ウォーレンの変身
のんびり馬車を走らせながら、旅の出来事をウォーレンに報告。
「ごめんなさい、私のせいで変身させられてしまって。」
ウォーレンは静かに首を振った。魔法を解く為に、魔王アルタイルにデニスを預けている事を説明すると、尻尾を嬉しそうに振っていた。
お喋りをしながら、無事に宿のある町に到着。宿を探したが、どこも満室だったので、郊外河川敷でテントを張れる所見付け、キャンプの支度をした。宿をアテにしていたので、非常用に用意していた物なのでかなり狭いが、焚き火でバーベキュー等、レジャー性を考慮すれば、狭いテントも悪くは無い。4、5人用を2張り、男女別にすると、ウォーレンは迷う事無く四天王達のテントを選んでいた。
ショーンの解説で、打ち上げ花火にトライ。コツを掴む迄に少し苦労していたが、ジョナサンは青、ジョージは緑、ケヴィンはオレンジ、パトリシアは白の花火をマスターした。キャンプ場では無いが、ダンジョンに遠征して来ている駆け出し冒険者達が、何組かテントを張っていたので、あちこちから歓声が湧き上がっていた。
焚き火を囲んで、お喋りを楽しんでいると、女子達が距離を詰め、いい雰囲気になって来た。
「星空を眺めてお散歩でもして来たら?」
1番積極的に見えるジュノーを焚き付けると、ケヴィンに視線を送り、
「せやな!」
2人が立ち上がると、他の3組も闇に消えて行った。残ったウォーレンは、気を使ったのだろうか、パトリシアにピッタリと寄り添っていた。
小一時間で皆んなが戻り、テントに入った。
「私、一人っ子なのよね、あの4人は殆ど兄さんみたいだから寂しいと思ったの事無かったけど、姉妹には憧れたわ!」
パトリシアだけが一人な事を気を使う4人だが、全く気にならないアピールで安心させた。
お気に入りのスイーツや、ファッションの話しで盛り上がり、理想のデートの話しになった。脳内を投影する事が出来たら、間違え無く四天王達が映し出されるであろうシナリオを語る4人は、キラキラと幸せそうで、魔王である父が、彼等の縁談を考えないうちに紹介しようと強く心に誓った。灯りを消してもガールズトークは寝落ちする迄続いていた。
翌朝、早起きした4人は、朝食を作りキャンプの続きを堪能していた。急いで出発しても次の町に早く着くし、先を欲張っても、その次なら夜中になる距離なので、ここでのんびりは、建設的な作戦だった。
ランチを食べてから馬車を出し、余裕で宿に到着。二人部屋5つにしようと思ったら、ウォーレンが首を横に振り、大き目の部屋2つで男女別々で泊まる事になった。
大浴場でリラックス、キャンプも楽しいが、布団でゆったり眠る方が格段に疲労回復出来た。昨夜の夜更しも手伝い、あっという間に熟睡していた。
翌日、朝湯を浴びていると、二段校くらいの女の子が隣に座り、身振り手振りでシャンプーの手伝いを頼んで、パトリシアが応えた。一緒に湯に浸かり、一緒に上がると、脱衣場で来た洋服は、子供になったときにケヴィンが選んだ物だった。
「もしかして?殿下ですか?」
女の子は首を縦に振った。
「妖精の粉、いつも一緒に浴びてたよね?」
ジョージは、嬉しそうに話した。
なりたい姿を思い浮かべると変身出来るので、犬の姿でも思い浮かべる事は出来る筈とトライ。
「なんで元の姿じゃ無かったんですか?」
殿下は筆談で、
『根本的に戻る迄は、君達と行動を共にすべきだと思った。寮に出入りするには女性でなければならない。女性としての所作が分からないので子供が良いと思い、あまり小さくても足手まといになりそうなので、今の年齢を選んだ。』
「お喋りは、出来ないのですか?」
「くーん。」
声は犬のままだった。
ランチは宿で頼んだお弁当。ウォーレンも同じ物を食べた。新しい姿では身体の使い方に慣れていない様で、箸使いに苦戦、可愛らしい容姿が幼く見えて抱きしめたくなる可愛さだった。食べ終わるまでにはコツを取り戻し、キレイに使える様になっていた。そう言えば、筆談の文字も、行を重ねる度に上手くなり、すっかり大人の文字になっていた。
往路最後の宿は、二人部屋が4つ、一人部屋が1つしか空いていなくて、パトリシアとウォーレンがシングルベッドで眠る事になった。
大浴場は無く部屋のシャワーだけ。シャワーの後、バスタオルだけのパトリシアにウォーレンは背中を向けた。
「今は女の子同士なんだから、気になさらないで下さいね!」
バスタオルを外したパトリシアは、背中から抱きついて、ベッドに引摺り込んだ、子供の筋力のウォーレンは為す術もなく絡め取られ、豊かな肉塊に顔面を埋めていた。
「犬のウォーレンとは、全裸でも一緒に寝てくれるって約束したんですよ。」
パトリシアが交渉の経緯を話すと、ウォーレンは、プッと吹き出してペンを取った。
『分かりました。ただ、中身は男性ですから、過度な接触はご遠慮ください、心臓が保ちませんから。』
パトリシアは頷いて、唇に吸い付いた。拒んでいないので、過度な接触には当たらないようだった。有利な条件を勝ち取ったパトリシアは腕枕のウォーレンを撫でながら眠りについた。
目が覚めると、隣に寝ていたウォーレンが上にいる事をに気付いた。片方の肉塊に吸い付いて、手の平にかなり余ったもう片方を揺らしていた。
目を覚ましたウォーレンは、状況を把握すると、慌てて飛び起き、物凄い勢いで謝罪したが、
「殿下の仰る過度な接触には該当しないんですよね?」
ウォーレンは、真っ赤になって頷くしかなかった。
『名前を考えていた、ウェンディはどうだろう?』
「ステキですね!」
『この姿に敬語は不自然だろう?』
パトリシアが頷くと、
『皆んなと同じ様に話して欲しい。あと他のみんなも。』
「そうね、そうするわ!ウェンディも女の子のお喋り気を付けてね!」
可愛らしいワンピのウェンディは、
『パットも少しかざりけのある服にすると良いのにね。』
パトリシアは苦笑いで食堂に誘っていた。




