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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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パーティー狩り

 早めに出勤して戦闘服に着替える。予約の受付の伝票を持ってロビーに出ると、ルーキー達が準備万端で待っていた。

「おはようございます、本日もよろしくお願い致します。」

「「「おはようございます、こちらこそ、よろしくお願い致します!!!」」」

声を揃えての返事にパトリシアは驚いた。想定した普通のルーキーなら、モジモジか、ブツブツ、もしくは女だとガッカリするかセクハラ発言。どれにも当て嵌まらなかった。しかも、前回結構稼いだにも関わらず、如何にも初心者って言う装備のままだった。立派な剣もそのままで、明るい所で改めて見ると、鞘と柄には包帯が巻いてあり、上等な剣だと言う事を隠している様子だった。流石に気にはなったが、今回も詮索せずにダンジョンに向かった。

 本日のお目当てはミノタウロス。少し難易度の高いダンジョンの深層階に出没するので、前回よりもハードな仕事になり、新人が潜る条件も『Aランカー以上かギルドが認めるガイドが同行』とハードルが上がっている。『ギルドが認める』ってワイルドカードが無ければ、実質『ルーキー禁止』に近いルールなので、パトリシアは責任の重さでかなり憂鬱だった。

 お弁当を買って、入窟の手続きをしてダンジョンを攻める。今回も同じようにルーキー達に任せ、パトリシアは付き添いのみ。10階層でランチタイム落ち着けるスペースを探していると、

「お互い楽しもうって言ってんだ、いい加減暴れるなよ。」

「・・・ん、・・・・・うう!」

口を塞がれても抵抗する女性の呻き声が聞こえた。『パーティー狩り』だろう。疲弊したパーティーを襲って、装備や戦利品を奪ったり、女性冒険者を暴行したりする迷惑な奴らだ。

「ちょっと休憩しましょう、この辺で待っていて下さいね。」

パトリシアは一人で救出に向かう積もりが、ルーキー達は見たことの無い真顔で一緒に走り出した。

 ルーキー達の前で、派手な事は出来ないパトリシアは、既にズボンを下ろしていたボスらしいヤツに体当たり。よろめいた所で体力を吸い取った。ルーキー達は、女性を押さえつけている子分達を拳で眠らさていった。子分の一人が剣を抜いてパトリシアに斬りかかったが、避けただけに見せ、男が転倒すると太腿に剣が突き刺さっていた。

 ルーキー達は、手際よく子分達を拘束、パトリシアも転がった男から剣を抜いてヒール、ボスも合わせて縛り上げた。助けた女性の話によると、奥の方にパーティーメンバーの男性二人が倒れているとの事でそこに急行した。何とかやっと生きている状態で、パトリシアの渾身のヒールで命は取り留めたが、起き上がる体力は残っていなかった。

「さっきの男達を連れて来て貰えます?」

一緒に来ていたルーキーは、走り出した。直ぐに、縄で繋がった7人を引いて皆んなが戻った。パトリシアは一人一人のこめかみに親指と小指を当て、軽く力んだ様な声を漏らした。

「ありったけの体力と、10年分の若さを吸い取ったの。これだけあれば治療出来るわ!」

不思議な顔で覗き込む女性冒険者達に説明して、倒れたままの男性の額に人差し指を当て、ブツブツと呪文の様な言葉を発すると額からフワッと光り、全身が光で包まれると、心地の良い目覚めの様に、大きなアクビで目を覚ました。もう一人も同じように回復させた。パーティー狩りの荷物を調べ、襲われたパーティーの持ち物を返却、昏睡する7人の縄を解いた。

「ギルドに突き出さないんですか?」

目覚めた男性が不思議そうに尋ねると、

「2、3時間はこの状態です。運良く生き延びたら、彼等の運って事で。」

ニッコリ笑って、助けた5人パーティーと別れ下層に向かった。

「アイツらと同じ階層でランチしたくないわ!」

ルーキー達も同意してスロープを降りた。

 11階層に降りると、都合のいい洞穴があって、結界で戸締まりして、ゆっくりランチタイム。ミノタウロスはもう少し下の階層なので、休憩も程々に先を進んだ。

 16階層で、ミノタウロスに遭遇。ルーキー達は連携攻撃であっという間に倒していた。

「もうバレちゃったから、素人振るのやめました。パトリシアさんも、遠慮しなくても大丈夫ですよ。」

視線で合図したその先には、もう1頭のミノタウロス、滅多に見ない特大で斧を構えていた。パトリシアは魔力を圧縮した魔力弾を飛ばしてミノタウロスの額を貫いた。

 帰り道、14階層でもう1頭倒してサクサクと10階層。パーティー狩りは生きているうちに目覚めた様で、放置した場所には居らず、襲われた痕跡も無かった。

「運のいい奴らね。」

「逃して良かったんですか?」

「たぶん、直ぐにまた会えるわ!」

順調に地上を目指し、素手でも倒せる魔物しか居ない5階層に到着。

「ソロソロ気を付けてね!」

新人を装った3人は、キリッと引き締まったが、気を付ける間もなく、ガラス瓶が飛んできた。ヒラリと避けたがが、瓶が割れると、紫の煙が立ち込めた。少量でも吸えば痺れ、多くなれば失神、更には死に至る毒ガスだ。パトリシアは倒れた3人に防毒面を着けて、小さな竜巻を作って毒ガスを拡散させた。

 痺れる身体を何とか動かして、パーティー狩りに迫った。7対1のパワープレイ状態に勝機を見たパーティー狩りは、一斉に斬り掛かったが、痺れは演技で、パトリシアの剣がキラリと光ったと思ったら7振の剣と14の腕が地べたに転がっていた。持ち主と腕、それぞれにヒールを掛けて、

「腐る前に、ちゃんとしたお医者様に診て貰えば繋がる筈よ。」

取り敢えず意識の有る男に説明すると、またそれそれから若さを吸い取った。

 毒を吸った三人を治療、

「ごめんなさい、さっき持ち物チェックして、あんなに危ないモノ持っていなかったかの。何処かに隠していたみたいね。」

「あっ、いえ、助けて頂いてありがとうございます。で、アイツ等どうします?」

「ロープで繋いで、歩けるだけヒールして地上の受付に提出しましょう。ロープお任せしてもいいかしら?」

パーティー狩りを繋いだロープを引いて地上に戻り、受付で引き渡した。助けられたパーティーのメンバーは、パトリシア達を待っていて丁寧にお礼言っていた。

 パーティー狩りを受付で調べてもらと、金貨30枚の懸賞金が掛かっていて、山分けにしようとしたら、新人(の振りをした)3人は辞退したが、折角なので7枚ずつ分けて残りの2枚は被害パーティーに渡した。

「助けて頂いた上に・・・」

「割算が苦手だから助けて下さいね。身体はヒール出来たけど、何かと物入りでしょ?」

パトリシアが微笑むと、瀕死だった二人は深々と頭を下げて、

「装備の新調に遣わせていだだきます!」

懸賞金の分配が決着して、ギルド迄馬車に揺られた。

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