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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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妖精の魔法

 認定試験を受けに会場を訪れる。身分証明書が必要なので、変身した状態で冒険者登録をしておいた。パトリック(パトリシア)がギルドマスターに内密に依頼、実質的には偽造のライセンスプレートを発行して貰っていた。5人ともDランクの冒険者と言う事になっている。

 結果は翌日発表され、5人ともパスしていた。五段校の願書を準備して、アルデバランに向かった。助っ人が2人、日中はパトリックが手綱を取り、夜間は助っ人が交代で馬車を走らせる。丸一日で馬を換えて走り続ける。通常1週間程の行程を3日で隣町迄迫った。そこからは乗り合いの馬車を使ってアルデバランに乗り込んだ。アンタレス感の強い街並みは、5人にとって新鮮だった。乗り合い馬車の終点が、街の中心部で、受験する五段校の近くだったので、付近で宿をとった。

 学校は人族が営んでいるので、アルタイルからの受験生も特に差別は無く、すんなり受験が出来た。結果も良好で揃って五段校生になることが出来た。一応、4年通うつもりの姿勢を示した方が良さそうなので、通学徒歩圏のアパートを借りて住む事にした。

 学校が始まる迄、春休み期間は、学生としては、何もすることが無い(何をして良いのか解らない)ので、ギルドで依頼を熟しつつ、アルデバランの情報を集めた。ここでも搾取が重く、土地にこだわりの無い冒険者は、どんどん他所(基本的にアルタイル系)に流出し、残った冒険者から手数料という名目でピンハネしているようだ。主に鉱石採取で複数パーティーで参加する依頼を受け、魔物の相手を請負い、他のパーティーに採取に専念して貰うように仕事を捌いた。美女4人を侍らすパトリックはかなり有名になり、アルタイルとは関係無く面倒な立ち位置になったが、魔法が達者な人族として、アルタイルとは関係なく認知されたので、隠密行動にはうってつけの状況になった。

 一緒にダンジョンに潜る冒険者から街の様子を聞いたりしながら、依頼を捌いた。結構な収入を得て、ライセンスプレートもCにランクアップしていた。パトリックは、羨望の眼差しをうけ続け、あまりいい情報を得る事は出来なかったが、美女達は、聞きたくなくても色んな情報(ガセも多い)が入って来るので、精査しつつ、アンタレスの事情や、デニスの行方を探っていった。


 入学式を翌日に控え、軽めの依頼を探すと、薬草採取の依頼を見つけた。地図を片手に森に踏み入ると、嫌な雰囲気が辺りを支配した。

「なんか、嫌な雰囲気だな!」

男性口調が何となく不自然でなくなったパトリックが妖精を探すと、

「またまた来たのか?まあ、食す物をよこせ。」

最悪のタイミングでマキシミリアンが登場した。

 パトリックは、

「食べ物はこれだけしか持ち合わせが有りませんけど、お酒なら有りますよ。」

少しのチーズとワインのボトルを見せた。

「栓を抜いてくれ。」

水筒のフタにワインを注ぐと、妖精はゴクゴクと飲み干した。ご機嫌な妖精に五段校の説明と試験に合格して今の姿で通いたいと主張した。

「何でも都合の良い事はばかりじゃ無い。自分で良く考えなさい。」

勝手に魔法を掛けておいて、説教紛いのセリフを残して、妖精の粉を振り撒いて消えて行った。またどういう変身なのか、慌てて確かめたが、すぐに変わった様子は無かった。

 薬草が揃ったので、ギルドに引き揚げると、

「ああ、パトリックさんですね?」

微妙な反応を不思議ち思い、鏡を覗いて見ると、3段校?いや今で言う4段校生位になった自分を発見した。他の4人も同じような感じだった。まあ、若く?幼く見える五段校生だと思えば問題ないかな?気にしても仕方が無いので、アパートに帰って明日の準備をした。


 夕食を始めると、妖精の気配を感じた。

「ワインはまだあるか?」

呼んだ時に来なかったり、勝手な姿に変えられたりと迷惑な妖精だし、ここでまた変身させられると、明日からの学校に支障を来たすので、なんとか現状維持を頼み込んだ。マキシミリアンはグラスのワイン飲み干すと

「解った、解った!」

と、何時ものように頭上を旋回した。不安なパトリックが4人を観察していると、みるみるうちに縮んで、4人の美幼女になってしまった。自分も縮んでいる事を確かめると、先が見えない現実にため息をついた。

「消えてしまった妖精はきっとアテにならな・・・?」

言葉を詰まらせたパトリックの目の前に、何時もは妖精の粉を振り撒いて消える妖精がヒラヒラ浮かんでいた。

「おかわり!」

グラスに半分、さっきと同じ位注ぐと、

「ケチだな。」

表面張力で膨らむ迄注ぐと、嬉しそうに、グラスに吸い付いて飲み干した。身体の大きさを考えると樽を空けた位は飲んだだろう。

 フラフラとまた頭上を旋回。今度は身体の変化は無かった。

「今まで変身させたどの姿になりたいか想い浮かべなさい。」

パトリックは、受験の時の20代のパトリックを想い浮かべた。4人はさっきの美少女になっていた。これから自由に変身できるのかな?更に確認しようと思ったら、妖精は既に消えていた。


 翌朝、念の為更に変身していないか鏡で確かめた。本来なら2つ歳上の4人が、4、5歳下になっているのがパトリックは少し嬉しく思えた。

「こうなるんなら、揃って4段校も良かったわね。」

グレンダ(ジョージ)の呟きに皆んなが頷いた。2つ違いだと、各校で1年生と3年生の時にしか同じ学校に通わないので、一緒の学校はきっと楽しいのだろう。入学式の諸事情もリサーチ済みなのでパトリックはスーツにネクタイ。女子になっている4人は淡い色のワンピース。パトリシアが選ぶモノよりはかなり露出が多めだが、一般的な範囲内。その当たりもリサーチ済みらしい。


 さて、入学式。目立つのは覚悟して校門を通過。キャンパスを埋め尽くす学生と殆どが男子だった。これはリサーチ出来ていない。新入生100人の中に女子は12人。美少女を追う視線が、そのままパトリックを攻める視線に変わっていた。例年はもっと少なく、10人超えたのは初めての事らしい。

 ざわつく中、入学式はサラッと終わり、ホームルームのような物は無く、掲示板で自分に必要な講義を調べて、勝手に受講すれば良い。今日はそのシステムの説明の説明会が有り、自由参加だが、5人とも参加してみた。

 他の女子はあちこちに目立たない様にしていたそうだが、4人の側の方が居心地が良さそうと判断、12人揃って説明会に参加。パトリックは更に冷たい視線に晒される事になっていた。

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