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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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アルデバラン没す

 パトリックは平穏な学生生活を過ごしていた。平日は学校、土日はギルドで、これと言った情報は無く、新たな展開を模索していた。講義は結構面白く、潜入と言うより、普通に留学しているようだった。

 街の様子が、段々解ってくると、アンタレスに搾り取られる人族は勿論だが、アンタレスの懐事情もかなり厳しいらしい。人族の景気がが良い時には、魔族も潤うが、飢饉の時にでも容赦無く吸い尽くすアンタレスにやり方に、人族は流出、魔族も中立地帯に出稼ぎしたりしていたが、急激なアルタイル化でそのまま居着いて結果的に流出してしまっているようだ。幹部達もアンタレス本国に逃げる様に移り住んでいるそうだ。


「息の根を止める事も出来そうだけども、アルタイルの手で潰すと後が面倒だな。」

パトリックは、このまま衰退するよりも、アンタレスを排除して人族を解放する事にデメリットはないし、現状その気になれば、5人で制圧だって出来そうだが、ほかの場所での報復が目に見えているので、行動に移す事は無かった。

「人族が追い出すカタチが良いわね!」

ニッコリ笑うジェニー(ジョナサン)は、何処で調べたのか、アルデバランの収入源やアンタレスへの上納が滞っている事、現在の戦力が細かく書かれたノートを広げていた。戦力の所が650人と書かれた隣に、70人と書かれていてそちらに二重丸が付いていた。

「これって?」

「何か起こった時にでも、残る戦力よ。」

傘下とされている中小のファミリーはアルデバランに着いているメリットが無く、いつ寝返っても不思議じゃない状況で、アルデバラン内部でも、他に行く所が無いからいるっていう連中が殆どとの事。

「何か起こしましょうね!」

グレンダ(ジョージ)は、ノートの地図の端っこに赤で丸をつけて、

「この山を越えたらカペラよ、あの時逃してあげたのがプレアデスね!」

赤丸を突いた。元々小さなファミリーの寄せ集めだが、人族の街が賑わっていた為、アルデバランに次ぐ勢いになった。

「彼等がアンタレスを離脱したら・・・、」

今いるアルデバランの街の手前まで大きく赤で囲んで、

「アルタイル傘下のプレアデスの勢力圏ね!義兄さん(スピカ)が和平交渉してるはずよ。」

「じゃあアルデバランの街だけが、アンタレス系か、それでも、街の上がりは結構なものだよね?」

ノートの収入項目を確かめると、

「人族だって、今のアルデバランにお金払うメリット無いわよね?学校に講義に来る偉いオジサン達にそう言ってね、公の仕事からアルデバランにお金が流れれないようになるわ、来週から。」

ケリー(ケヴィン)は、人族のお偉いさんたちを丸め込んだようだ。

「じゃあ、カジノだけか。兵糧攻め、どれくらい掛かるのかな?」

「あっ、それ!元々が不法賭博なのよ。来週、騎士隊のガサ入りが入るわ。予定としては、そのまま廃業のはずよ。」

シェリー(ショーン)は笑顔で、ノートに赤バツを幾つも付けた。


 月曜日、街は大騒ぎだった。プレアデスの使者と人族の要人が集結して魔王の屋敷を訪れた。ジェニーのノートにあった事が現実のモノになり、突然の絶縁宣言動揺したアルデバランは、カジノの崩壊を聞いて、この地を去る事を決めたらしい。アルデバラン血縁者と直系幹部とその家族、30人程度がアンタレスに退去する。充分な路銀とアルタイルの四天王の署名入りでアンタレス迄の道中の安全を確保する書面が渡されたそうだ。


 当日中に到着したプレアデスの魔王は、スピカの幹部を伴っていた。ジョージの幼馴染みだが、今のグレンダに会っても解らないだろうし、潜入にならくなるので、特にアクションは、起こさなかった。

 街はみるみる活気が満ち、先の旅でパトリシア一行が通過した中立地帯はすっかりアルタイルに染まり、大陸全体でも西側6割程がアルタイル傘下という事になった。東の方は2割ほどがアンタレスの直系、残りの2割はアルタイル、アンタレス、中立が混在。勢力分布等には全く興味が無かったパトリックだが、アルタイルになって活気付く街を目の当たりにし、アンタレス撲滅も悪くないと考える様になっていた。

 元来、東部に住んでいた人族は狩猟民族で、チカラの強い魔族とは、上下関係にあった。一方、西部は農耕民族、中部は狩猟、農耕、遊牧民族が混在し、人族が生産、魔族は害獣や他民族から人族を護る共存関係だった。元々何となくそう思ってはいたが、学校の講義でもそう解説していた。


 平日は講義、土日はギルドの生活を繰り返し、すっかり夏になっていた。薄着になって来ると、4人は更に目立っていたが、まぁ想定内。そこまで遠慮なく凝視出来るのかと呆れる位で、実害には至っていない。ダンジョンでの武勇伝を伝え聞いたり、ナンパとか、酔っぱらいを呆気なく躱す姿が浸透していたせいと思われる。騒ぎになったのは、水着を買いに行った時に、店を覗こうとした野次馬が、壁をブチ抜いてしまった事くらいかな?

 

 平和に過ごしていると言う事は、入学以降、変身はしていないと言う事だった。妖精は頻繁にワインを飲みに来るようになったが、毎回帰りがけに妖精の粉を振り撒いて行くが、変化は全く無かった。取り敢えずは学校に通え無いような変身をするまでは、学生でいることにした。大きく体制が変わって流動的な、旧アンタレス、旧中立派の中にデニスが紛れていないかの監視は怠っていない。ただ数が多過ぎて精査する事も出来ていなかった。情報が多く寄せられた地域に、夏休みを利用して調査の旅を計画している。


 そんな中、悲しい知らせが届いた。アンタレスに渡ったアルデバランが処刑された。西の足掛かりを失った事は大きな痛手なのは勿論だが、道中のいざこざ回避の為に持たせた、四天王の署名入りのお手紙が、魔王アンタレスの逆鱗に触れたようだ。アルタイルの手先として首を落された。諌めに入ったリゲルは南部の大農地を失い、おめおめと帰って来ていた事を蒸し返され、一緒に処刑されてしまった。敵対する組織の幹部の訃報なので、朗報とも取れるが、パトリックはそうは思えなかった。


 恐怖政策でアンタレスの直系には充分な引き締め効果があったようだが、末端のファミリーは震え上がり、アンタレスとの距離を取りたがっていたり、中立派は、すっかりアルタイルに靡いているらしい。

「一気に混在地区を落とすチャンスね。」

シェリーは現場に飛んで行きたい様子だったが、

「急ぎ過ぎはいい事無いわ。」

ジェニーは急に締め付けると、アンタレスの反発がキツイと成り行き任せを主張した。元々出向く予定ではないのが、それぞれ、言いそうな事を予想通りに語ったのでパトリックは妙に面白く感じ笑いを堪えていた。

 結局、混在地区の全ての中立派とアンタレスの末端一部がアルタイルの傘下となり、更にはアンタレス支配地から人族が流出してお膝元まで影響が出ているらしい。

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