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0週・生理開始(28日周期)-1

前作『マタニティライフ』は2009年に書いた小説です。

こちらはその2、3年後に書き始めてしばらく放置していたものを完成させようと公開を開始しました。

ペースはゆっくりですがよろしくお願いします。

二月某日

夢、三歳の誕生日会/美千歌、里帰り出産のため実家にて開催


照明が落とされたリビングのテーブル上に、スポットライトが当たったみたいに浮かび上がる特大ケーキ。色とりどりのフルーツがたくさん飾られたその上に、火の点された『3』の形をしたロウソクが誇らしげに乗っていた。

大きく頬をふくらませ、小さな口を尖らせたゆめがロウソクの火を吹き消した。


「夢ちゃ~ん!三歳のお誕生日、おめでとう~!」


大きな拍手とともに電気がつけられ、本日の主役の夢は目いっぱいのオシャレをしていて、頬を上気させてはにかんでいた。

毎年恒例となっている、両家そろった夢の誕生パーティー。

今年は私の実家で開催されていた。

妹の美千歌みちかが三人目の出産のため、里帰りしているからだった。

おまけに予定日が近く、もういつ産まれてもおかしくなかった。

「すみません、大勢で押しかけちゃって……」

おさむくんは恐縮しているが、このほうが落ち着けるので私も楽だというのが本音だった。

それにお義父さん、お義母さん、ゆきくんもきてくれたので、普段はお父さんとお母さんのふたりだけでもてあまし気味の広めのリビングはとても賑やかだった。

「いいのよ~。いま美千歌がこんな状態でしょう?ウチにきてもらって、かえって助かったわ~」

「そうそう!もういまにも産まれそうなんだから~」

美千歌はずっとハイテンションで冗談ばかり言っている。

まあ、いつ産まれてもおかしくないのは本当なのだけれども。


「ほら、パパじいじとパパばあばからのプレゼントだよ~」

「これはママじいじとママばあばからよ~」

「これはおじちゃんからだぞ~!」

「これは……『お姉ちゃん』からよ~」

「美千歌!アンタまだそんなこと言ってんの?」

「まあまあ、いーじゃない!永遠の乙女ってことで」

「そんなお腹の大きな乙女はみたことないけど?」

嫌味を言う私の横をパタパタと甥っ子たちがすり抜けていった。

「これ、ボクたちがかいたんだよ~!」

「よ~!」

甥っ子たちはふたりで夢の似顔絵を描いてプレゼントしてくれた。

「みんな、ありがとう!ゆめ、すっごくうれしい!」

夢は受け取った絵を胸に抱きしめて、満面の笑みを返していた。

親バカの自覚はあるが、夢は三歳にしてはとてもしっかりとした子だった。

私たちが色々とおもちゃなどを買ってあげようとしても、あまり物を欲しがらなかった。

「夢、パパとママからのプレゼントはなにがイイ?全然教えてくれないからママたち決められなくて」

「ゆめ、ほしいもの、ないの」

しっかりしているのはいいのだけれど、少ししっかりしすぎではないだろうか?

このくらいの月齢ならあれも欲しい、これも欲しいと駄々をこねるほうがどちらかというと普通ではないのだろうか?

「お誕生日なんだし、なんでもいいのよ?夢が欲しいものはなに?言ってみて?」

「……」

夢は少し考えこんだ。

「……ほしいもの……」

「うん、欲しいものは?なに?なんでもいいのよ?」

「そうだぞ、なんでもいいから言ってごらん?」

理くんも少し心配そうにしている。

夢はなにか言いたそうにしているようにみえたが、結局なにも言わなかった。

「じゃあ、なにがいいか思いついたら言ってね?」

「……うん!」

とびきりの笑顔でうなずく夢にみんなデレデレになっている。

「兄ちゃん!兄ちゃん!早くケーキ食べよう!」

由くんがフォーク片手に手招きをしていた。

「こら!お前の誕生日じゃないんだから!」

由くんが理くんに叱られていた。

「ゆきくん、はいどうぞ」

夢がケーキの乗った皿を由に手渡した。

「由、これじゃあお前と夢、どっちが年上かわかんないじゃないか」

「あ~!ひっでぇなぁ!兄ちゃん!」

その様子をみて、みんなで大笑いしていた。

「……」

夢はみんなが笑っている横でなにか思いつめているようにみえたが、そのときはなにを考えているのか見当もつかなかった。

パーティーは夜遅くまで盛り上がり、その日はそのまま実家に泊まった。

ふだん夢は子供部屋にひとりで寝ているのだが、この日は親子三人、布団で川の字になって眠った。

推敲したものと差し替えました。

よろしくお願いします。

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