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第029話 そういえば、競走とかで勝ったことがないや……


 キミドリちゃんは服の魔法を覚えた。


 その後、私達は3人でユニコーンを狩るために探索を開始する。

 予定では、3人バラバラで狩りをする予定なのだが、最初はお互いの力を知ろうということで、3人で行動しているのだ。


「この先にいますね」


 私達が歩いて探していると、キミドリちゃんが通路の奥を指差しながら言った。


「ホント?」

「よくわかるのう」


 私は全然、わからない。

 探知能力に優れている自負はあるが、モンスターの魔力が低すぎるため、わからないのだ。

 ウィズも同様だろう。


「私は気配とかでわかるんですよ。この謎の力のおかげで、モンスターを効率よく狩れました。だから、わずか2年でAランクになれたんですよ」


 おー!

 すごい。

 なんかすごい。


「剣士の勘か何かかのう?」

「その力はシックスセンスと呼ぼう」

「まあ、何でもいいですけど。それよりどうします? 私が行きましょうか?」


 キミドリちゃんは私のまんまなネーミングセンスに苦笑しながらアイテムボックスから剣を取りだした。


「じゃあ、お願い」


 と言っても、キミドリちゃんの戦い方は天使戦で見たんだけどね。

 キミドリちゃんがやる気満々だから止めないけど……


 キミドリちゃんは私達の前に出ると、待ち構えるのかと思いきや、そのまま走って、奥に消えていった。


「待ち構えろよ…………」

「私達が見えないじゃん」


 あのバーサーカーは何をやってんだろう?


 私とウィズが呆れながら通路の奥の暗闇を見ていると、すぐにキミドリちゃんがユニコーンの角を持って、戻ってきた。


「どうです? 一撃でしたよ!」


 キミドリちゃんが誇らしげに言う。


 いや、見えないから!


「まあ、こやつの力は前に見たじゃろ。どうせ、近づいて斬っただけ」


 それしか能がないもんね。


「じゃあ、次は私がやるよ。キミドリちゃん、ユニコーンを見つけたら教えてー」

「わかりました」


 私達はユニコーンの探索を再開し、歩いていく。


「あ、いましたよ」


 しばらく、歩いていると、またもやキミドリちゃんが私やウィズを差し置いて、真っ先にユニコーンを見つけた。


「キミドリちゃん、本当にすごいねー」

「ただのダメ人間ではなかったのじゃな」

「元Aランク2位でギルマスですから! エリートですから!」


 ちょっとイラっとしたが、キミドリちゃんが嬉しそうで何より。


 私はキミドリちゃんがユニコーンがいると言うので、前に出る。

 すると、前方からユニコーンがゆっくりと、その姿を現した。


「フハハ! 来たか! 貴様が来るのを今か今かと待っておったぞ!! 我こそは究極にして絶大!! 王の中の王である王級吸血鬼、ハルカ・エターナル・ゼロなり!!」


 私は腕を組み、ふんぞり返りながら大きな声で宣言した。


「ビックリした……急に叫ばないでくださいよ」

「まあ、慣れろ」


 後ろからいつもより一人多いギャラリーの声が聞こえる。


「さあ、戦士よ! 来るがいい!!」


 私はユニコーンを指差し、そう言ったのだが、ユニコーンはポカンとしている。


「おー……ユニコーンの声が聞こえます! 何言ってんだ、こいつって言ってます!」

「ほう……実は妾もそう聞こえる」


 私には『ムムム、強敵そうだが、俺は引けない! 勝負だ!!』と聞こえていたのだが、違うらしい。


「ふん! 所詮は馬か! 我の偉大さを理解できんとは…………もういい。我の完璧なる魔法で沈むがいい!! 混沌なる世界に生まれし――――ぐふっ!!」


 私は詠唱を開始したのだが、ユニコーンが急に走ってタックルをしてきたので、吹き飛ばされてしまった。


「ダメじゃないですか……」

「それはスライムの時に見たなー。もういいぞ」


 くっ!

 これだから処女好きのゲス馬は…………


「死ね!! ダークプリズン!!」


 私はしりもちをついたまま、手を前に出し、魔法を使った。

 すると、線状のレーザーが格子状になり、前方に進んでいく。


 ユニコーンはレーザーを躱そうと、あたふたしているが、通路全面にレーザーがあるため、躱せない。

 なすすべもないユニコーンはレーザーに当たり、細切れになった。


「愚か者め! 我に逆らう者はこうなるのだ……」


 うーん、突進されたお腹が痛いよう……


「こっわ! このロリ、こっわ!! バカみたいなのに、恐ろしい魔法を使ってるよ!!」


 バカみたいなのには余計だが、今はあんま否定できない…………


「ま、まあ、こんなものよ。いつもはもっとスムーズなんだけど、今日はちょっと調子が悪いわね」

「いや、絶好調すぎるんじゃろ」


 どういう意味かな?


「いやー、王級ってすごいんですねー。ただのペドロリ女じゃなかったです」


 ふっふっふ。

 我こそ真祖であーる。


「じゃあ、次はウィズねー」


 キミドリちゃん、私とやったので、最後はウィズだ。


「よーし、妾もハルカに負けじとデスフィナーレを見せてやろう」

「何それ、強そう!!」


 キミドリちゃんがデスフィナーレに食いつく。


「やめてよ。私もキミドリちゃんも死んじゃうじゃん」


 まあ、私は死なないけど…………多分。


「そんなにすごいんです?」


 私の反応に疑問を持ったキミドリちゃんが聞いてくる。


「半径数百メートルを消滅させる魔法」

「もはや、怖いどころか、何を言ってんだって感じです」


 だよねー。


「と言っても、妾はそういう範囲が広い魔法が得意じゃし」


 性能厨は嫌われるんだよ。

 これだから魔王は…………

 

「あの天使を殺したようなやつでいいよ。ユニコーンはそれで十分でしょ」


 派手さはないが、十分に強い魔法だったし、そもそも、ユニコーンはそんなに強くない。


「うーん、映えんぞ?」


 女子か!


「別にいいじゃん」

「…………先にやればよかった。おぬしの後じゃと、地味になる」


 ウィズが私の後にやるのが嫌みたいだ。


 まあ、私の魔法はかっこいいからね。

 それ重視で作ってるから。


 私達は再び、探索を再開する。

 そして、またもやキミドリちゃんがユニコーンを発見したため、足を止めた。


「うーん、妾もこんな時のために無駄な魔法を作っておけば良かった…………」


 ウィズは悩んでいる。


 でも、無駄な魔法って何?

 あんた、私の魔法をそんな風に思ってたの?

 失礼しちゃうなー。

 ぷんぷん。


「あのー、魔法って作れるんですか?」


 魔法に興味があるっぽいキミドリちゃんが聞いてきた。


「そりゃあ、魔法なんてイメージだからね。皆が知ってて、使っている魔法が基礎魔法。自分達で勝手に作ったのが応用魔法」


 アトレイアには魔法学校なるものもある。

 そういう所で基礎魔法を習い、一人前になったら自分でかっこよかったり、効率のいい魔法を編み出していくらしい。


「へー、じゃあ、私も応用魔法を作れるんですか?」

「作ってもいいけど、基礎もできてないのに応用はおすすめしないよ。そういうのは剣道でもあるでしょ?」

「あー……まあ、剣道と言わず、全般的にそうですね」


 基礎が出来てないうちに応用をやっても身につかない。

 キミドリちゃんが言うように、どの世界も一緒の事だろう。


「終わったぞー」


 私とキミドリちゃんが話していると、前に出ていたウィズが言う。


「え?」

「…………いつのまに」


 私とキミドリちゃんは呆気にとられる。


「見てすらおらんのか…………まあ、エアカッターで斬っただけじゃから仕方がないが」


 うーん、なんかごめん。


「よくわからなかったけど、一通り、お互いの力はわかったかな?」

「まあ、おぬしのドジしかピックアップされておらんがな」

「お二人がすごいというのはわかりました」


 うーん、あんまり意味がなかったかなー。

 まあ、これからも一緒にダンジョンに行くし、そのうち、わかるだろう。


「じゃあ、今からばらけて狩りをしよっか」


 私は全員の大体の能力が分かったところで、当初の予定通りの狩り方法を提案する。


「じゃのう……集合場所はどうする?」

「魔方陣でいい思います…………えーっと、今が2時だから、5時に集合しましょうか」


 3時間か…………

 まあ、そのくらいかな。


「妾は時計を持ってないのじゃが」


 そういえば、そうだ。

 ウィズに携帯を買ってあげると言っていたが、最近は忙しくて買えなかった。

 というか、ウィズが暑くて、外に出たがらないせいもある。


「引っ越したら携帯買おっか」

「そうしてもらえると、ありがたい」


 しかし、この子、猫だけど、操作できるのかな?


「ひとまず、今日は私の腕時計を使ってください」


 キミドリちゃんは腕時計を取り出し、ウィズに渡す。

 ウィズは腕時計をパクッと咥えると、すぐにアイテムボックスに収納した。


「じゃあ、やろっか」

「せっかくですし、勝負しましょうよ」


 キミドリちゃんが名案を思いついたといった感じの顔で提案してくる。


「勝負?」

「おもしろそうじゃが、何をするんじゃ?」

「単純に5時までにどれくらい狩れるかです。一番少ない人は一番多い人の言うことを聞くということで」


 なるほど。

 モチベーションアップのためにもいいかもしれない。


「妾はかまわんぞ」

「私もー」

「じゃあ、始めましょう よーい! スタート!!」


 キミドリちゃんが開始の合図をした瞬間、キミドリちゃんもウィズもあっという間に走って消えていった。


 あれ?

 2人とも、速くない?


「うーん、まあいっかー。私が負けるわけないしー」


 私は勝ちを確信し、ユニコーンを探しに歩き出す。


 その後、私は自慢の魔法を駆使し、ユニコーンを狩っていく。

 今日はとても調子がいいらしく、順調にユニコーンの角を集めていった。


 これは勝ったなー。


 私は最下位だろうと予想するキミドリちゃんに何をさせようかなーと妄想しながら、ユニコーンを狩り続けた。


 そして、3時間後、時間になったため、集合場所である魔方陣がある所に向かう。

 集合場所である魔方陣に着くと、すでに、ウィズとキミドリちゃんが待っていた。


「お待たせー。遅れてごめーん」


 私は待たせたことを謝りながら2人の所に近づいた。


「ようやく来たか」

「お疲れ様です」


 私が到着すると、2人が迎えてくれる。


「じゃあ、集計しましょうか。私は自信がありますよー」

「妾もじゃ」


 2人は盛り上がっているが、一番は私だろう。


「キミドリちゃんは何個?」


 私は最下位と予想するキミドリちゃんに成果を聞く。


「私は42です」


 は?

 多くね?


「チッ! 負けた。妾は40じゃ」


 いやいや、ウィズも多いよ!


「ふう……危なかったですねー。最後に追い込みをかけておいて正解でした」

「うーん、2位かー。おぬしのシックスセンスとやらは本当にすごいのう」

「いえいえー。1位を確保できて良かったです」


 こいつら、盛り上がっているんだけど、何故、私が最下位なことが前提なのだろう?


「ねえねえ、何で私が最下位って決めつけてるの? 私が1位かもしれないじゃん」


 まだ、私の結果を言ってないよ。


「いや、だって、おぬし、トロいし……」

「無駄な名乗りとか、詠唱しますし……」


 ウィズとキミドリちゃんは当然といったように決めつけてくる。


「わかんないじゃん!」


 まだ、結果発表は終了してないよ!


「じゃあ、どうだったんです?」

「まあ、28だけど…………」


 ちょーっと、少ないかな…………


「知ってた」


 ウィズが頷きながら言った。


「まあ、この勝負は始めから最下位は決定していて、実質、私とウィズさんの勝負ですからね」


 ひどい!

 いじめだ!

 これをいじめと言わず、何と言う!


「というか、本当に少ないのう……28って……」


 うっさい!


「帰ったら罰ゲームですね」


 うっさい!


 私はババア2人に敗北してしまった…………


 コンティニューボタンはどこ?

お読み頂き、ありがとうございます。

明日も17時くらいの投稿になりますので、よろしくお願いいたします。

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[気になる点] 基礎がないからこそ出来る 常識にとらわれない魔法もある [一言] イエローグリーンよ思うがまま魔法を作るのだ
[良い点] バイオのサイコロステーキかな? かっこいい魔法沢山使えそう 格好付けきれてないけれど…
[一言] 映画版バイオに出てきたアレか
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