秘密の共有
夏休みになり、寮生の殆どが帰省した。パトリシア達は、ちょっと面倒な魔物退治の依頼が入っていて、3泊4日位で山に籠もる予定なのでその後ちょっとゆっくりしてから帰省する。デュアも誘ったが、アルタイルに家族も記憶も無いので、帰ると言う感覚は無いようだ。帰省でスカスカのシフトを埋めてガッツリ稼ぐ積もりらしい。
「パット、ちょっとええか?」
声はケリーのままでケヴィンの口調だった。
「あの子達に俺等の事、バラそかと思とんのや。」
4人で話し合った結果らしく、シェリーも続いて、満月の夜の状況を報告した。段々と魔力が上がって来ていて、そろそろハグだけでは収まらなくなりそうなので、その前に正体を証しておきたいとの事。パトリシアは小さな頃から魔力が強かったので、三段校に挙がって直ぐに満月の影響を受けるようになり、意識がないまま乱れてしまった事を永く引きずっていたので、彼女達にはそうさせない配慮だろう。
正体を告白しようと部屋に招いていた。魔王の娘とか、四天王とかは伏せて大まかな事を話すと、
「夢と現実の区別が出来なくなっていたと言うか、夢が現実になって欲しいと思ってたの!」
魔族の子の1人セレスが、目を輝かせた。他の3人もウットリとほぼ固定化しているパートナー的な相手を見つめていた。
寮で元の姿になる訳には行かないので、アルタイルへの帰省に誘うと、即答で同行が決まった。グレンダはそれを見越していて、10人乗りの馬車をレンタルしていた。
翌日、ダブダブのメンズ服を着た4人と、少し緊張した4人、セレス、パラス、ジュノー、ベスタ、それとパトリシアとウォーレン。9人と1匹で馬車に乗り込んだ。
「私達も内緒にしていた事があるんです。」
ジュノーが口を開くと、
「バラしても良いと、後援会長さんはは?」
ジェニーが確かめる様に尋ねた。
「「「「えっ?」」」」
事情を飲み込めず、馬車の空気を『?』で埋め尽くしてしまった。
「姉妹じゃないはずなのに揃って女神様の名前って不自然に思ってね、ちょっと気になっていたら職員室のお喋りで、4人ともデネブ殿の推薦で入学してるのが聞こえたんだ。」
「私達、異母姉妹なんです。公表していないので、内密にしてくださいね!」
しっかりと皆んなの目を確認してから、
「父は、魔王デネブです。」
「えっ?」
今度はジェニーが驚き、
「おじいさんじゃなくて、お父さん?」
4人はシンクロで頷いた。
「年上の甥や姪が何人かいますからね、それにその彼等も私達が伯母だって知らない方が多いと思いますよ。」
変身を解くと、人族とのハーフかクォーターかのような角が、魔王の娘らしい立派な角になった。道中目立たないよう、人族に化けられるか聞いて見ると、少し魔力が足りない様で、パトリシアが強化魔法を掛けると、4人は角を隠して髪と目を黒くした。
デネブは宴席で同じ学校に身内が居る事を匂わせていたが、まさか娘とは想像していなかった。まだ下に弟や妹がいて、まだ増えるかもと、当たり前の様に話していた。
お喋りしているうちに郊外に出たので、元の姿になった。四天王への熱視線は、馬車の温度を上げたかの様に感じたたパトリシアは、馭者席に避難した。人気は然程無いが、目立ち過ぎも良くないので、人族の姿になって旅を続ける。
遠目で、女性が手綱を取っているのが見えるので、ナンパか強奪の下見らしい馬車が、幅寄せしたり長い間並走したりと面倒くさい状況だったので、怪しい馬車を引き連れて旧道に入った。ナンパ目的の馬車は街道でリタイア、付いてきたのは見るからに真っ当な職業とは思えない馬車だった。馬車1台がやっとの道で停まると、3台の馬車から武器を持った男達がゾロゾロと降りてきた。
あきらかに盗賊って感じの奴らを、充分に引き付けてから結界で拘束。ジョージは付いて来た馬車の馬達を見に行って恵比須顔。他の3人は身動き取れない盗賊達を拘束、武器を回収して1台の馬車に放り込んで、取り敢えずボスっぽい男に自白魔法を掛けた。アジトを吐かせ、それ程遠回りじゃなかったのでそこに向かい、留守番の下っ端を捕まえて、檻に入れられていた子供達を解放し、武器やお宝を回収した。
アジトの規模からまだ仲間が居そうなので再度尋問し、ソロソロ他の連中が帰る筈なのが解って、結界で罠を張った。
馬車3台が戻り、計画通りにフリーズ。乗車券を、回収する位の手間でササッと拘束。戦利品を没収して次のグループを待った。程なくまた3台。全く同じ様に処理、ただ違ったのは戦利品が人族の女性で、一人はお嬢様風でロープと猿轡を外すとほぼ無傷。もう一人は同乗の護衛と思われるこちらはかなり闘って意識を失っていた。被害状況を聞くと、護衛の騎士達が、近くで倒れているそうなので、パトリシアはお嬢様を道案内に馬に乗せて現場に向かった。
アジトでは、賊達を拘束して馬車に押し込んで、更に結界で閉じ込める。換金できる物を回収しながら、
「どっちが盗賊だか解らないな!」
と、ジョナサンが苦笑。ちょうど使い烏が飛んで来た。
現場に到着したパトリシアは、倒れていた騎士3人をヒール。何とか命を取り留める迄は回復したが、起きるどころか、動かすのも厳しい状態だった。馬車の中には年配の人族の男性。
「お父様!」
駆け寄るお嬢様の様子や、立派な馬車を含めて判断すると、かなり上級の貴族だろう。気を失っているだけで、大きな怪我は無くヒールを掛け、騎士達を道路脇に退避させたり、壊れた馬車を路肩に寄せるのを手伝わせた。何とか通行止めにならない程度になった頃、盗賊の馬車を引き連れて、四天王達が登場した。交代でヒールし、壊れた馬車の車輪をスペアに替えながら回復を待った。
保存食で遅いランチをしていると、騎士達が目を覚ました。薬を飲ませ、何とか起き上がる迄に回復したので、次の町を目指した。
元々の馬車をショーン、盗賊達でパンパンの馬車2台をジョナサンとケヴィン、襲われた貴族の馬車をジョージが担当。その後に無人の馬車がズラリ。
「付いて来るように馬達に言い聞かせてあるから心配ないよ!」
ジョージはパラスと並んで馭者席で笑っていた。
町ではギルドに直行して、盗賊の引き渡しと、戦利品の換金をした。高価なお宝は無く、馬と馬車がそれなりの額であとはひと山幾らって感じ。盗賊の方は、ボスが報奨金付きのお尋ね者だったので金貨183枚と銀貨、銅貨の端数になった。
「コレ、Aランクですけど、5年以上ギルドの仕事されていませんから、D迄降格していますよ、今日の成果でCに再昇格ですね、一応昇格おめでとうございます。」
受付けの女性が、申し訳無さそうにライセンスプレートの説明してくれた。そう言えばアルデバランの4年間とデネブに来てからは、偽造のライセンスプレートで働いていたから仕方がない。別に困る事も無いので、そのままCランク昇格を祝ってもらった。




