想定外
オレンジの眼のウェンディと山菜採り。薬草やキノコ程でも無いが魔力に効果がある山菜を採りに行く。セレス達もたまには外出したほうが良いと、カペラの皆さんが子守を買って出たので、10人での外出になった。
山菜は順調に集まり、珍しいキノコとかも採れて、のんびりランチタイム。お弁当を広げると、
「おお、思ったより早いな!」
マキシミリアンが現れ、ウェンディの眼を確認していた。
「もう充分だ、変身出来るぞ!」
ジョージが玉子焼きを差し出すと、ガツガツと平らげ、いつの間にか、沢山の妖精が群がっていた。ありったけの保存食を振る舞って妖精達が居なくなると、
「じゃあ、元に戻るよ!」
ウェンディがベルトを緩めたりして変身に備え、うっと唸ると、眩しい光に包まれた。直ぐに光は収まり、閉まりきった瞳孔が元に戻ると、犬のウォーレンがちょこんと座っていた。
「うわっ!」
背後からの聞き慣れない声に振り返ると、苦しそうにベルトを緩める4人がいた。
ウォーレンは人族の記憶を持っていて、次に変身する時に人族になれると、楽天的に推測。取り敢えず、魔力アップのミッションをクリアした事で、一歩前進と思う事にした。
「あっ、さっきのトイレタイムの時!」
小柄な美少年が叫んだ。
山の中で用を足す時、男性が便利だとの話題になり、パトリシアは結界で個室を作るから気にならないと言ったが、それでも4人は羨ましいと話していた。不都合はあるが、1か月の辛抱なので、珍しい経験も悪く無いだろう。プラス思考に切り替えて馬車に戻る。
最初の不都合は靴。シートに座ってのランチだったので、靴を脱いでいたが、変身した足は入る気配も無かった。荷物を纏め直して、変身美少年がリュックサックを背負い、それを四天王がおぶって馬車に到達。商店街に寄って、取り敢えず困らない程度の着替えを買って屋敷に戻った。
子供達はママ達が変身出来た事を喜んで、何時もの様に甘えていた。ホッとして今後の事を話し合おうとすると、2つ目の不具合が発覚。変身した4人の眼が紫だった。
「ウェンディが卒業した様に頑張るしか無いな。元々魔族だから比較的ラクかも知れないな。」
ショーンは滅入っても仕方が無いと言う考えだろう、楽天的な予想で場を和ませた。大量に用意していた薬草を煎じ、魔力アップに効く料理でディナー。就寝前には皆んなの眼は青に変わっていた。
パトリシアは久しぶりに犬のウォーレンを抱いて眠り、変身した美少年達はそれぞれ、川の字で寝たそうだ。翌朝、食堂に集まると、4人の眼は紫に戻っていた。
ウォーレンは、何か言いたそうに唸り、意味が通じずに困っていると、子供達を誘うように食堂を出た。後を追うと、各部屋を回って、パトリシアのベッドに枕を運んでいた。
「ウェンディの時に協力して貰ったものね、今の顔ぶれならこうするのがベストよね?」
「くーん。」
4人の眼が赤くなるまでは、パトリシアのベッドは賑やかになりそうだ。
日中のトレーニングや、薬草、食事の成果で1日で青に、その後数日毎に色が変わり、黄色になった頃、南に向けて旅を再開した。魔王からのミッションを熟しつつ、魔力アップ出来るダンジョンを攻め、夜はパトリシアが面倒を見たが、黄色からの変化はなかなかない訪れなかった。
ミラに到着した。4人の眼はオレンジになっていた。
「今夜で紫っ事無いわよね?」
「くーん。」
歓迎パーティーの席で、満月の影響を心配したパトリシアが愚痴っぽく漏らした。
早めに切り上げて久しぶりにウォーレンとベッドに並んだ。他の4組も満月の影響を考慮して、子供を預けて二人で待機していた。
パトリシアは久しぶりにウォーレンと悦び分かち合い、逆の立場で味わったウェンディの技を試した。ウォーレンの反応から、しっかり取得できていると確信出来た。毎晩、4人を相手に技に磨きを掛けていたのが実を結んだようだ。二人とも意識を保ったままだったので、朝までお喋りを楽しんだ。
食堂に降りると、少し様子の違う四天王達が待っていた。
「何かあったの?」
「い、いや、べ、別に。」
何時もクールなジョナサンが口籠った。
「え?絶対に何かあった顔でしょ?まさか、紫に戻ったとか?」
「いや、うん、話すよ!」
ジョナサンは珍しく、端切れ悪く口を開いた。
「眼は、赤になったんだ。前の変身からまだひと月経っていないから、そのままでいるがな。」
「良かったじゃない!でも夜は今まで通りじゃないと、赤をキープ出来ないわね。で、他に何かあるんでしょ?」
「仕方が無いなぁ。実はセレスが・・・。」
今までは、積極的な攻めをする事が無かったが、初めて体験する多彩な技を繰り出し、そのクオリティの高さに驚いたそうだ。3人の顔に『俺も!』と書いてある様に頷いていた。パトリシアは『初めて体験する』に反応し、表情を弛めた。
「今度はパットが怪しい顔やで!」
「アレ、ウェンディの技なの。パトリックの時にして貰って覚えてね、セレス達4人だから、待ち時間も楽しめる様に、工夫したの!」
「ウェンディにして貰ろたのがパトリックだけっつうのが嬉しかったって事やね?」
頷いて、ウォーレンを抱きしめると、噂の4人が子供達を連れて食卓に着いた。
今後の計画として、魔力アップの生活パターンはそのままにあと1週間を乗り切る事を確認して、ピクニックレベルの薬草採りに出掛けた。
危険な魔物も出ないし、地形的にも安全な所なので、子供達も一緒に出掛けた。あまり沢山は採れなかったが、子供達が楽しんで探し、見つけた時の喜び様を見てピクニックを堪能していた。
グラリ、揺れを感じた。巨大な岩が動き出し、身長3メートルは有る岩の巨人になった。4体の巨人に取り囲まれてしまった。
「パット、留守番頼んだ!」
四天王達は一体ずつ挑発しながら、場所を移動するように戦い、パトリシアは、子供達を護る。
「飛び道具で援護して上げて!狙われ無いように気をつけるのよ!」
大地を揺るがす戦いは、一時間にも及び、何とか4勝。巨大な魔石をゲットして、パトリシアの元へ戻っていた。
グラリ、さっきに増して強い揺れを感じ、さっきと同じ様な岩が巨人になった、さっきと違うのは、1体だけなのと、その1体が5、6メートルも有りそうなスケールだった。
パトリシアは渾身の魔力弾を放ち、直ぐに結界に集中、魔力弾は巨人を撃破したが、既に放たれていた石化の魔法はパトリシアに到達、不完全な結界では防ぎ切れず、自らが盾になり、子供達とウォーレンを護った。




