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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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海路

 港で船を待った。小綺麗になったリゲルの残党はセルゲイと言う45歳。案内のお兄さんが見張っていて、魔力の封印を兼ねた手錠で拘束されて、大人しくしていた。どんどん積み込まれる農産物を眺めながら、馬車ごと乗り込んだ。

 夕方出港して、翌々日の夕方にシリウスに到着する予定。揺れもあまり感じ無い快適な船旅を楽しんだ。とは言っても貨物船なので、娯楽がある訳でも無くボーっと過ごすしかない。暇つぶしに用意した本を眺め、暗くなって読めなくなって酒盛りを始めた。

「船酔いしちゃ不味いから、先に酒で酔っておこう!」

ショーンは謎の理論で、船酔いの予防だと主張していた。

 ほろ酔いで星空を見上げた。周りには灯りが無いので、漆黒の空に、数えられない星が瞬いていた。寒くなるまで楽しんで、船室に降りようと思ったら、船の両側が、海賊に挟まれている事に気付いた。

 先に鈎の付いたロープが投げ込まれ、海賊達が伝って来た。船に届く前に四天王達の魔力弾が見舞われ次々に海に落ちて行った。悲鳴の後に『ドボン』が繰り返されて、両側の船が静かになった頃、

「ちょっと行って来るぜ!」

海賊が用意してくれたロープでショーンとケヴィン、ジョナサンとジョージが左右の海賊船に乗り移って行った。程なく鎮圧して救命ボートを数隻降ろしてから戻り、乗組員が数名移動して、3隻連なってシリウスを目指した。


 海賊はそれなりにお宝を持っていて、パトリシア一行の戦利品として扱われるが、流石に船を貰っても活用出来そうにない。護衛船なり輸送船で利用してもらう様に、ミラの部下に託した。

 上陸すると、シリウスの幹部達が待ち構えていた。早速、屋敷に直行し歓迎パーティーが催された。ここでも歓待され、海の幸を堪能した。


「捕虜を送る位、使いの者で良いだろう?」

魔王シリウスが提案するが、パトリシアは、

「ミラ殿は、ペテルギウスとの関係構築を狙ってらっしゃると思います。それに、使い烏を飛ばしておりますから。」

と、自分達で運ぶ主張をし、了承された。ペテルギウスは魔族としては隣国だが、人族の国割では同じ国内なので、ラクに往来出来る。距離も馬車で日帰り出来る程度なので、明日早速向かう事にした。

 丸2日船に揺られていたので、揺れない地面では逆に揺れている感覚だったので、早目に引き揚げさせてもらっていた。


 朝日と競うように、使い烏が飛んで来た。リゲルの残党を引き取ってくれるとの事で屋敷に招かれた。この時間に烏が届いたと言うことは、ランチに着く様にとの配慮だろう。支度は済ませていたので、直ぐに馬車に乗り込んだ。

 馬車に乗るとパトリシアは直ぐに、セルゲイの手錠を外した。

「逃げたり、暴れたり心配しないのか?」

「ペテルギウスで客人扱いされるのと、途中で亡骸になるの、どっちが良いか判断できない方にはみえませんわ。」

涼しい顔で、反抗すれば亡骸と釘を刺されて、セルゲイは冷や汗をかいていた。

 すんなりと屋敷に着くと、幹部風の男が迎えに出て来た。

「セルゲイなのか?」

出迎えの男はイワンといい、セルゲイとは旧知の仲のようだった。

 昼食会には魔王ペテルギウスは参加せずに、孫のユーリが仕切っていた。

「祖父は、老いて殆どの時間をベッドの上で過ごしています。若輩者ですが名代を務めさせて頂きます。この度は当家の旧友をお連れ頂き、ありがとうございます。」

 ユーリはパトリシア達と同世代、父を早くに亡くしているので、跡目を継ぐ立場で、衰弱した当代に代わってファミリーを束ねているようだ。固い挨拶のあとは、アルタイルが進める人族との調和について、ユーリが熱弁した。

「祖父は、『人族に媚びるなんて魔族の風上にも置けん!』と毛嫌いして、しばらく交友が無くなっていたアンタレスと繋がりを求めたんです。」

 元々はアンタレス寄りの中立だったのが徐々にアルタイルに傾いて来たのに、また急にアンタレスに戻った感じだったのはそれが原因のようだ。

 ユーリは、人族との調和は、魔族存続に必要不可欠だと、アルタイルに同調し傘下に入る事を希望している。シリウスの港が整備されてから、人族がシリウスに流出している現実も彼の考えを裏打ちしていた。

 一部、アンタレス寄りの派閥がいて対応に苦慮しているそうだ。

「その一派にセルゲイをアンタレス迄送らせて、ある程度の持参金を持たせれば、向こうで暮らすんじゃ無いかな?」

ジョナサンの提案にユーリは早速イワンを呼んで経緯を話した。

 イワンは直ぐに一派を招集し、アンタレスへの移住の件を伝えた。若い世代は、アルタイルの考えを支持する者が殆どで年配者が主体の移住になった。

 一応『お見送り』と言う名目で、ガチのアルタイル支持者を『見張り』に移住の一行をアンタレスのエリア迄送り届ける事になった。夜は送別会が開かれる事になり、成り行き上、参加せざるを得ない状況で、客間に通されていた。


 急な催しにも関わらず、魔王シリウスとその妻の兄、魔王プロキオンも参列していた。プロキオンはペテルギウスのシリウスとは反対側の隣国で、挟まれたアルタイル系の魔王が参列して、幹部を含むアンタレス派を見送るカタチになり、円満な送別会ではあるが、後戻りが出来ない実質的に破門の様な状況だろう。

 イワン達も、長命な当代がそのまま、歳をとった幹部を重用し、中々出世できなかった上、ユーリの代になれば、新しい考えに付いていける若い世代が活躍するのは目に見えているので、ここを離れる事に未練は無いようだった。

 アルタイル傘下に入った事を内外に知らしめた送別会を無事終了させて。メイドに預けていたウォーレンを引き取った。メイドの膝で気持ち良さそうにしているのに、少しジェラシーを感じたが、気にしない事にして部屋に連れ帰った。

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