入学
多少、割りの良い依頼を受けられる様になって、春休みはずっとギルドに通っていた。ランク以上の実力が有るのが知れ渡り、面倒なナンパとかが激減、遠出から帰った人位なので、それ程苦にならなくなっていた。偶にデネブに食事に誘われ、特別室でちょっと居心地悪くご馳走になったりしていた。
いよいよ入学式。寮は学校の敷地内なので、のんびり起きてゆったり朝食。まだ固い蕾の桜並木を散歩しながら、校舎に登校した。
教室に入って顔ぶれを確かめる。30人程で、人族7、魔族2、獣人1程度の割合で学校全体もその位らしい、因みに自分達は人族でカウント。魔族は魔族同士、人族は人族で何となくグループになっていて、デュアの他、2人いる獣人は、それぞれ別の人族のグループに属している様に見えた。先生が登場して、体育館に移動した。
先生は殆どが人族で、魔法の授業を受け持つ先生が二人だけ魔族、獣人の先生は居ないようだ。校長の挨拶に続いて登場したのは後援会会長、魔王デネブが登場していた。PTA会長、生徒会長の挨拶が済んで、
『続いては、新入生代表の挨拶です。1年A組、パトリシアさん!』
抜き打ちで呼ばれたパトリシアが登壇すると、来賓席のデネブが笑いを堪えるのが見えた。パトリシアはサラッと差し障りの無いことを喋って、貴賓席に殺気を放ってから降壇した。
来賓来客が帰り、上級生達も教室に戻った。先生達の紹介などオリエンテーション的な会が昼前迄続いた。教室に戻って、教科書を受け取ると本日のミッションクリア。結構な量だが、事前に情報があったし、寮はすぐそばなので、大きめのバッグに詰め込んで、席を立った。
「あれっ?君、荷物、それだけ?大丈夫なの?」
大きなリュックサックを担いだ獣人が2人、デュアに声を掛けていた。
「セリーナ!無駄口叩いて無いでかえりますよ!」
小振りなポシェットだけの人族に連れられ、デュアの返事を待つことも無く下校して行った。デュアが困った様にしているとジェニーは、
「奴隷制度の名残りで、ああやって、学校でも御主人様のお世話をするんだ。旧アンタレスでは、当たり前の光景だったらしいよ。まさか、ここで見るとは思わなかったけどね。」
デュアの不自然な表情は崩れなかった。
あとで調べた所、他のクラスの獣人は単独で入学しているが、デュアもパトリシアの使用人だと思ってのクラス割だった様だ。
「後援会長にアツ掛けて、クラス替えの時、別々にしましょうか!」
シェリーが鼻息を荒くした。
翌日から普通に授業が始まり、デュアの学力も平均程度はあるようなので、呑気に通って週末を迎えた。早朝からの依頼を片付け結構な金貨が積まれた。
「ディナーはあそこにしようか?」
デネブにご馳走になったレストランのパエリアが絶品だったので、ちょっと贅沢することにした。
レストランの入口そばにクラスの獣人、セリーナがポツンと立っていた。
「どうしたの?何時もの人族は?」
「お嬢様は、お食事中です。」
「あなたは?おなか空いてないの?」
「あっ、ええと・・・。」
腹は口ほどにモノを言う。『グー!』っと返事をした。
「じゃあ一緒に頂きましょう!」
強制的に店に引摺り込むと、お店の人がパトリシア達の顔を覚えていて、特別室に通してくれた。勿論、セリーナの分もオーダーして、
「あの子が帰る時、こちらに寄る様に言って貰えますか?」
セリーナがお嬢様と呼ぶ人族を指して店員に頼んだ。
お目当てのパエリアの他?オススメと、ワインを頼んで、セリーナは飲んだ事がないと言うので、果汁を炭酸で割った飲み物を試して貰った。
「あなた、何時もこうやってお嬢様と一緒にお食事してるんですか?」
デュアが回答に戸惑うとグレンダは、
「別に使用人でも何でもない仲間だから、一緒が普通よ!あなた達の方が不自然、特にこの地域は、獣人差別は薄いんだからね!」
セリーナはソワソワしつつも、しっかり料理を胃に収めていた。デザートを食べている時、ウエイターがお嬢様を連れて来た。
「セリーナさんまだお食事中ですから、お待ち頂くか、お先にお帰り下さい。同じ寮ですから、お気になさらず。」
自分が一般席で、セリーナが特別室なのが気に入らなかったらしく、眉間の皺だけで言いたい事が全て解った。
「あっ、私、もう行きます!ご馳走様でした!」
セリーナは残りのケーキを頬張ってお嬢様に付いていった。
「ホントにこっちが普通で良いの?」
デュアが涙目で聞くと、
「当たり前でしょ!受験の時、歴史も勉強したよね?」
グレンダがちょっと厳しい口調で答えると、デュアはニッコリと残りのケーキを突付いた。
平日は学校、土日はギルドのルティーンはアルデバランの五段校時代とほぼ変わらないが、寮に居ると、食事の心配も無いし、風呂やトイレなど共用スペースの掃除は当番なので良く言えば時間に余裕があった。平たく言うと暇だったので、デュアの勉強を見ていた。すると、あまり学力に自信のない獣人の子が集まって来て、ちょっとした塾のようになっていた。残念ながらセリーナは参加していなかった。
デュアもそうだが、獣人たちは三段校でちゃんと勉強出来て居なかった者が殆どなので、二段校位からの復習をメインに解説すると、面白いくらいに覚えて行った。まだまだ学校の授業には追い付いていないが、2週間で二段校をクリア出来たので、1学期中には、三段校も何とか出来そうに思えて来た。
「三段校の復習なら私達も参加したいんですけど、良いかしら?」
魔族の子が4人参加した。学校に通ってはいたが、遊んでばかりで身に付いていないらしい。それでも、獣人達よりは学習の痕跡が見えたので、シェリーに応援を求めると、
「レベルが解らないから、取り敢えずマンツーマンでやってみよう!」
皆んなで手分けすると、それぞれ苦手な所が違ったので、そのままマンツーマンで、三段校を突破することにした。
夕食が終わると、魔族の子達が浮かない顔をしていた。今夜は満月だ。自宅に帰れる子は、学校を休んだり、早退して 帰省。塾生になった4人だけが寮に残っていた。
「えっ?魔族の事情詳しいんだね?うん、始めてだけど、お互いにヘルプしてみようと思うの。」
「それなら私達の部屋に泊まりに来て!」
デュアは満月の夜の事情を理解しているので、近くの宿に泊まって貰っている。
部屋でお喋りをしている、パトリシアの髪が銀色に輝いた。隠していた角が完全に現れると、泊まりに来ていた魔族の子達は肩で息をして、歯を食いしばり唸っていた。犬の姿から、人族に変わるウォーレンに飛び掛かりそうに迫ったが、元の姿になった四天王に抱き止められ、彼等の腕の中で、月が沈むまで幸せに浸っていた。
こんにちは、グレープヒヤシンスです!
ゴールデンウィークは如何お過ごしでしたか?
連休の連投も今日までです。次回から毎週水曜に戻ります。




