魔犬退治
宿を探そうと思っていたら、
「是非、私の所でお休みください。」
助けた貴族に招かれ、屋敷に向う事になった。
到着したのは予想通りの立派なお屋敷でケフィウスという侯爵家だった。命の恩人と歓待しくれるが、侯爵は気絶しただけだったし、お嬢様は高値が付きそうな容姿なので殺される事は無かったはずなので、少し気が引けた。騎士達はかなり危険だったので、そう言われても仕方が無いのかも知れない。この地方でスタンダードなおもてなしの羊の焼き肉と、ビールを堪能。宴席は盛り上がっていたが、旅の疲れと、雑魚でも大量の盗賊を捕まえたり、怪我人をヒールしたりしていたので、体力的に限界に近付いたので、侯爵に告げ部屋に入った。
客間は5つ用意されていて、4つのペアとパトリシアの部屋だった、ショーンが不味いと変更を求めようとしたが、ピタリと寄り添っているベスタに制止されていた。戸惑う四天王を女性陣が手を引いて各部屋に連れて行った。
パトリシアがウォーレンを抱いて灯りを消すと、周りの部屋の雑音が聞こえなくなり、遮音結果が張られた事がわかった。ウォーレンが犬のままなので、ちょっと寂しく感じながら眠りに付いた。
翌朝、仲睦まじい4ペアとパトリシアは朝食をご馳走になって屋敷を後にした。
「自分達が狙われて、返り討ちにした次いでなんで、気になさらないで下さい!」
ギルドの報奨金は受け取っているし、しっかりご馳走になって、ゆったり泊めて貰っていたので、礼金を辞退すると、馬車にギリギリ積める程のお土産を持たせてくれた。受け取る方がスマートな雰囲気だったので、有り難く頂いて旅を再開した。
ジョナサンが手綱を取ると、セレスは隣に座り、残った馬車の中は会話が滞っていた。
「昨日はぎょうさん働いたから?よお眠れたんちゃうか?」
沈黙に耐えきれずケヴィンが口を開いた。
「そうね、皆んなが遮音結界を張ってくれてたから落ち着いて熟睡出来たわ!」
ジュノーと目が合うと、いきなり真っ赤にになっていた。
その後も馭者席にはペアで出るのがルールの様になり、朝よりは少し緩んだ微妙な雰囲気のまま次の町に着いた。パトリシアは昨夜のような部屋割りにしようと部屋を頼んだが、生憎殆どの部屋が埋まっていて、通常6人迄の部屋が1つだけ。
「俺等、その辺でテント張るから、女性陣でここ使うといいよ。」
ジョナサンはそう言って宿を出ようとしたら、
「雑魚寝でも、テントよりラクよ!皆んなで泊まりましょ!」
パトリシアが引き留めた。
食事は人数分あって、しっかり完食。大浴場でリラックスして部屋に入った。畳の部屋で、布団は押入れにあって勝手に敷くようだ。6組は敷けるスペースだったが、5組敷いてパトリシアは端っこを選んだ。
「遮音結界は忘れないでね。」
さっさと灯りを消して、ウォーレンを抱いて目を閉じた。
不自然に物音が聞こえなくなって、隣で防音結界が張られているのが解った。中々寝付けずにいると、床から小刻みな振動が伝わり、結界の中の状況が思い浮かんでしまい、更に眠気が遠退いてしまった。
いつの間にか眠っていて、心地よく目覚めたパトリシアは、朝風呂に浸かろうと布団を出たが、隣以降の布団が多分見られたくない状況だったので、皆んなが起きて体裁を繕ってから目覚めた事にしようと思い、再び枕と仲良くなった。
遮音結界が解けているのを気付かないのか、ジュノーの声がしてケヴィンの寝ぼけた声が答えた。パトリシアは慌てて、部屋全体に遮音結界を張ると、4組の布団から、結界から漏らせない声が響き渡った。
一段落すると、
「朝風呂もええで。」
ケヴィンの勧めでジュノーが浴衣を羽織ると、他の3人も続いて浴場に向かった。
「パット、ありがとな!寝ぼけて結界に気ぃ回らへんかった!」
「うん、気にしないで!私もお風呂行って来るね!」
残された男性陣は、窓を開けて寝不足の身体に酸素を取り込んだ。
「今夜もここの宿が取れたよ!ダブルの部屋5つだから安心して満月を過ごしてね!」
風呂上がりのパトリシアは、今夜の宿泊と、ギルドの依頼を確保していた。Eランクから請け負える薬草の採取でどう見積もっても、午後の早い時間で終える事が出来るだろう。
「パットは行かないの?」
不自然そうにしているショーンに、
「ハイキングだと思ってね、ベスタをよろしくね!」
4組を送り出し、パトリシア本人は別にDランクの魔物駆除を請負って、別行動にした。
パトリシアが請け負ったのは、はぐれ魔犬退治。通常は群れで山奥に生息している魔物だが、群れからはぐれて、ダンジョンに紛れ込んだ。ほどほどの値がつく鉱石の容易な採取場で、Fランクの稼ぎ処なので、Dランク相当の魔物がいてはギルドの運営にも支障が出てしまう。先日Dランクのパーティーが偶然に遭遇、仕留めきれず逃げられたらしい。手負いの魔物は狂暴化するので、被害は大きくなるが、駆除する側としては、探す手間が少ないので、チャンスでもある。
ダンジョンは20階層程らしく、戦闘の心得の無い一般人でもそれ程危険では無い。出てくる魔物をほぼほぼ無負荷の様に倒し14階層迄降りると、一気に魔物の気配が充満していた。狭い空間だが、下に降りるスロープと、降りてきた階段の他に、上への通路があった。そこはガイドマップには載っていない通路で、魔物の強い気配は、そこから降りて来ている様に感じた。
「はぐれって甘く見ちゃったかしら?」
複数の魔物を認識出来たので、無理をせず引き返そうと思ったら、背後の岩壁が崩れ、馬よりふた周りは大きい魔犬が数頭、来た道を塞いだ。下からと、もう一つの通路からも現れた。獲物を包囲するセオリーに忠実な狩り方だった。パトリシアは結界で隠れ、やり過ごす事を選んたが、見付ける事は出来ないが、隠れているのは認識しているので、魔物達はその場を去ることは無かった。
「まあ、勝てない相手じゃ無いけどね。」
パトリシアは、戦闘ぜざるを得ないと判断、姿が見える結界に切り替えて、相手の戦力を測る。怖いのは噛み付きだけで、体当たりもパワーはあるが、容易に避けられる。前脚のパンチは無視して良いレベル。ただ穴を掘るのが得意な様で、結界の周りの地面をボロボロしにていた。
結界の中から矢を射ったが、毛皮に弾かれてノーダメージ。至近距離で顔面を捉えて何とか倒せた。1頭ずつなら大丈夫だが、囲まれるのはかなり厳しいので、照明弾で目を眩ませているうちに、降りて来た階段を駆け登る。何とか1頭しか通れない幅なので1頭を倒し少し登る、屍を越えてきた次の1頭を倒す。地道に繰り返し、全部で11頭。駆除の確証になる尻尾を回収して、他に残っていない事を確認した。残りの屍は業者に依頼すれば、毛皮代と相殺して処理してくれる。地上に戻り、ギルドに使い烏を飛ばしてから、ウォーレンを抱いて馬に乗った。




