だったから、ロビンソンの話を聞いていないのかと思っていた。


「あー、それなんですけどねー。ちょっと面倒なことに…………」


 キミドリちゃんは2缶目のビールを取り出しながら困ったように言う。


「どしたの? サクラちゃん、雑魚い?」

「いえ、センスはありそうでしたよ。ただ、試験終了後にパーティーを斡旋しようと思っていたんですが、試験開始直後に速攻で隣に座っていた女の子とパーティーを組みました。あの子は昔から知っているんですが、コミュニケーションおばけなんですよ。でも、まさか、会って、少ししか経っていない人といきなりパーティーを組むとは思っていませんでした…………」


 それはすごいというか、何と言うか…………

 命を預ける仲間を簡単に決めてしまっていいのだろうか?


「その女の子はどんな子なの?」


 ロリ?


「20歳の子ですね。ただ、あれは天然ものだと思います。すぐに魔法を覚えましたし。そういう意味では優秀な人だとは思いますが、性格があまり向いているとは言えませんね」


 天然ものというのは、前にロビンソンに聞いたが、最初から魔力を持っている人間の事だ。

 稀にいるらしい。


「向いていないって?」

「臆病というか、攻撃タイプではない感じですね。まあ、ヒーラーやメイジならそれでもいいんでしょうけど。どうなるかは…………」


 まあ、今日は1階層のスライムを相手にしていたのであろう。

 小学生でも勝てるらしいスライム相手では力は計れない。


「うーん、女子2人はどうかと思うけど、やっていくしかないわよ。2人まとめてでもいいからパーティーを斡旋してあげたら?」

「そう言ったんですけど、とりあえずは2人でやってみてから考えるって言われて断られました。他の人達と組むにしても、まずはパートナーの実力を知らないといけないと…………まあ、正論ですので、何も言えません」


 会ってすぐにパートナーになったらしい。

 すごいな…………


「まあ、ソロではなくなったんだから、良しとしようよ」


 ロビンソンもひとまずは安心だろう。


「いやー、それがですね…………」


 キミドリちゃんが言いにくそうに目を逸らす。


「どしたの? まさか子守を頼まれたの?」

「ですねー…………ロビンソンさんからの正式の依頼です」

「いくら?」

「行ける階層×20万円を出すそうです。5階層まで行けるレベルになったら100万円ですね…………」

 

 うーん、高いんだろうけど、それはメリットがあるのか?

 キミドリちゃんが本気を出せば、一日でそれぐらいは稼ぐだろう。


「受けるの? 微妙じゃない?」

「依頼のレベルを考えれば、破格なんですけど、正直、微妙ですね。ただ、ロビンソンさんはもちろんですけど、サクラさんも知らない人ではないですからねー。受けようかと……」


 キミドリちゃんは腐っても元ギルマスだしなー。

 気持ちはわからないでもない。


「まあ、いいんじゃない? 後輩を育成するのも大事なことでしょう」


 そういうのが大事と200年近く前に冒険者になった時に教えてもらったことがある。

 残念ながら、私は1週間でクビになったけど。


「ええ、まあ……はい。それでハルカさんにお願いがあるんですけどー」


 キミドリちゃんはおずおずと言いにくそうにしている。


 言いたいことはわかる。

 キミドリちゃん、魔法は不得手だもんね。


「手伝えと?」

「はい…………一応、ハルカさんの分も依頼料は払うそうです」


 ロビンソンのヤツ、お金を持ってんのね。

 自分でやればいいのに…………いや、拒否されたのか……

 さすがに、娘もパパに指導されるのは嫌なんだろうな。


「めんどくせー…………18歳と20歳でしょ?」

「ええ。先に言っておきますと、2人とも小さくはないです」


 でしょうねー……


「受ける意味ある? まあ、ここんところはポイズンスライムばっかを狩ってたからお金に余裕はあるけど、早くCランクになりたいんだよなー…………」

「そこは大丈夫です。こういう依頼はギルドの評価がぐーんと上がりますので、この依頼でCランクになれると思います。というか、そのように職員に頼みました」


 それはよくないことを含んでない?

 不正では?

 もしかして、キミドリちゃんの元部下たちもキミドリちゃんに毒されているのでは?


「じゃあ、いっかー……サマンサ、行く?」


 私はプリンを食べているサマンサに聞く。


「私は構いませんよ。どうせ、はるるん様の後ろを歩くだけですので」


 この子は本当にやる気ないな……

 まあ、この子はゲームとお菓子とエッチにしか興味ないか……


「ウィズはどうするー?」


 ウィズにも聞いておこう。


「まあ、行ってみるか……他の探索者も見てみたいし」

「じゃあ、皆で行こっかー」


 誰も特に反対はしないし、ロビンソンには一応、世話になっている。

 カメラとパソコンを選んでくれた恩を返してあげよう。


「ありがとうございます。じゃあ、明日、ダンジョンに行きましょー」


 明日かい……

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[一言] あ~そっちかぁー!
[一言] ドラクエ7?DQ7なの?
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