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第051話 ロビンソンの憂鬱


 12階層のポイズンスライム初戦で多少のドジがあった私だったが、その後は順調にポイズンスライムを狩り、15000円を収集していった。

 とはいえ、私一人では飽きるので、キミドリちゃんと交代したり、ポイズンスライムをちょっと嫌がっていたサマンサにもやらせたりして、皆でポイズンスライムを狩っていった。


 そして、夕方の良い時間になったため、魔方陣に乗り、ギルドに帰還した。


 私達が武器をお爺さんに預かってもらおうと思い、武器屋に立ち寄ると、そこにはカウボーイスタイルのガンマンがおり、武器屋のお爺さんと何かを話していた。


「あーら、ロビンソンじゃない、オホホ」


 私は手の甲を口に当て、優雅に声をかける。


「…………それ、何か違くね?」


 ロビンソンが呆れたように見てくるので、私はキミドリちゃんとサマンサの方を向く。

 2人共、首を横に振っていた。


「これは悪役令嬢か性悪マダムだったか…………まあいいや。あんた、こんな所で何してんの? もう6時だし、家に帰りなさいよ。奥さんに浮気と思われるわよ」


 めんどくさくなったので、高貴なしゃべりはいいや。


「ちょっと爺さんに用事があんだよ。お前らはダンジョン帰りか…………キミドリちゃん、ホントに保育園の先生になったんだな」


 ロビンソンは私やサマンサを見た後にキミドリちゃんに言った。


「この人達は園児っぽさがゼロですけどね」

「まあ、キミドリちゃんと行くんなら俺はお役御免だな。これからは俺を呼び出すなよ。キミドリちゃんに連れていってもらえ」


 ロビンソンは私の頭をポンポンと叩く。


 うーん、言われてみると、キミドリちゃんは42階層まで行っているのだからキミドリちゃんにワープで連れていってもらえばいいのだ。

 というか、今日もそうすれば良かったな。


「キミドリちゃん、言ってよー。無駄に10階層から始めちゃったじゃん」


 私はキミドリちゃんに文句を言う。


「あ、いや、すみません。私、前の時も真面目に1階層ずつ進んでいるわけじゃなくて、他の人に頼んで、飛び飛びでやってたんです。ですので、15階層は行けますが、11階層から14階層は飛べないんです」


 あー……なるほど。

 キミドリちゃんは2年でAランクになったって言ってたし、低ランク時代は行けるとこまで一気に行ってたんだな。


「それって、危なくない?」

「それだけ自信があったんです。私は子供の頃から剣道をやってましたし、基本、敵なしだったんで、増長してましたね。逆にギルマスをやっていた時はそういう人を止めていましたけど」


 最初から強かったのか……

 キミドリちゃんって、本当にすごかったんだなー。

 今も色んな意味ですごいけど。


「じゃあ、私達がCランクに上がっても、16階層と20階層までしか行けないのか…………ロビンソン、残念ながらあなたに暇を出すことは出来そうにないわ。これからもキリキリ働くように!」

「まじかー…………じゃあ、レイスの弱点を知らね? 33階層に出るんだが、俺の銃が効かなくて、大変なんだよ」


 レイスちゃんって、私の友達なんだけどなー。


「吸血鬼と一緒で太陽の光に弱いわね」

「何でそこに吸血鬼が出てくるんだよ…………幽霊だし、太陽の光は何となくわかるけど、そんなもんをどうやってダンジョンに持ち込むんだ?」

「え? 知らない」

「おい…………」


 うーん、基本、吸血鬼とレイスは争わないからなー。


「サマンサ、知ってる?」


 私は魔法に詳しいサマンサに聞いてみる。


「レイスは聖水に弱いですね。聖水がない場合は塩水を代わりに使うことが多いです。塩水自体はたいして効きませんが、塩水に当たった部分は具現化されますので、そこを狙って、攻撃するのがセオリーです」


 優等生なサマンサがスラスラと答える。


「サマンサ、すごーい」

「そうですか? はるるん様の役に立てたのなら光栄です」


 私が褒めると、サマンサはちょっと得意げな顔をした。


 サマンサって本当に頭がいいんだなー。


『おぬしら、隠す気あるか?』


 ウィズから念話で呆れた感じの声が飛んでくる。


『あるよー』


 どうせロビンソンもお爺さんも深くは突っ込んでこない。

 日本人の良いところだね。


「だそうよ。感謝しなさい。あ、サマンサは甘いものが好きよ」


 私は一応、サマンサの好物を伝えておく。

 他意はない。


「お、おう…………何で知ってんのって聞いちゃダメ?」

「キミドリさんに聞きました」


 サマンサが即答した。


「ほえっ?」


 ほえっ? じゃねーよ。

 せっかくサマンサが誤魔化しているのに、当人であるキミドリちゃんのリアクションがマヌケな声はおかしいでしょ。


「あーっと、そうだったかもしれない。いや、そうだった気がしてきた。うん、きっとそうだ」


 キミドリちゃんは腕を組み、うんうんと頷き始めた。


 知ってたけど、キミドリちゃんって、バカだな。


「…………まあ、いっかー。あんがとよ。試してみるわ」


 うんうん。

 ロビンソンは実にわかっている。

 こいつは長生きしそうだわ。


「じゃあ、私達は帰るわ。あ、おじいさん、これ預かっててね」

「はいよ」


 私がおじいさんに刀を渡すと、キミドリちゃんとサマンサも続いて、それぞれの武器を渡す。


「あー……ついでにもう一個、頼まれてくんね? これはハルカじゃなくて、キミドリちゃんなんだが…………」


 私達が武器を預け、帰ろうとすると、ロビンソンが止めてきた。


「何よ? キミドリちゃんはAVには出ないわよ」

「何それ?」


 ロビンソンはまったく予想してない言葉が返ってきたようで、首を傾げる。


「借金漬けのキミドリちゃんはそういう業界からスカウトが来てるのよ」

「まじ…………?」


 ロビンソンがキミドリちゃんを見た。


「いや、出ませんから。それにそういう話は現役の時からもありましたから。無視です、無視」


 キミドリちゃんが手を横に振りながら否定する。


「そうなの?」


 借金してからそういう誘いが来ていたことは聞いていたが、現役の時にもあったようだ。


「ええ…………一定以上の人気がある女性探索者には大抵、話が来ますよ。さすがにギルド内はスカウト禁止ですけど、外は取り締まれませんから」


 ふーん、うぜ。


「いや、そんな話じゃないんだが…………」


 ロビンソンが私の予想を否定する。

 まあ、違うとは思ってたけど。


「じゃあ、何?」

「頼みというか、相談なんだが、前に、俺に娘がいるって言っただろ?」


 散々、糸探しに付き合わされた原因の娘さんね。


「あー、サクラさんですね。今年、18歳でしたっけ?」


 キミドリちゃんはロビンソンの娘を知っているらしい。


「そうそう、その子。今年度で高校を卒業するんだが、探索者になりたいって言ってんだよ」


 あらま。

 それは娘を溺愛しているロビンソンには辛い。


 探索者は命がけな仕事だし、お父さん的には反対だろう。

 でも、そのお父さんは家族がいるのに探索者なのだ。

 反対しづらい。


「それは…………奥さんは何と?」


 キミドリちゃんも複雑な顔をしている。


「反対してないんだ。正直、これは俺のせいでもある。俺は嫁さんと付き合ってた時から探索者をやっているんだが、その時から嫁に反対されたくなくて、ダンジョンなんて、たいしたことないって言い続けてきた。結婚する時もそれで通した。実際、俺は大きなケガもしてこなかったし、嫁はダンジョンの危険性を甘く見ているんだよ」


 彼氏と結婚するのに、その彼氏が危険な仕事をしていたら辞めるように言うのが普通だしなー。

 探索者は実入りが良いとはいえ、普通は反対する。


「しょうがないよ…………それはどうしようもなくない?」


 私はちょっと落ち込んでいるロビンソンに優しく声をかける。


「まあなー。だから反対は止めたんだが、ソロだけは止めてほしいんだよ」


 しかも、ソロなのか…………

 そら、やばい。


「あんたが仲間になればいいじゃん」


 パパと一緒に…………嫌だろうな……


「それは断られた」


 でしょうねー。


「言っておくけど、ウチのパーティーには入れないわよ」


 好みじゃない云々の前に人間を入れるのはマズい。


「絶対に入れねーわ。死んでも反対する」


 向こうから断られると、ちょっとへこむね。


「じゃあ、キミドリちゃんに何を頼みたいのよ?」

「ギルドにパーティーの斡旋を頼みたいんだ。出来れば、同性を入れてほしい」

「別にいいですけど、直接、ギルドに頼めばいいじゃないですか。というか、女性のソロルーキーなんて絶対にギルドがパーティーを斡旋しますよ」


 そういえば、私もキミドリちゃんにパーティーを組むように言われたし、斡旋もされたな。

 断ったけど。


「いや、そこは念入りに…………パパは心配なんだよ。ここはまだ平和だが、それでも女のソロルーキーなんて狙ってくれって言っているようなもんだ」


 そっか……

 キミドリちゃんはもうギルド関係者ではないけど、職員は元同僚だし、顔が利くんだ。

 ロビンソンはそこに期待をしているのだろう。


「私は誰からも狙われなかったけどね」


 こっちの世界に戻ってきて狙われたのは変態天使のアーチャーくらいだ。


「お前さんはイロモノすぎるんだよ。あと、何か怖い。よくわかんないけど、得体が知れない怖さがある」


 探索者になって、強くなると、なんかそういう勘が働くのかね?


『おぬしの圧のせいか? 妾のせいか?』


 どっちもじゃない?

 私達、人間じゃないし。


「まあ、ロビンソンさんの言いたいことはわかりました。ギルドには言っておきますよ」


 キミドリちゃんはロビンソンの頼みを了承した。


「悪いな、頼むわ」


 パパは大変だなー。


 ロビンソンの用が済んだので、私達は受付に行き、精算をしてもらった。

 その際、キミドリちゃんがロビンソンの娘さんのことを話し、良い人と組ませるようにお願いをしていた。

 キミドリちゃんの元同僚は快く、承諾してくれたので、私達は安心して、家に帰った。





「ちなみに、キミドリちゃんの親は反対しなかったの?」

「しましたよー。無視しましたけど」


 こいつ、マジで終わってんな。


「お願いだから、キミドリちゃんの尊敬できるところを教えてよ…………」

「私達、気が合いますね。私も同じことを思っていました」


 ……………………

 私達、ズッ友だょ……!!


 



本日の成果


 ユニコーンの角 10000円×13個 = +130000円

 蛇の皮     12000円× 8個 = + 96000円

 スライムの毒  15000円×22個 = +330000円

 

 計   +556000円       


 はるるんの所持金 60万円

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人共クズすぎて好きw
[気になる点] 前の日には27万残ってたのでは……
[一言] …うん、二人がダメなのは知ってた。 というか、はるるんもキミドリちゃんも どう育てばこんなことに… 両親頭抱えてそう
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