ウォーレン復活
海運や、漁業は発達しているが、客船に迄は及んでいなかった。前回同様に貨物船に便乗させて貰う。ただそう言う需要も無い訳では無くいらしく、一応客室っぽい部屋が用意されていた。大部屋で雑魚寝だが、特に問題は無く過ごす事が出来た。
海賊らしきモノの出るらしいが、ミラ・シリウス・アルタイルのラインは、海賊船2隻を瞬殺する用心棒が居ると言う噂が浸透していて、比較的安全らしい。実際に起きた事だし、今もそれなりの魔族が乗ってるし、取り上げた船で護衛や巡回しているので、迂闊に手を出す状況じゃ無いのだろう。
シリウスに到着。セレス達も子供達も船酔いせず、元気にシリウスの屋敷を訪れた。魔王への挨拶もそこそこにジョナサンの実家を訪れる。可愛い孫娘の訪問に沸き立っていたが、当のへーべは新しくできたお姉ちゃんにべったりで、祖父母は空回り状態。気の毒に思ったパトリシアはなんとか遊びの輪に引き込んでいた。記憶は無いものの、成人の知識と、パトリックになっていた自分の子供だという情報を持っているので、子守を堪能、何時もは子守に追われているセレス達にパーティーを楽しむ時間をプレゼントしていた。
翌日、やや欲求不満気味の祖父母を残し、デネブに向かった。パトリシアはケヴィン、ジョージセレクトの甘々女児服を着させられていた。2人は記憶の無い事に目をつけ、自身では決して選ばない可愛らしい服を買い込んでいて、パトリシアも他に選択肢が無いので、着せ替え人形になっていたが、シリウスの街を出る前に洋品店に寄り、2人が、いや4人がガッカリするコーディネートで馬車に戻って来た。記憶は無くても好みは変わっていなかった様で、余り子供らしく無い飾り気のない洋服で、旅の再スタートを切った。
デネブ迄は、メインの街道では無いので、整備は行き届いていない道を進む。勿論、それは想定済みなので、キャンプの準備や保存食等で馬車を一杯にしていた。人通りが少な過ぎて盗賊の心配も無い位だが、その分魔物の出没が懸念される。ほとんど集落も無いまま日中は馬車に揺られ たまに遭遇する魔物を退治、夕方テントを張ってキャンプという毎日を繰り返し、アルデバランに入った。五段校に通った都市部では無く、辺境部をかすめて温泉宿に1泊して、また魔物退治とキャンプの日々を繰り返してデネブにたどり着いた。
夜更けにやっと、デネブの屋敷を訪れると子供達を預けていた時の部屋はそのままで、子供ながらに懐かしさを感じるのか、シャキッと目を覚まして何時にも増してリラックスした様子で、遊び慣れた遊具をパトリシアに勧めたりしながら遊んでいた。
子供達が目をこする様になり、やっと解放されたパトリシアはデネブに記憶の事を相談した。
「こりゃ凄い!魔力の総量は、アルタイル殿を上回っておるのう!岩の巨人は相当デカいヤツであろう?」
デネブはパトリシアに気を放つと、
「石化が残っているな。どれっ!」
首筋に手を当て、ほんわか光ったかと思うと、その光がパトリシアを包んだ。
「石化の影響は全て解けた筈じゃ、記憶は、石化から脳を護る為に自動で発動した護身の魔法でな、安全確保が出来て一定期間が経つと解除されるんだが、お主の魔力量だと数ヶ月は掛かるであろう。のんびり待つことじゃ。」
魔力量の多さで一命を取り留めたが、その量が多い事で、解除に時間が掛かるらしい。
「リラックスして、魔力の巡りを良くしておくのが良いそうよ!」
看護師さんのようにデネブをサポートしていたデュアが、処方された薬草のお茶を淹れて差出した。そのままウェンディに、
「ウォーレンが元に戻ったら、魔力の巡りに関しては心配無くなりそうね。」
ニッコリ笑い掛けた。真っ赤になったウェンディを見て、理由を察したパトリシアも続いて赤面していた。
四天王はデネブのファミリー達と酒盛りの最中で、参戦したデネブの隣にはデュアが座った。子供を寝かし付けたセレス達がその両側を固めた。魔王は自ら、デュアのグラスにジュースを注いで、改めて乾杯した。
「やっぱり?」
ジュノーは、隣に座ったデュアのお腹を触って、
「私達の弟か妹ね?」
デュアは恥ずかしそうに頷き、デネブは嬉しそうに、
「もうすぐ4か月じゃ!」
ん?4か月前って卒業式の頃?セレス達が吹き出し、事情の把握と月勘定を済ませたパトリシアが送れて吹き出した。ウェンディと四天王はちょっと呆れた感じで詳細を避けるように、パトリシア回復過程に話題を引き戻していた。
しばらく滞在して、パトリシアの経過を観察。その間、四天王はギルドの依頼を熟し、パトリシアは子供達と遊びながら読み書きを教えたりしてのんびり過ごした。
満月を迎え、元の姿になったパトリシアはウォーレンと夜を明かした。夜を充分に堪能したが、記憶を取り戻すには至っていない。まぁデネブの推測で数か月との事だから、そう都合良く解決するとは思っていなかったので落胆は無かった。
数日して、ウェンディが犬から変身して1か月。ウォーレンが待望の元の姿に戻れる日が来た。ウェンディはガウンを羽織った状態で元の姿をイメージした。ほんのりと光ると、身体がグンと大きくなり、月に1度しか会えないウォーレンの姿になった。ただ予想していなかったのは、こめかみの上から、立派な角が生えていた。
魔力は充分に有るので、角を隠す位の変身は可能だろう。パトリシアがコツを教えたが、なかなか上手く行かなかった。四天王達がそれぞれ自分の流儀を解説、失敗を繰り返し、なんとか人族の姿を手に入れた。
妖精の魔法による変身は思わぬ結果だったが、また1か月後、再トライすれば良い事なので気にしない様にして、パトリシアの療養に集中する事にした。とは言え、具体的な治療法がある訳でも無いので、一般的に身体に良い生活を心掛け、温泉でのんびりしたり、子供達と遊んだりして、前回の変身から1か月が過ぎた。
幼女化したままのパトリシアは、毎晩ウォーレンのベッドに潜り込んでいたが、ただの添い寝だけだった。記憶は無いが、以前魔力の巡りが悪くて幼女化した際には、大人と同じように夜を過ごしていた事は耳にしていて、今回もそうした方が良いのではと思っていたが、ウォーレンに切り出す事は出来ていない。ウォーレンはと言うと、子供相手にそんな行為は思いも付かない様で、腕枕のパトリシアの髪を撫でたりしていて眠っていた。




