変身
一睡もせずに朝日を浴びた。結局皆んなも寝ていなかった。眠い目を擦って食堂に行くと、ブリジットが待ち構えていた。何事も無かったように食事を済ますと、ブリジットの質問攻めが始まった。
結局、質問の趣旨は変身前後での幸せの具合がどう違うかだった。皆んなノーコメントを貫いたが、4人の反応をパトリシアが読んだ感じでは、変身後に部があるように思えた。因みに、パトリシアも変身前がより幸せを感じていた。ブリジットは、回答を得られなかったものの、反応で把握したようで満足した表情だった。
パトリシアはシリウスに誘われ狩りに出掛けた。ウォーレンに反応した猟犬達が唸っていたが、ウォーレンは犬橇の時のように、暫しにらめっこをして、お座りした猟犬達の背中をタッチして回っていた。
残った4人はブリジット先生の元、レディの嗜みに付いての勉強会。骨格の違いのせいか、脚を閉じて座るとかは苦にならないが、言葉使いと、テーブルマナーに戸惑い、メイク等の身嗜みに苦労していた。一応一日掛けて合格を貰っていた。
パトリシアは狩りから戻り、明日の出発に合わせ、人族に変身しようとした。
「なんか上手くいかない。狩りで魔力弾飛ばした時は、パワーアップしてたんだけどな。」
色々試してみたが変身出来なかった。4人も変身できないようで、そのままでいる事にした。しばらくは、アルタイル系のエリアが続くので問題は無いだろう。
寝不足なのと、明日が早いんで夜は大人しく一人で眠った。
翌朝、食堂に降りると早い時間にも関わらず、ブリジットと四天王は既に食卓に着いていた。空いた席に座ると直ぐに食事が運ばれ、皆んなのエレガントな所作に驚いた。
食べ終わって席を立って更に驚いた。変身後はロングドレスで過ごしていた4人が、スカートとして機能しているのか疑わしい丈しかないマイクロミニだった。目のやり場に困っていると、
「すっかり、男子目線ね!」
ブリジットは何故か嬉しそうに笑っていた。荷物を積み込んで、すっかり女子の4人を馬車に乗せ、パトリシアが手綱をとった。シリウスも起きて来て見送ってくれた。
よく整備された街道を北へ向かった。やはり、昼は集落の食堂、夕方には宿のある街に到着できる行程でスムーズに旅を続けた。宿では2部屋か3部屋とって、交代で1人ずつパトリシアの部屋に泊まった。
パトリシアは一つ不安を抱えていた。今夜は満月。今、女性になっている4人が満月の影響を受けるのだろうか?大部屋に皆んなで泊まった。
丸い月が昇ると、パトリシアは何時もの変化を感じ、気が付くと全員元に戻っていた。ウォーレンを含む5人が交代で揺れていた。パトリシアは立場が反対の時に覚えた事を試したりしながら、悦びを堪能して、東の空が橙色になって来た頃、再び変身した。シャワーを浴びて出掛ける支度を済ませてから食堂に降りた。
食堂のおばちゃんが、意味深なニヤケ顔で、パトリシアに近付いて、耳元で、
「満月に、魔族の美女4人を夜通し鳴かせ続けるなんて見上げた精力だね!」
『あっ、結界!』パトリシアは、予想外に元に戻ってしまい、遮音の結界を忘れていた。何喰わぬ顔で、食事を済ませたが、睡魔に襲われ食卓で居眠りをしてしまった。ショーンとジョナサンが両脇を抱えて部屋に運んだ。パトリシアは起きる気配が全く無かったので、もう一泊することにした。午後やっと起きたパトリシアは、ゴロゴロしていたジョージに事情を聞いて、取り敢えず、ランチに出かけることにした。食堂のおばちゃんにオススメを聞いて見ると、
「少し向こうに大きな松の木の二又が有って、山の方、左に行くと温泉が有ってね、そこのご飯が人気だよ。今の時間なら日帰りで入れるよ!」
朝に増してニヤケていた。
早速、温泉に向かった。住宅街を少し過ぎた所で、景色も良い訳でもなく建物も質素な感じだった。一応食べる所は有ったし、不味くも無かったが、態々馬車を走らせる程の有難みは感じなかった。
「折角だから、温泉入りましょう!」
えっ?今喋ったのケヴィン?西国の訛りが全く無かった。
「ブリジット后に教わった言葉使いですわ!」
元を知っているパトリシアは、背中がムズ痒い違和感だったが、客観的に見ると容姿にマッチしていた。
温泉は、6つに仕切られ、それぞれ貸し切りになっていて、脱衣所代わりに、大きなベッドのある休憩室が付いていた。おばちゃんのニヤケの理由がひとまず納得。ご期待に応え、温泉とベットを堪能した。
「昨日、意識は有ったんだけど、欲求の制御が出来なかったの。パットにはムリさせちゃったわね。」
ジョナサンが済まなさそうに言った。
「私は平気よ!寝不足は昨夜だけが原因じゃ無いと思うし。正直、このままで4人が満月の状態になったら対応しきれるのか不安だったのよね。」
まぁ、結界オーライで済ませたが、
「パットは少し、言葉使いに気を付けてね!」
ショーンの指摘にパトリシアは頭を掻いた。
「アア、ワカッタ、キヲツケル!」
男性の口調を意識して、何故かカタコトになったパトリシアは顔を赤らめていた。
逆転したままの旅が、半月程続いたある日、手綱をとっていたパトリシアは目眩を感じた。馬車を停めて、自分のカラダを確かめると、元のパトリシアに戻っているのが解った。馬車を覗くと皆んなも元に戻り、露出の多いミニワンピは洋服としての機能は果たさず、丸見えの下着は元々少ない面積な上に伸びきって、中の物を収める事が出来ていなかった。
「あの妖精、お亡くなりになったようね。」
『私は、マキシミリアン。会いたくなったら呼んでね。』
頭の中で囁いた様な気がした。馬車の中でゴソゴソ着替え、次の街を目指した。




