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短編集

お酒の絆

作者: チャラン

 桃の節句に沢山の友達を呼んだ女の子がいる。女の子の友達も男の子の友達もけっこうな人数が来ていた。このおしゃまな女の子はその中に、意中の男の子を呼んでいた。


「成松くん、お一つどーぞ」

「あっ、ありがとう、曽根さん」


 曽根さんと呼ばれた小さくおしゃまな女の子はそれとなく近づいて、意中の成松くんに甘酒の酌をしてあげている。幼く微笑ましい光景で、彼女の母は隠れて様子を見ながら笑顔を浮かべているようだ。


 みんな和気あいあいとゲームやとりとめのない子供らしい話をして遊んでいたが、楽しい時間は過ぎるのが早く、ひな祭りのパーティーはもうお開きになった。友達みんなを見送った後、成松と二人きりになった曽根は、


「また来年も来てね」

「うん。きっと来るよ」


 幼い恋心をあまり隠しもせず、成松と約束をしたものである。そして、当然それは叶うものだと二人は心に信じていた。




 半年後、成松は父親の転勤の都合で遠くへ引っ越すことになった。親しくしてもらった曽根にも別れの挨拶をしようと彼は曽根の家に来ているのだが、曽根は悲しみの涙で成松の顔を見ることができない。成松は少し困っていたが、これだけは渡すと決めていたある物をポケットから取り出した。


「これは、お守り……?」

「そうさ、縁結びのお守りだよ」


 それだけ言って気恥ずかしくなったのか、成松は走って帰って行く。驚いた曽根は呼び止めようとしたが、彼の足は速くもう声が聞こえない遠くまで行ってしまっていた。


(縁結び……)


 泣き止んだ曽根は、お守りの意味を考えている。しばらくしてハッと、両想いと再会の2つが心に浮かび、縁結びのお守りを胸に抱いた。




 年月が経ち、曽根は年頃の女性に成長した。公立病院の看護師となっている多忙な彼女の楽しみは、たまに適当な居酒屋でちょい呑みすることである。タバコはやらないが、酒はかなり好きになっているようだ。


 日勤が終わった帰りに、ちょい呑みをしてみようと行きつけの居酒屋に立ち寄ると、顔なじみになった大将の前で飲んでいる若い男がいた。


(どこかで会ってるかも……)


 その男性にうっすら覚えがあり、興味を持った曽根は、男性の席の近くに座り、それとなく顔を覗いてみる。男性と目が合ってしまい、合うと同時に二人とも声を上げて驚いた。


「成松くん!!」

「曽根さん!!」


 大人になるほど年月が経ち、子供の頃の別れ以来会うことが叶わなかった二人だが、曽根が肌身離さず持っていた縁結びのお守りのご利益か、ここで偶然にもようやく叶ったのだ。


「おう! なんだい! 二人とも知り合いなのか?」


 成り行きを見ていた大将はやや怪訝である。偶然とは重なるもので、この居酒屋は大吟醸「再会」が飲めることで知られた店だ。曽根と成松は子供の頃から今までのことを大将に語ると、景気のいい大将は手を打って、


「めでてえことじゃねえか! よし! こいつは奢りだ!」


 気っ風よく「再会」をコップになみなみと注ぎ、再会を祝し二人に振る舞った。二人はなんだか面映い。




 大人になった今でも気持ちが変わらず通じ合っていた曽根と成松はすぐカップルになり、そんなに間を置くこと無くゴールインした。


 夫婦になってからも、大将のところへ仲良く「再会」をちょい呑みに来ているそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] おひとつか! 謎は解けました。すみませーん(> <)どうして長音符(横棒、伸ばし棒)で読んでしまったのか。
[良い点] 大将いいですね。大将にポイント注ぎます(笑) [気になる点] 「おーつ」はオーバーナイトオーツかオートミールのシリアル食のことでいいのかな。普段食べないので、その後「甘酒の酌をしてあげてい…
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