第一章2.出会い.始まり
村へつくと三人の村娘達が出迎えてくれた。
どうも僕らが帰って来るのを今か今かと待ち望んでいたらしい。
「シオーッ!!お帰りなんだよーー!!街は楽しかったのだよ?」
元気いっぱいに飛びついて来るこの子の名はシュカ
淡いピンクの色の髪色をした獣人族だ。語尾に、だよとついてきてしまうのがとても可愛らしい。
「随分おそかったんじゃないの?」
この少し冷たい感じでそっけない態度をとりつつもいつも出迎えてくれる子はセイカ、銀髪長髪を靡かせている。距離の取り方がイマイチわからず2人でいると言葉が詰まるときがある。
「お帰りなさいませ。シオン。お姉様もお疲れ様です。」
そしてこの落ち着いた雰囲気の子はティアさんの妹のフィーリア、ティアさんと似てはいるが髪が白に近いクリーム色をしている。
姉のティアさんの影響もあってか長女の働きをし、いつも二人の面倒を見ている。
「皆ただいま!街は相変わらずだけど、変な子に絡まれて大変だったよ。」
今日の出来事を説明するや否や三人の目がとても険しくなるのを感じた。
「またそうやって他の子に目配りしちゃって浮気者なんだよ?何でわたしで満足出来ないのだよ?またベット潜り込んで今度こそ虜にしちゃうんだよ?シオくん?」
「いやまてまて、目配りもしてなければ浮気もしてない!!そもそも僕は誰ともまだ付き合った事なんてないじゃないか、!!最後の発言は色々誤解を生むから後でフォロー宜しくお願いします!!」
色々ヤバくなってきそうなので早めにフィーリアに回収してもらうべきだ。そう思い視線を向けるとそこにあった顔は、とてもいい気分とは言えないようだ。
「色々説明を求めたい所なのですが、今日はおめでたい日なので言及はまた今度に致します。そして シュカ?もうだめよ?あなたも年頃の女性なのだから、シオンがもし間違いでも犯したら…」
「それは大丈夫……です。約束します。」
確かにシュカは可愛らしい。とても元気で自由奔放だ。それにすごくスタイルがいい。
「あー!今私の体を見て如何わしい事考えてたんだよ!シオくんエッチ!」
「うわぁ。シオンってやっぱり巨乳好きなんだ。
最低。少し距離置きたいかも。」
シュカとセイカからの精神的ダメージを受け、たが女神が到来した。
「ーーシオンさん、今度私とも夜をご一緒してくださいね?」
フィーリアに耳元でそう囁かれHPが全開以上になったのを感じた。
「フィー、シュカ、セイカ、暇なら手伝ってください?今日は特別な日なのですから!」
ティアさんが腕を捲りながら三人を呼ぶと気怠げに返事をし美女達は去って行った。
「さぁて、ちょっと休むとするかな、さすがに疲れちゃったよ……。」
街を歩き回り疲れ、足を揉みながらブツくさ呟いているとこの村の長が話をかけてきた。
「ーーシオン、ちょっと時間、もらえるかね?
話したいことがあるんじゃ。」
ちょっとが口癖であるこの長の話はちょっとだけで留まった事が無い。以前は二時間近くにおよぶそのちょっとの話に付き合わされた事がありトラウマなのだ。
「……いやぁ、今少し疲れてるんでまた今度にしないですか?あ、ほら!今日は夜は長いですし!」
「キサマ、わしの誘いをそういった戯けた言い草で躱すきか?死ぬぞ……?」
「はい!今すぐききましょう!何なりと!」
この老人は昔王国の騎士長としても名を馳せただけある肉体と威圧感がとてつもない。
ここは黙って着いていくのが得策だ。無事明日を迎えたければ。
「ついてこい。わしの家の地下をみせてやる。」
何度か家に招かれた事はあるけれどもその度に地下へ続く扉にだけは近づけさせてはくれなかったので、なんだか何かが起こるのではないかと思い、
気づけば握りしめた掌は汗ばんでいた。
なんて事のない会話をしながら歩いて家に向かう途中
「最近はどうだ、何も異変はないか……?体の調子等変化があればすぐ知らせるのだぞ。ティアにでもいい、あの三竦み達にでもだ。」
「なんですか急に、僕だってもう成人になるんですよ?そんな風邪をひいた、なんて事で誰かに頼る様なことなんて、」
ヘラヘラしながら受け答えをしていると急に長は立ち止まりこちらを見ずに一言凄みのある声で
「真剣に話しているんだ。」
そう一言言い残しまた歩き出し、僕はその凄みに圧倒されながら数歩遅れながら後を追いかけた。
「着いたぞ。入れ。」
「お邪魔します。うわ、なんか暑くないですか?ちゃんと換気しなきゃだめですよ……」
蒸し暑くなんだか重たい空気を感じ独り言を言っていると長は長年僕の前で開ける事のなかった扉に手をかけ何やら深刻そうな顔をしていた。
「開けるぞ……この先にある事は他言無用じゃ。知っている者も数名はいる。だがそれを皆来るべき時が来るまでシオン、お前には話さずの誓いを立てた。それは蚊帳の外に締め出す為ではなく、お前が生きのびる為であった。愛故の選択だったと信じて欲しい。」
「何が、あるんですか……僕が生き延びる為っていきなりよくわからないですよ、なんでこんな急にシリアスな展開になってんですか。」
「……困惑するのも当然だ。だが見ればわかる。
いいか?この先になにがあっても自分を忘れるな。それしかわしは言えん。」
そう言い扉を開け放った瞬間、長の家の空間が突如別次元の空間に入れ替わる感覚に襲われた。
視界は変わらない。階段があるだけだ、只何故かそこから先に脚が、いや本能的に進みたくないと拒絶している。視界の端に長が何やら唱えているのがわかった。
「アギョウウンギョウサマヨウ狛犬よ、この者を魔から邪気から護りたまえ」
「……なん……です、こんな時に、気でも触れましたか?」
長がおかしくなってしまったと思い、死を直感し、目をギュッと瞑り、心の中でティアさんを思い浮かべていると、
「ハァ、ハァ……もう、大丈夫じゃろう。」
目をゆっくり開け、声のする方に視線を送るとそこには謎の言葉を言い終え、長が息切れをして膝に手を当てていた。僕は先程の圧迫感が嘘の様なこの場に驚きを隠さずにいた。
「なんだったんですか?今もう死ぬかと思いました。」
「守護獣の加護を用いて邪を払ったのじゃ、この世の中の人間皆、大なり小なり守護獣の加護を受けておる。」
「……守護獣。いきなりでよくわからないけど凄いんですね!なんかかっこいい!天使とか神様みたいですね!」
「ううむ……。まぁ正解ってとこじゃの。」
「強い守護獣集めたら無敵感満載って感じしますね、」
「受けられるのは、一人一支のみじゃ。簡単に言うと何体もつくとその人間は負担に耐えられず破裂してしまうんじゃ。」
「ウゲェ、グロいですね。守ってもらってるはずなのに……。あ!僕にもあるんですか?その加護って」
「……今は無い。」
「えぇ!!さっきの話だと大なり小なりあるんじゃないんですか?!」
「……ううむ。無いというより切り離してあるんじゃよ…何故かはこの先に行くと明白じゃ。」
あるって言ったり、無いって言ったり、切り離してるとかいよいよ理解の範疇を超え段々苛つきを感じてきてはいたけれども、この先に答えがあるというなら進もうではないか。そう考え脚を進める事にした。
歩く事20分程だろう。ほんのり青く光る地下階段を降り、平坦な道をまっすぐ突き進むと大きな広場に出た。
「こんな所この村の真下にあったんですね。全然知らなかったです。」
「知るものも少ない。ここは森の真下に当たる場所じゃ。」
そう言いながら傍にある台座に長が手を翳し、
何やらし始めた。
「我が騎士長の名の下に命ずる、我が守護獣ヘルハウンドの力を持って扉の鍵を開けんーー」
地鳴りの様な音と共に眼前の岩が少しづつ開き始め、中からは皮膚が焼けそうな熱気、全てを包み込む様な光、そして虚無が流れ、その正体は巨大な赤い狼、尾が九つ生えた狐、銀髪に黒いツノ黒い翼を持った人型の何か。
それらが口々にこちらに言葉をかけてきた。
「ーーワガアルジ……ヒサシクオメニカカリマス」
「ーーやっと。出会えましたのね、」
「……ボクは全然会えなくても良かったのに。」
この時胸元の三重の痣がドクドクと疼き始めていた。