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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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卒業

 何事もなくアルデバランに到着。途中変身を済ませていたので、スムーズに帰宅した。平日は学校、土日はギルド、長めの休みは、旧アンタレス系の視察。大体は平穏な日々だったが、アルデバラン復活を目論むチンピラを退治したり、アルデバランを宗教のように信者(?)を集めて悪徳商法に走る輩を未然に防いだりしながら時を重ねた。


 季節は巡り、暑さと寒さを4回体験し、仔犬だったウォーレンは、成犬になっていた。あまり大きくなる犬種ではないようで、パトリックの膝位の体高で成長は止まったが、丸いフォルムがスッキリシャープになり、無駄にじゃれたり吠えたりしない、大人の雰囲気を醸し出している。

 人族になっている5人は、妖精の魔法の性質なのか、全く変化しなかった。2年程過ぎた頃に指摘されて、少し成長した姿に変身するようにしていた。


 五段校を無事卒業して、アルタイルで三段高を卒業したアルデバランの息子が入れ替わりで帰ってくる。屋敷はアルタイルからの出張所的に使っていて、そのまま明け渡す。昨年、リゲルではスムーズに孫への政権移行が成功していた。1年間、引継ぎしていたシドニーがアルデバランに来てお目付け役を務める。


 パトリックはパトリシアに戻る。4人も四天王に戻り、新生アルデバランを祝うと、街中の魔族達が、若い魔王に忠誠を誓った。

「どうしたの?また変身して。」

襲名披露の会場を出た途端、四天王達が数時間前と同じ女性の姿に変わってしまった。グレンダは不思議そうに、

「いや、勝手にね。変身って言うよりね、自分の魔法で人族に化けていた時に、疲れたり酔ったりして、気を抜いたら戻っちゃう事あるでしょ?何となくあんな感じなの。」

 一旦変身したら1ヶ月は次の変身は出来ない筈なので、不思議に思いつつ、アパートに帰った。

 

「女の子同士でいるのも新鮮ね!」

パトリシア達は、引越しの荷造りをしていた。以前、熊の魔物を退治した妖精の森に寄って、変身の事を聞いて見る事にして 馬車に揺られた。

 呑気にお喋りしながら、昼食時には食堂のある街に着いた。入学の時は、夜を日に継いで殆どノンストップで3日、普通に走れば7日掛かった道程が、普通に明るいうちだけ走って3日で着くようになった。大きな迂回を余儀なくされていた川に橋が架かったり、険しい山道をスルーするトンネルが通ったりした大きな短縮と、街道全体の整備が進んで馬車の速度が上がった事で実現している。しかも、宿に泊まって、朝出発すると昼には食堂があって、夕方には次の宿に泊まれる。往来が途切れないので、盗賊もあまり出ない。ただ普通は女子だけでの旅なんてあり得ないので、一応目立たない様に、男性的な洋服でカムフラージュしている。

 

 森に踏み入って、以前妖精達が現れた辺りで、色々なご馳走とワインを広げて、マキシミリアンを呼んだ。

 いつの間にか、現れてワインを飲んで消える事はしばしばあるが、呼んで現れる事は滅多に無いので、ダメ元と思っていたが、ご馳走には妖精達が群がり、マキシミリアンはワイングラスを抱えていた。

「先々月位から、満月の夜もこのままだったんじゃないか?」

確かにそうだった。1月は旅先で全員元に戻って楽しんだが、2月も3月も、パトリシアとウォーレンだけしか戻っていなかった。

「出産迄は男には変身出来ない。自分の魔力で見掛けの姿だけ変わる位は出来るが、胎の子に障りがあるからオススメ出来んな。」

想定外の状況に戸惑いつつ、パトリシアと4人の妊婦はアルタイルに向かった。 


 アンタレスの状況を確かめながら馬車に揺られた。直系を覗いて、完全にアルタイルに落ちていて、アンタレスの領域への物資には規制が掛かっている。騒ぎが始まった当初、人族の流出が相次いで、アンタレス内の産業はかなり衰退しているので、物資を絶たれるのは死活問題だろう。

「父さんが4、5年って言ってたよね?兵糧攻めでアンタレスが落ちるの。」

パトリシアの疑問にグレンダは、

「そうね、締め過ぎると暴発するって仰ってたわ。ゆっくり干して人族を逃してから始末するそうよ。」

お喋りを楽しみながら、快適な旅でアルタイルに到着した。


「武闘派の爺さん、そろそろだろう。」 

実家に帰ると、魔王はアンタレスの状況を推測していた。とうに引退しても可笑しく無いと言うか、生きているのが驚きな程の高齢で息子達は既に亡くなったいて、孫が男2人女1人いて、存亡の危機にも関わらず、兄弟で跡目争いをしているそうだ。当代アンタレスが亡くなったら、争いを続ける兄2人にはアンタレスを任せられないと、幹部達も解っていて、末の妹にアルタイルの幹部を婿入りさせる話が進んでいるそうだ。

「アンタレスを任せるなんて大役、誰にするの?四天王はしばらく女の子よ!」

「ああ、候補に考えなかった訳だも無いが、シドニーが適任だろう。」

「彼、既婚者でしょ?」

「ああ、名目上はアンタレスのお嬢が本妻って事にはなるが、お嬢は重い病を患っていてな、治療の為にアルタイルに住まわせる。爺さんより長く生きてくれないと筋書きがパーだからな。彼女の健康を祈っておいておくれ。」


 パトリシアは、ギルドに復職、アパートを借りてウォーレンと暮らしている。事務は人手が足りているので、ダンジョンガイドと護衛を主に担当していた。ペルセウス家に報告に行き、調査が進んでいない事を謝るつもりだったが、

「お父様が東の方を調べてくれていたのですね。」

東部の調査資料をまとめた物が魔王から届いていた。アンタレスを収めてからデニスを捕まえることで夫人も納得していたので、パトリシアも安心して待つ事にできた。


 お腹が少し目立って来た4人は、屋敷でのんびりしながら、デニスの情報の精査や、アンタレスの情報を纏めたりしていた。

 臨月の頃、シドニーが帰って来た。

「アルデバランはお嬢達の地均しのお陰さんで、なんの面倒もなかったど。」

挨拶に来ていたパトリシアは、

「姐さんには辛い思いをさせてしまいますね。私は反対なんです、父に掛け合って見ようと思ってるんですが・・・。」

「やんだぁ!姐さんだなんて、もってぇねえ。あだすは、この人と居られれば、妾でもなんでもいんでぇよ!」

「お嬢が気にしてくれただけで、嬉しいだぁ。オラも1番平和に解決すんのがいいからな、なんも気にしてねえど。それにオラもコイツも東の出てなぁ、故郷に近いんでな、今はアンタレスだども、ちっこい中立派だったから、親父さんに拾われて無かったら、今頃アンタレスのチンピラだろうなぁ。」

「あだすの集落じゃ三段校にも行かずに売られてぐおなごがいっぺえでな、売られる先が娼館じゃねぇ事ばっかし祈ってたっけなぁ。」

本人達が納得なら、引っ掛かりつつもパトリシアは反対の鉾を納めることにした。

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