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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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期末試験

 日曜日の夜、先生が寮にセリーナを連れて来た。

「バーバラさん、ちょっと良いかしら?」

何時も塾で使っている談話室で話し合う。席を外そうとすると、先生に引き止められた。

「セリーナさんは、あなたと一緒に居たいそうよ。」

バーバラは不機嫌を顕に、

「そりゃそうですわ、学費も生活費もままならないでしょう。」

先生は静かに説明を続けた。

「後援会長が、奨学金を手配してくれたの。学費と寮費、贅沢しなければ暮らせる生活費も支給されるの。あなたに支配されなくても卒業出来るし、四段校卒なら、色んな職業が選べるから、今だけじゃ無く、将来もあなたを必要しなくても良いの。でもね。」

先生はしっかりとバーバラを見つめて、

「あなたを放って置けないそうよ。これからの事は良く話し合って下さい。あと、お勉強はかなり遅れているから、授業だけじゃ足りません。ちゃんと時間を作ってあげて下さい。」

バーバラは神妙な面持ちで頷いた。先生は振り返ると、

「学校では私達が全力でサポートします。寮に帰ってからは、お願いしても良いかしら?」

パトリシアは断る気は更々無かったが、先生の『?』は全く疑問文として使われた気がしなかった。

「他の子達の伸び具合を見たら期待出来るし、奨学金の条件なのよ、後援会長の!」

先生がデネブを頼ったのが、だれの差し金なのか気付いているようで、しっかりとブーメランが帰ってきた。

 

 翌朝、食堂に現れたバーバラは、キレイに結った編み込みにレースのリボン。プリーツも復活していた。先々週に戻った様だが、食事を受け取る列には、セリーナと一緒に並んでいた。

「少し前の方を見て下さいね、下ばかり見てる方が、トレーがグラグラなんです!」

セリーナの指導で食器をばら撒かずにテーブルに到達していた。

 寮から校舎までの小路でのセリーナは、ポーター用の巨大リュックサックから開放され、他の生徒同様の通学鞄を提げていた。セリーナが世話を焼いているのは間違い無いが、バーバラも多少は自分の事は自分でする様になったらしい。

 無事に授業を終え、寮に帰って着替え、談話室で塾を開く。三段校のおさらいを終えた魔族の4人は、シェリーが担当し、あとの3人で獣人達。パトリシアはセリーナとシャルロットに集中した。

 小さな頃から働いているので、大人の思考で、お喋りもしっかりしているが、読み書きは、生活に最低限必要な程度、算数は買い物に必要な事しか解らないようだった。先生は初段校からの教科書を用意してくれていたので、初歩から地道に教える事にした。

 知能が低い訳ではなく、覚える機会が無かっただけなので、乾いたタオルが水を吸う様に知識を吸い込んだ。一週間で初段校をクリア。基礎をしつこく叩き込んだ。先生はとても褒めたが、

「一週間あったら、この位出来たんじゃありませんか?」

パトリシアは隔離された一週間の事が気になった。

「奴隷みたいな立場が、当たり前って信じ込んでいたから、洗脳解除って感じね。あと、お嬢様に変わってもらうキッカケと思ってね!今の所、想像以上ね。」

 土日はお休み。ギルドから帰って来ると、談話室では、何時もの塾生が集まって魔族の4人が、セリーナとシャルロットの勉強を見ていた。

「二段校位だったら私達でも教えられるわ!生徒が増えると先生を独占出来ませんからね。」

得意な科目を分担して、セリーナとシャルロットの二段校をクリアさせていた。

 少しずつランクアップして、三段校のおさらいをいていると、学校の授業が解る様になって来たそうだ。余裕のある子は、授業の予習まで手が出るまで進んでいた。何とか期末までには三段校クリアしたいと、パトリシアは細かく計画を立てていた。


 ギルドの仕事は当然のように順調だが、デュアの成長が思わしくなかった。結界なんかは割と覚えが良く、獣人の身体能力の高さは元々の資質なので、ポーター向きな能力だった。ポーター自体はキチンと認められる職種ではあるが、セリーナ達のポーターリュックを差別の象徴の様に扱った手前、何となくポーターにしてしまう事は気が引けた。

「そうね、私もダンジョンより、宿の掃除とかベッドメイクとかの方が合っている気がするわ!他の獣人の子も働いているから、そこに行こうかしら。」

本人も、ダンジョン向きではない自覚が有ったようで、早速バイトを始める事にした。


 ギルドの依頼は元の5人で熟す事になり、心配無く難易度を上げて行った。デュアも先に働いていた子達が真面目に働いていたお陰で即採用。土日の半分位と平日に時々働いている。授業と塾とバイトで期末テストを迎えた。

 塾ではまだ三段校の範囲なので、大躍進は期待していなかったが、全員一つも赤点は無かった。ギリギリセーフだった人は少し余裕があったり、思ったよりは上積みが有った。

「パトリシアさん!」

先生が呼び止め、

「皆様、素晴らしい成果でしたね!こんなに早く成果が出るとは思いませんでした。」

「ええ、皆んな頑張っていましたからね!夏休み、1学期のおさらいして、2学期からは他の子に付いて行ける位になれると良いと思ってるんです。」

「そこ迄頼って良いのかしら?」

パトリシアが笑顔で頷くと、

「じゃあ、復習が効率良く出来そうな宿題にするわね!他の先生にも伝えて置くわ!」

パトリシアより更に笑顔の先生は、スキップを我慢しながら職員室に帰って行った。

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