ジョナサンの里帰り
翌日、シリウスに戻ってジョナサンの両親に挨拶した。思い出の地はやっぱり公園位しか思い付かないので、幼馴染の案内で観光する事にした。
「妖精の森って、ホントに妖精がいるんですか?」
パトリシアは観光マップに反応した。
「ええ、いる筈ですよ。ただ、気に入って貰えなければ会えませんけどね。」
妖精の魔法は、魔族の魔法とは系統が違うので、ウォーレンに掛かった魔法を解く事が出来るかも知れない。ダメ元で行って見ることにした。
妖精の森は、常春?常秋?暑くも寒くも無い季節のままらしい。途中の山道にはしっかり雪が積もっていたが、妖精の森には雪は無かった。きのことかも沢山あったが、妖精に気に入られるには、手を出してはいけない(らしい)。
どこまで広いのか解らない森を散歩、いや彷徨った。どうしたら気に入ってもらえるのかは解らない。取り敢えずお昼なのでお弁当にした。
平らな所にシートを広げて、ゴロリ転がった。
「冬も嫌いじゃ無いけど、この暖かさは気持ち良いわね!」
伸びをするパトリシアにつられ四天王とウォーレンも伸びをしてシートに転がった。お弁当を広げていると小鳥が飛んで来て、ウォーレンのご飯を一緒に突いた。ウォーレンが迷惑そうにしていたので、
「小鳥が好きな物って何かしら?」
弁当箱を見てパトリシアが考えていると、
「魔族の食す物、何でも大丈夫じゃ!」
小鳥は小さな人族の姿に蝶の羽根を付けた、妖精に変わっていた。パトリシアが弁当箱を差し出すと、自分の頭より大きい卵焼きに齧りついた。
卵焼きを完食、胃袋が落ち着いたのか、さっと飛び立つと、お礼のつもりなのか、皆んなの頭の上を旋回して妖精の粉を掛けて何処かに飛んでいってしまった。
「姿を見せたって事は、気に入られたんちゃうか?」
ん?ケヴィンの口調の女の子の声がした。慌てて声の主を確かめると、ケヴィンの洋服を着た、ケヴィンによく似た女の子だった。他の3人も同様でパトリシアは背中にバチンと弾ける感触がした。下着のホックが弾けたらしく、腰のベルトも金具が外れていた。
落ち着いて確かめると、5人は性転換していて、ダブダブメンズ服の美女4人と、パツパツのレディースのマッチョになっていた。幸い靴を脱いでいたので、大丈夫だったが、履いたまま大きくなってしまっていたら、大変だったかもしれない。パトリシアは、ジョナサンと洋服と靴を取り替え、何とか人前に出られる姿になった。他の3人はダブダブのままだったが、
「取り敢えず、戻ろうか?」
何をすべきなのかさっぱり解らないので、屋敷に帰って相談する事にした。
屋敷に戻って、シリウス夫妻に報告すると、ブリジット后は、医者の手配をして、部屋で待機するように言い、忙しく何処かに行ってしまった。
「彼女が張り切る時は、任せるのが1番だ。不安だと思うが、落ち着いて待っていて欲しい。」
魔王シリウスもは困惑の表情で、取り敢えず慰めていた。
パトリシアの部屋でダブダブの3人に洋服を見繕っていると、
「失礼致します!」
女性になった4人の採寸を始め、
「殿方はこちらへ!」
パトリシアは別室に連れて行かれた。採寸を終えると、ゆったりしてサイズが気にならない部屋着とガウンで何とか落ち着いた。お茶が運ばれ寛いでいると、シリウスが来て、
「その姿、お父上にそっくりですね!角の感じなんか、ほぼ同じですよ!」
きっと褒めていると思うが、パトリシア本人は、目立ち過ぎて外を歩き辛くなる事を憂いていた。父が知ると、そのままで跡を継げと煩いだろうと、妄想だけで疲れ切ってしまった。
バーに移動して魔王とサシで飲んで、2時間も経っただろうか?
「お召し物が出来上がりました。」
さっきのメイドが現れ、採寸した部屋に連れ戻された。日常から旅の道中、困らないだけの着替えを貰い、
「こちらにお召換え下さい。」
夜のパーティー用の正装を着させられた。
バーに戻ると、シリウス夫妻と鮮やかなドレスの美女が4人。見かけからは想像し難いが、間違いなく変身した四天王だった。
「変身前のパット程じゃ無いけど、結構立派でしょ?」
ジョージはパトリシアの手の平で自分の胸を包んだ。パトリシアは慌てて手を引っ込めたが、ズボンの中の違和感が隠せなかった。
「そちらも、キチンと変身しているようね?実戦はパーティーが終わるまでお待ち下さいね。」
ブリジット后は4人が赤くなってるのを確かめニッコリ笑った。
ブリジットは、ダンスの指南を始めた。パトリシアは最低限のスキルはあったが、当然女性のダンス。男性のパートを覚える特訓だった。四天王達もジョナサンの幼馴染達がパートナーになり女性パートを練習していた。何とかカタチになると、ブリジットはシリウスと踊り、パトリシアは四天王達と代わる代わる踊った。
ダンスの合格を貰い、食事が終わった頃、来客の知らせがあった。ブリジットの母、プロキオン皇太后、勿論魔王プロキオンの母でもある。変身した5人を調べ、妖精に会った時の状況を報告。少し考えながら、従者が持っていた鞄から、古文書風の本を取り出してページを捲った。
「こんな感じでしたか?」
白黒の挿絵では微妙だが、多分合っていそうだと答えると、
「妖精が生きているうちは解く事は叶いません。羽化してから数カ月から1年程しか寿命が無いので、その間は待つしかありませんね。」
最長でも1年で戻れるなら、焦っても仕方が無いので、そのまま旅を続ける事にして部屋に引き揚げた。
パジャマに着換え、ウォーレンを抱き上げた。
「君は男の子のままなのね。」
折角一緒のベッドに慣れた所だったが、またソファーに逆戻りしてしまった。
灯りを消そうとすると、ノックの音がして、返事の前に扉が開いた。セクシーなネグリジェを纏った4人が乱入、そのままベッドに押し寄せた。
「あの妖精はんの寿命、今日までやったら直ぐ戻っちゃうやん、折角やから女子としての経験も積んどかな勿体ないやろ?」
気が付くと着たばかりのパジャマは脱がされ残ったトランクスの中は、しっかり反応を示していた。4人の中では決定事項らしいので、応える事にした。
自分が気持ち良いと記憶している事を再現してケヴィンと重なった。変身前に味わった悦びには敵わないが、一瞬のピークはそれに近いものを味わえた。ただ、自分自身の感触よりもケヴィンの反応が気持ちを昂ぶらせた事が意外に思えた。ジョナサン、ショーン、ジョージと一周して力尽きた。呼吸が収まらないまま、窓の外が明るくなっていた。




