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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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盗賊狩り 前編

 屋敷に帰り、魔王に謁見。と言うか父親に帰省の報告に行った。四天王のパートナーを紹介しようと思っていたら、

「お、お父様!」

父、アルタイルと一緒に待っていたのは、魔王デネブだった。

「漏れ、ダブリ無くマッチング出来たようだな。」

アルタイルは満足そうに、4組を眺め、デネブも恵比須顔だった。どうやら、コレを目論んでの四段校だったようだ。

 デニスの事については何も語らず、残念だが聞く雰囲気でもなかった。パトリシアはウェンディとペルセウス邸を訪れ、近況報告をした。奥様は、取り敢えず、人族の記憶と、女の子ではあるが人族の身体を取り戻した事を喜んで、

「折角ですから、ドレスを誂えましょう!」

 暫くペルセウス邸に逗留することになり、パトリシアは一人で屋敷に戻った。


 屋敷では8カ月になった子供達をあやして大騒ぎしていた。産んだ母親達は男性に戻っているので、パートナーの娘達が授乳させていた。魔法を使えば、出産とは関係なく母乳を与える事が出来るので、幸せそうに赤ちゃんを抱いていた。


 ギルドの仕事をしたりしながらのんびりと過ごす。ペルセウス邸を訪れ、着せかえ人形にされたウェンディを鑑賞。

『心配掛けているから、この位で喜んで貰えるなら協力するさ。』

奥様と一緒にファッションショーを楽しんで、ディナーをご馳走になり、ウェンディの部屋に宿泊。細かな彫刻が施された白い家具。天蓋付きのベッドは、いかにもお嬢様のお部屋と言う空気を醸し出していた。

『僕が元に戻ったら、この役引き継いで貰えるかな?たまにで良いから!』

元をたどれば、自分のせいでの大迷惑なので、パトリシアはこれで幾らかでも罪滅ぼしになればと、首を縦に振った。

 パトリシアは何時ものスタイルでベッドに入ると、ウェンディも同じスタイルで後に続いた。唇をすぼめるとキスのおねだりだと気付き応えたが、それ以上は何もなく、想定通りのパトリシアはきつくハグをして眠りについた。

 朝、すっかり甘えっ子になっているウェンディの後頭部を撫でる。犬の頃の様に肉塊に埋もれていたが、気付くとバッと離れ背中を向けていた。数日後の満月の日に迎えに来る約束をして、朝食を頂いて屋敷に戻った。


 ギルドに寄ると、旧アンタレス系の魔族が盗賊化し、あちこちで主に荷馬車が狙われているらしい。

「ちょっと見てもらえるかな?」

マスターに連れられ倉庫に行くと、如何にも高価な品に見える化粧箱を満載した荷台付きの馬車で座席もどんな人が乗っているか解ってしまう造りだった。

(おとり)捜査ですね?」

コレに若い娘が乗っていれば、盗賊のターゲットにならない訳は無いだろう。余りにてんこ盛りのエサで罠の香りプンプンで警戒されないか心配な位だった。

 パトリシアは、敢えて荷物を布で覆い、四段高に通う姿で、精度の低い男装で、事件の起きそうな、往来の寂しい街道を走る。四天王には相談していないが、誘わない方がヘソを曲げる筈なので、依頼を請けて屋敷に帰った。


 4人の反応はパトリシアの想定通りで、再度変身出来る日数を経過しているので、早速明日から遠征に出ることになった。変身した体格に合わせたメンズ服を調達しに商店街に走った。

 冬場の厚着ならともかく、薄着では変装もしれているので、程よい低レベルな男装が完成した。保存食や旅のお供のお菓子や飲み物を仕入れ、ギルドで馬車を引き取って準備を整えた。


 翌日、日の出と共に馬車を出した。男装バレバレのシェリーが手綱をとり、座席ではやはり男装だが、油断して帽子を外して長い髪を晒した状態。荷台には布で目隠しをして少し遅め速度で東に向かった。

 市街地を抜けると、早速1台の馬車が並走し、

「そんな服着てたって、女の子なのバレバレだよ!」

4人は面識は無いが、パトリシアは良く知っている冒険者達だった。ただのナンパだった。一応護衛もしてくれるつもりだろうが、囮としてはありがた迷惑以外の何物でもない。グレンダが窓から手を振って、笑顔に添えて指を鳴らした。ナンパ冒険者の馬車はピタリと停まり、手綱のおじさんが怒鳴っても馬はビクともしなかった。

 しばらく他の馬車には会わずに進むと、3台連なった馬車とすれ違った。如何にも怪しい様子だったので、更に速度を落としていると、ほどなくさっきの馬車が折り返して追って来た。1台が猛スピードで追い越すと眼の前に割り込んで急停車。隣りと後ろにピタリと貼り付く様に停まり、パトリシア達の馬車は身動き取れなくなった。

 赤い鎧の魔族がゾロゾロと降りて、馬車を囲んだ。一目瞭然、旧アンタレスの魔族だった。パトリシアが()を読み取ると、まぁ程々の地位にいた者らしい。馬車を、結界で護って相手の出方を観察する。敢えて中が見える様にして置くと、

「良く見ると売り飛ばすのが勿体ない上玉だぜ。護衛もいねぇから、味見でもしとくか!俺はコレにする、あとは預ける、売る事を考えて、見えるキズは付けるな!」

ボスらしい男がニヤけた顔でパトリシアを指差すと、その指が弾け飛んでしまった。結界で張っていた罠に触れてしまったようだ。

「ギルドマスターの言ってたヤツじゃないね。さっさと片付けよ!」

パトリシアは結界から出て、人差し指を失くしたボスの応急処置をしてからスッと意識を奪った。子分達は何が起きたのか理解出来ずに距離を詰めずに傍観していた。ボスが倒れたのに気付いてパトリシアに襲いかかろうとしたが、持っていた武器を構える間もなく、魔力弾を浴びバタバタ倒れて行った。1人が使い烏を飛ばし、グレンダが呼んだ鷹の魔物が追い掛けた。それとは別にジェニーも使い烏をギルドに飛ばし盗賊の処理を依頼した。

 手分けして倒れた魔族を回収、拘束し彼らの乗っていた馬車に押し込んだ。ボスを回復させてアジトの事等を吐かせたが、山中なのでアテにならず鷹をアテにする事にした。

 通行の妨げにならないよう盗賊の馬車を路肩に寄せ、鷹の飛んで行った方向に馬車を進めた。


 1時間程走ると、グレンダが飛ばした鷹が帰って来た。グルリと旋回すると馬車の前に黒い物を落とした。盗賊が飛ばした使い烏で、使いを果たす前に捕らえた筈。鷹の案内で、緊急連絡が届いていない盗賊のアジトを襲う事が出来る。

 更に1時間程走ると入口の目立たない山道があり、その奥の上空を鷹が旋回していた。細いけど馬車は通れる山道を登ると直ぐに見通しの良い広場に出た。掘っ立て小屋が何十軒も並んでいたり、馬車を止めるスペースや馬小屋の規模から推測すると、馬車15から20台、さっきのグループと同じ様な構成なら1台に4、5人なので、100人に近い盗賊がここをアジトにしているらしい。留守番は3人で、あっという間に制圧。飛ばした使い烏は鷹が回収。残りの盗賊が帰るのを待つ事にした。

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