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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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進学

 迷いの森を進むと、ちょっと違う雰囲気の森になった。

「ねぇ、何となく似てないかしら?マキシミリアンの居た・・・?」

「またお前達か、私の魔法は楽しんでくれたかな?」

蝶の羽根を持つ妖精が現れた。

「えっ?魔法を掛けた妖精が亡くなったら解けるんじゃなかったの?」

「この身体は脆くてな、1年程しか持たない。身体が傷んだら、新しい繭に魂を移すのだ。前の身体の時に掛けた魔法はその時に解けたのだ。何か食す物は無いのか?」

「人族に化けられへんようなって苦労したで!まぁ貴重な体験っちゅう気ぃもしたけどな。」

お喋りをしながら、ケヴィンは保存食の袋を開けた。マキシミリアンは早速齧り付いて、

「では人族になれるようにしてやろう!」

また、妖精の粉を散らして木々の間に消えてしまった。

 人族の姿でいたので、妖精の魔法がが掛かったのか解らなかったが、森を抜ける頃には、身体が縮んだのか、洋服も靴もブカブカで歩き辛くなっていた。ポルックスについて、取り敢えず、サイズの合うものを見繕って、助っ人で来ていたフォーマルハウトの若いモンに屋敷迄の手綱を頼んだ。『妙なガキが何言ってるんだ』って反応だったがジョージが、

「この姿だと、僕らだけじゃ不味いでしょ?この子達が居れば、安全だと思うけど、騒ぎになっちゃうからね。」

フッと現れた、馬のサイズの猫を撫でた。

「し、四天王のジジジ、ジョージ様で?」

震えながら頭を下げていた。

 子供になった5人は、馬車で海岸沿い迄戻った。途中、籔だった牧場は、伸び切った雑草がキレイに刈り取られ、見た目は牧場になっていた。

「ヒツジ達を呼んだんだ!雑草喰らいの食いしん坊。あとは勤勉な人族がなんとかするでしょ?」

ジョージが中々合流しなかったのは、このせいだっらしい。ヒツジと言ってはいるが、ヒツジ系の魔物。既に、柵を直したり雑草の根っこを掘ったりする人族が沢山働いていた。

 老師の護っていた関は開放されていて、村は完全にアルタイルの雰囲気だった。アンタレスの撤退を老師に報告すると、

「約束の相手が居なくなったら、約束も無しじゃな。」

小屋から女性を連れて来て、

「レダの末裔じゃ。主らが会ったカストル、ポルックスの再従兄弟(はとこ)がこの娘の父親じゃ。姫を立てて再興させるかのう。」

 老師に別れを告げ、大渓谷を渡る。吊り橋はまだまだ工事中だったが、迂回の山道は整備され、スリル満点の吊り橋は、しっかり補強されていた。


「レダの復活ですか?農産物も魅力ですが、石炭も採れるんです。アンタレスになって、乱れていて産出していなかったんだと思います。」

フォーマルハウトは、子供達を相手に敬語で説明。違和感タップリで、レダの支援とその先のアンタレスへの睨みを言い付かった。


 妖精の魔法は、羽化したばかりの筈なので、1年間解けないと思われるため、一旦アルタイルに帰る事にした。魔力はそのままだったので、5人と1匹の旅を続けるつもりだったが、(見かけ)子供だけでは問題だし、宿にも泊めて貰えないかもしれないので、アルタイル系の屋敷がある街迄送り、リレーしてアルタイル迄送ってもらう事になった。


 10日程でアルタイルに到着。魔王は小さくなった我が娘に鼻の下を伸ばしていた。初段校に通うよりも幼いので、屋敷で暇を潰していた。

 数日、子供のままで燻って、満月の夜だけは元に戻ることを確認した。パトリシアは母親に妖精の事を相談してみた。色々話して、初めの魔法が解けた時に、聞こえた?感じた?

『会いたくなったら呼んでね。』

を母親伝えると、あっさりと、

「じゃあ、呼んでみたら?」

5人揃って、マキシミリアンを呼んでみた。

 あっさり現れた妖精に、変身を解くように頼んだ、

「何か食す物はないか?」

そう言うと思っていたので用意しておいたクッキーを渡した。

「魔族じゃ嫌だとか、子供が嫌だとか我侭だな!」

不機嫌そうに飛んで、妖精の粉を振り撒くとスッと消えてしまった。

 大きくなるのを期待して、大人のガウンをブカブカに羽織っていたので、サイズの問題は無く、予定通り(?)大きくなれた。予定通りでなかったのは、マッチョマンと4人の美女になっていた。

 最初の変身の時に揃えた着替えがあるので、生活に困る事は無いが、顔見知りに会ったりしても面倒なので、もう一度妖精を呼んだけど、今度は現れなかった。どういう条件で現れるのか解らないので、また旅に出る事にした。

 ペルセウス邸に、旅の報告。変身した姿で大丈夫か心配だったが、夫人は直ぐにパトリシアだと認識、仔犬のウォーレンを抱いて、身内に年頃のお嬢さんかいない事を嘆いていた。

「何か不都合ありましたか?」

「いえね、貴方のお嫁さんにどうかと思ってね。」

「あっ、この魔法は最長でも1年程で解けるし、妖精の気まぐれで戻してくれるかもしれないんです。」

「フフフ、冗談よ。ウォーレンのライバルが増えちゃ可哀想だもの。」

 ウォーレンの仕事は、セミリタイアしていたペルセウス伯爵が代行しているので、なんとかなっているとの事。またアテの無い度に出ることを告げ、実家に帰った。


 長く女性でいる事を考え、4人は街の占い師に名付けの相談した。仔犬にウォーレンと名付けた占い師に依頼して、ショーンはシェリー、ジョナサンはジェニー、ジョージはグレンダ、ケヴィンはケリーと名乗る事にした。因みにパトリシアは、男の子だったら命名される候補だったパトリックを名乗っている。男女逆転での生活も多少、不便を減らせるかもしれない。


「最近、人族では4段校や、5段校が出来てそこに通う者が増えているらしいぞ。」

 魔王は、人族のままでいるのなら、19〜22歳が通う5段校に潜入してみてはと勧めた。3段校までが普通だったパトリシアよりも上の年齢の場合、4段校(16〜18歳が通う)の卒業認定試験をパスすれば、5段校の受験が出来るらしい。アルタイルより西でアンタレス系最大のアルデバランの5段校を目指して急遽、受験勉強を始めた。

 1週間後に卒業認定試験、そのまた1週間後に入学試験がある。5人とも3段校ではずば抜けて優秀だってので、いきなりの試験対策でもなんとか成りそうだった。問題なのは、卒業認定試験を男女逆転して受けると、その後もずっと逆転したままでなければ入試も受けられないし学校にも通え無い。潜入なので、4年間通って卒業する計画では無いが、元に戻っていた方が、後々都合がいい筈。認定試験の前日、妖精を呼んでみた。残念ながら不発に終わり、変身した姿で認定試験を受ける事になった。

こんにちは!グレープヒヤシンスてす!

お付き合い頂きましてありがとうございます。

1ヶ月連投しました、4月からは毎週水曜日の0時更新になります。

これからもよろしくお願い申し上げます。

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