帰省
アルデバラン崩壊で魔族が流動的なので、『流れ者』が山ほどいて、いちいち全部調べたら大変な数だが、可能性の有りそうな物は皆無だった。それでも少しはアリ?って感じなものだけはチェックしながら、アルデバランの街へ向かった。結局、新たな情報は無く、1番贅沢した筈の湖の宿が、無料になったので、情報収集の為にギルドで働いた分、黒字で帰って来た。
2ヶ月近くある夏休みも折り返しを過ぎていた。特に予定はしていなかったが、旅費が浮いた分でアルタイルに里帰りする事になった。往復に1週間ずつ掛けて、4日の滞在なので、態々帰るのも面倒だとパトリックは渋ったが、4対1の数の原理に押し切られていた。
ギルドに行ってマスターに、
「帰省で、しばらく出掛けますから、次は9月です。よろしくお願いします。」
「ああ、お気を付けて!その前に、ライセンスプレートの更新していくと良いよ。」
湖で退治したワニの魔物の成果がカウントされて、Bランクに昇格していた。目立たない為に折角Dランクにしたライセンスだったが、半年足らずで2回も昇格して、逆に目立ってしまった。マスターにも素性を明かしていないが、何か事情があるとは察しているようで、小声でサクサクと済ませてくれた。
「アルタイルに行くなら、これ頼まれてくれないか?」
ギルドマスターは、地図を広げると通り道から殆ど離れていない森を指して、
「山菜やキノコ、貴重な薬草が採れる森なんだが、先月位から、迷いの森になっちまったんだ。森に入ると結界みたいにグルグル彷徨って、日の入りの頃に入った場所にもどってしまってな、森の恵みがサッパリ手に入らないんだ。特に薬草で日保ちが効かないヤツはもうカラッポだ。」
迷いの森と言えば、カストルとポルックスの間に広がった大きな森で、そこを攻略した時に貰っていた腕輪があるので、森に入るには問題ないが、原因究明やそれを対処する方法は思い付かない。
「取り敢えず寄って見ますね。迷路結界を張ってる術者が解れば良いですけど・・・。」
パトリックは、取り敢えず引き受けて、明日の朝出発予定の所を繰り上げ、ランチの後、問題の森に向かった。
しっかり腕輪を装着して森に踏み込んだ。ギルドからアシスタントで冒険者が一人ついて来ているが、腕輪が足りないと言う名目で、馬車の番を頼んだ。
腕輪のチカラを信じてどんどん進んだが、どうやら迷路結界に嵌まった様だ。
「夕方には戻れるんだから、焦っても仕方が無いわね。お茶にしましょう!」
ジェニーはシートを広げてバスケットからポットやお菓子を出していた。
「そんな腕輪、屁の突っ張りにもならんぞ。」
いつの間にか現れたマキシミリアンが、ビスケットを催促していた。
「ついておいで!」
妖精は、ビスケットを飲み込む様に数枚平らげると、5人に命令した。
森を奥に進むと雰囲気変わり、
「元は、コッチが妖精の森なんだが、魔物が来てしまってな、引っ越したんだが、人族が頻繁に来るんで、落着かん。コッチに戻れる様にアイツ等を片付けてくれ!」
妖精に命令されるのもどうかと思うが、妖精が元の森に帰ると、ギルドの依頼が解決出来そうなので素直に従った。
妖精の森の侵略者は、特大の熊の魔物だった。普通なら結界で排除して、森の中は安泰の筈が、魔物の力が強過ぎて侵入を許してしまったらしい。
魔熊は妖精のチカラでどんどん生える森の恵みを食べ、何時までも居座る様子だった。他の妖精も手伝ってくれて、四方を囲むように案内して貰った。こっそりスタンバイして、4人掛かりの結界で拘束、雄叫びを上げた瞬間にパトリックは開いた口から魔力弾打ち込み、脳天を貫いた。
「お見事!コイツを倒せそうな冒険者が来ないから、手前の森で追い返していたんだ。よし、褒美だ!」
沢山の妖精が現れ、5人の頭上を旋回、七色に輝く妖精の粉を撒き散らしてスッと消えて行った。
「妖精の粉で子熊にしてから追い出せば良かったでしょ?」
ジェニーの作戦を聞いたマキシミリアンは、一瞬ハッとした表情になったが直ぐに真顔に戻り、
「妖精が絶滅しない限り、消えないチカラを授けた。有り難く思いなさい。」
何時は直ぐに消えてしまうマキシミリアンだが、珍しく妖精の魔法について説明してくれた。魔族、人族、獣人の男女、年齢を問わず、自由に変身できて、さっき粉を掛けてくれた15人の妖精が同時に消滅しない限り、その能力は維持され、カラダが傷んで、新しい繭に移る時期はマチマチなので、誰かが消滅しても、羽化して復活するので、マキシミリアンの言うように、妖精が絶滅しない限り継続出来るらしい。変身は高度で魔族や人族の能力では見破る事も戻すことも難しい。完璧な変身だが、一旦変身すると1ヶ月は元に戻ったり次の変身は出来ないそうだ。
来た道を戻ると途中で陽が落ち、魔力で照らしながら馬車まで辿り着いた。夕方に戻らなかっのは迷路結界が解けた証拠だろう。
アシスタントさんに経緯を説明し、魔熊は、妖精の森なので持ち出す事も出来なかったから、駆除の報奨金も要らないし、無理に森に入らない方がいいので回収業者の手配も要らないと告げて、テントの支度を始めた。アシスタントさんは、そのまま街に帰ってギルドに報告してくれる事になっていた。
キノコのスープと保存食でワインを飲んでいた。
「ワインの香りで、また出て来そうね!」
ケリーが笑うと、
「気易く呼ばれても迷惑だ!」
呼んだつもりは無かったけど、またまたマキシミリアンが登場した。
ケリーは、ずっと前から会話が続いていたかのように、
「マキシミリアンって男の子の名前よね?あなた、女の子でしょ?」
妖精は幼児体型を縮小した容姿出て何も身に着けていない。股間に突起物が見当たらないので女の子だと思っていた。
「そんな些細な事を気にしてどうする?妖精に性別など無い。」
マグカップのワインを飲み干すと、何時ものように頭上を旋回して、
「旨かったぞ、特別に次の変身は1週間でまた出来るようにしておいたぞ、・・・。」
しばらくお喋りして寝袋に包まった。
いよいよゴールデンウィークですね!
明日、4月29日から、5月5日迄、毎日更新します!
よろしければ、お付き合い下さい。




