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第050話 200歳だから仕方ないよね……


 12階層にやってきた私は携帯で出現モンスターをチェックする。


「うーん、この階層はポイズンスライムかー……えーっと、ドロップ品はスライムの毒で15000円。結構、高いねー」


 スコーピオンのドロップ品であるサソリの毒もだったが、毒は高いなー。


「毒は下手すると、かすり傷で死にますからね。毒用の魔法やポーションを持ってないと、厳しいので、必然的に供給が少ないんです」


 キミドリちゃんが毒が高い理由を教えてくれる。


「サソリの毒もだけど、毒なんて何に使うの?」

「私も詳しくはないんですが、医療用に使うらしいです。値崩れはまず起きないので、大量に集めるならここがお勧めですね」


 ふむふむ。

 医療用が何なのかはわからないが、15000円を大量ゲットはいいかもしれない。

 ポイズンスライムはアトレイアでも見たことがあるが、変な液体を吐いてくる程度で、戦闘能力はスライムよりちょっと強いぐらいだ。


「キミドリちゃんが一人で来ている時もここ?」


 キミドリちゃんはここ1ヶ月間、1人でダンジョンに来ている。

 とはいえ、Dランクだから15階層までしか行けないはずだ。


「いえ、私は15階層で狩りをしていますが、おすすめはしません」

「ん? なんで?」

「15階層はインビジブルというモンスターなんですが、こいつは透明で見えないんですよ。素材は魔鉱石と呼ばれる石で20000円と高額なんですけど、見えない敵と戦うのはストレスがヤバいと皆が忌避しています」


 インビジブル…………

 アトレイアでも聞いたことがないな。


「ウィズ、知ってる?」


 私はウィズに謎のモンスターのことを聞いてみる。


「インビジブルはダンジョンにしかおらんモンスターじゃな。強くはないモンスターじゃが、キミドリが言うように透明で発見が難しく、奇襲を受けやすい」


 キミドリちゃんはそんなめんどくさいモンスターを狩っているのか…………

 

 いや、そっか……

 キミドリちゃんにはシックスセンスがある。

 透明だろうが、野生の勘で分かるんだ。

 何しろ伯爵級天使ハワーの透明な剣を払ってたし。


「私は止めたほうが良さそうだなー」


 はっきり言って、私は勘がするどくない。


「ですねー。ハルカさんは毒が効かないんですからポイズンスライムがいいと思います」


 私もそれがいいと思う。

 ウィズはもちろんだし、吸血鬼であるキミドリちゃんもサマンサも毒は効かない。

 そうなると、ポイズンスライムはただのスライムだ。


「ちなみに、13階層は?」


 私はこうなったら他の階層も聞いてみようと思い、元ギルマスでダンジョンやモンスターに詳しいキミドリちゃんに聞く。


「13階層はハイゴブリンです。ドロップ品は大鬼の角で12000円」

「安いね?」


 さっきの蛇と同じ値段だ。


「13階層は数が多く出るんですよ。しかも、この12階層と次の14階層を回避する人が多いので、供給が多めになりがちで値崩れしてるんです」

「12階層は毒だからわかるんだけど、14階層も?」

「14階層はグールが出るんですよ…………別名が死食鬼。殺されたらそのまま食べられちゃいます。しかも、ドロップ品は魔石のかけらで5000円」


 あー……グール君かー…………

 ゾンビちゃんよりも友達なんだけど……

 それにしても、5000円は安いなー。

 私の仲間は皆、安い。


「一応、言っておくけど、グールは私達吸血鬼にめっちゃ近いからね…………」

「え!? マジです?」

「うん。私達は亜人で、グールはモンスターだけど、基本的には同種かな……」


 同じ鬼だし。


「吸血鬼を辞めたくなってきたんですけど…………」


 キミドリちゃんがめっちゃ嫌そうな顔をしている。


「そんなこと言わないでよー。まあ、私達には理性がある、か……ら…………」


 私は途中でしゃべるのを止め、キミドリちゃんとサマンサを交互に見た。


 横領し、いきなり首を刎ねてきた車馬鹿バーサーカーのキミドリちゃん。

 歪みきった狂恋の『ピー』大好きなド変態のサマンサ。


 …………理性?

 こいつらにあるか…………?


「…………私がしっかりしないと」


 私はこの2人の親だ。

 私がしっかりとこいつらを導いてあげないと!


「いや、何を思っているのか、大体、想像がつきますが、あなたが一番理性がないし、トップクラスにヤバいですよ。ペドなうえに、この間も、高校生を襲ってたでしょ」

「いやいや、それはおかしい。愛に性別も年齢も関係ないから」

「愛……? ハルカさんのそれは、愛ではない気がするんですけど」


 キミドリちゃんの目が冷たい……


「いいえ、愛です! それはもう素晴らしい愛です!!」


 サマンサが両手を合わせ、キラキラしながら言ってくる。


「サマンサさんはちょっと黙っててもらえます?」

「あ、はい」


 引き下がるの、早くない?


「キミドリちゃん、急にどうしたの?」


 私が女の子を好きなのは今さらじゃん。


「いえ…………ギルドの元同僚に聞いたんですけど、警察がハルカさんのことを聞きに来たらしいです」

「まぢ? 例の高校生のやつかな?」


 あの子に顔は見られてないし、男2人はハワーに殺されたはずだ。

 バレるはずがない。


「いえ、そこまでは…………ただの聞き込みらしいです。ただ、ハルカさん、完全にマークされてません?」


 マーク……

 うーん…………


「保育園のボランティア事件か、それとも小学校の待ち伏せ事件か…………もしかして、プールの更衣室事件かなー? 警察に補導というか、話を聞かれたのはそれくらいだったと思う」


 エリちゃんはセーフだったはず…………


「多すぎません? ハルカさんが警察に厄介になったことは面接の時に聞いてますが、あなた、マジで捕まりませんか?」


 本当は捕まるはずだった。


 そうか…………

 エリちゃん事件の時、やたら警察が早く来るなと思っていたが、私、完全にブラックリストに載ってるんだ……


「もしかして、この前の女子高生のやつも疑われているのかなー?」

「多分…………だって、犯人は女性で被害者は小さい女の子なわけですよね? かなり絞られているような気がするんですけど…………」


 というか、私しかいない気がする…………

 ヤバいな…………

 いくら女性同士の場合は罪になりにくいとはいえ、未成年はマズい…………


「控えたほうがいいかなー?」

「そうしてください。塀の外で帰りを待つなんて嫌ですよ」


 き、キミドリちゃん!

 友情だね!


「その時はキミドリちゃんも一緒に入ろうよー」

「それはもっと嫌です。私の横領も顧客情報流出を隠蔽したこともなかったことになるんですから」


 こいつ…………

 さりげにとんでもないことを言ってる…………


「ロクなのがおらんな…………」


 ウィズが完全に呆れてしまっているが、この中で一番ヤバいのはウィズだ。

 だって、アトレイアでは、いくつもの国を滅ぼした魔王だし。


 うん、このメンツ、ヤバいな。


「真面目に生きるつもりはこれっぽっちもないけど、大人しくしてよっか」

「そうしましょう」


 私とキミドリちゃんはうんうんと頷いた。




 ◆◇◆




 自分が思ったより、ヤバい状態に置かれていることに気付いた私はガールズハンティングを引退することに決めた。


 こうなったらこの4人で遊んで生きていくことにしようと思う。

 そのために必要なのはお金だ。

 ダンジョンで稼がねばならない。


 私はポイズンスライムを探して、歩いている。

 他の階層が微妙そうなので、とりあえずはここで稼ぎつつ、ランクアップを目指すのだ。


「ハルカさん、天井にポイズンスライムです」


 私が張りきっていると、後ろにいるキミドリちゃんがまたしても教えてくれた。


「天井……?」


 私はキミドリちゃんに言われたので、上を見ながら歩いていると、確かに茶色っぽいスライムがいた。

 ダンジョンの天井は4メートル程度であり、距離を置けば、ある程度は見れるが、薄暗いし、茶色いポイズンスライムは汚れにしか見えない。


 多分、私一人だったら気付かずに通り、頭の上に降ってきただろう。


 死にはしないけど、あの色のスライムが頭に降ってくるのは嫌だ。

 何がとは言わないが、絶対に嫌だ。


 私は天井でまったく動かないポイズンスライムに狙いをつける。


「我に逆らう愚か者よ……滅せよ! プロミネンス!!」


 私は簡潔かつ、かっこよく詠唱すると、私の手から真っ赤な炎が現れる。

 炎は一直線に天井にへばりつくポイズンスライムに当たると、ポイズンスライムは一瞬にして蒸発した。


 すると、ポイズンスライムがいた場所にドロップ品である小瓶が現れる。

 そして、その小瓶は天井に現れたため、当然、地面に向かって落下運動を始めた。


「あー! 15000円がー!!」


 私は慌てて走り、キャッチしようとする。


「あっ!」


 だが、どうやら私は走るのが苦手だったようだ。

 というか、ヒールを履いているので、上手く走れず、あと少しというところで、バランスを崩し、前のめりに転倒してしまった。


 コツン。


 直後、私の頭に痛みが走る。


 確認しなくてもわかる。

 ドロップ品である小瓶が転倒した私の頭に落ちてきたのだ。


 私は両腕で上半身を起こし、四つん這いで目の前に落ちている小瓶を見た。


 小瓶は思ったより、頑丈だったらしく、傷1つなかった。


「頑丈なんだ……」


 多分、普通に地面に落ちても割れなかっただろう。


 私は立ち上がり、手でドレスをパッパッと払い、小瓶を拾った。

 そして、後ろにいる3人を見る。


「いいぞ、ハルカ。その調子だ」


 ウィズは嬉しそうに、うんうんと頷いている。


「はるるん様、大丈夫ですか?」


 サマンサは心配そうにしているが、カメラを向けたままだ。


「ハルカさん、ドロップ品はよほどじゃないと壊れません。先に説明しておくべきでした。すみません」


 キミドリちゃんは言葉では謝罪をしているが、俯いて、私の顔を見ない。


「次に行くわよ。ついてきなさい!」


 私は何でもないアピールをして、前を向き、先に進む。


 誰かハンカチ持ってないかな?

 何故か、前がよく見えないんだ…………

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