表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
21/65

ケヴィンの里帰り

 翌朝、少し寝坊したパトリシアはウォーレンに舐められて目を覚ました。目を擦って覗いた鏡の中には、二段校(9から11歳が通う)の子供が映っていた。十年振り位にツインテールに結って、

「流石に着るものが無いな。」

ほぼ平坦になった胸を確かめて、取り敢えず、セーターをワンピースの様に着て隣室のジョージとケヴィンを起こしに行った。

「やっぱ、要るやろ?開店に並ぶで!」

洋服を調達する話をしたら、ケヴィンがノリノリだった。なんとか工夫して外出出来そうな身支度を整え食堂に行った。

 まだ春は遠いけど、寒さのピークからは随分過ぎたし、ミザールから比べると少し穏やかな気候の地域なので、寒冷地仕様になっていた身体には結構暖かく感じ、開店前の商店街をブラついて時間を潰した。

「パパに任しとけ!めっちゃ可愛いの選んだるで!」

強制的に手を繋いたケヴィンは、自分をパパと言って、子供服を物色。

「流石にこれは初段校(6から8歳が通う)の子が着る服よ!」

幼な過ぎるチョイスにパトリシアが拒否すると、

「パットは小さい頃から、大人みたいなカッコが好きやったから、こんなん着たこと無いやろ?だいたい、サイズが有るっちゅう事はやね、これ着る二段校生が居るちゅうことやん!」

ケヴィンの推しに負けて、二段校生としては甘々の女児服を購入。外套から下着まで揃えて宿に帰った。

 宿に帰ると、待っていた3人と1匹が大絶賛。女性冒険者の団体さんとゴブリン退治に行った時と同じ様な?いやもっと優しい眼差しが絡んだ。

「ロリコンなの?何時もより反応良いよね?」

「あぁ、パットを嫁に出来るかも知れないって、稽古や勉強頑張ってた頃の姿だからな、鼻の下が伸びても仕方がないだろ?」

ジョナサンは自分の鼻の下の状況もクールに分析していた。

「明日、初段校生になったら、もっとフリルのヤツとか、大きなリボンのにしようよ!ヒラヒラとか!」

ジョージは、明日の買い物のお供に立候補していた。

 ゆっくり出て早めに着く楽な移動。慌ててもそのつぎの街には届かないので、宿のある街でゆったりする事にしている。

 空いていた宿は、大部屋しかなく普段なら宿の人も男女別とか気にする筈だが、幼い女の子ならと、大部屋を勧めた。パトリシアが頷いて部屋が決まった。

「この年頃は、まだ満月の夜の影響は受けていなかったから、何もないと思うけど、もしもの時は、助けてね!」

枕を5つ並べて灯りを消した。


 月が高くなった頃、パトリシアは自分の体に異変を感じた。満月の効果が身体を火照らせ、鼓動が高ぶり、呼吸が乱れてきた。ウォーレンは丸くなって眠ったまま。抱き上げて、胸の上に置いたが、居心地の良い弾力が無いせいか、ゴソゴソと足元に逃げて行った。

 意識がある内になんとか隣の布団に潜り込んだ。ケヴィンに跨ってなんとか意識を繋ぎ留めた。一段落して腕枕で呼吸を整えた。

「何か、罪悪感しかないんやけど、もう大丈夫か?」

「ううん、もう少しいい?」

今度はケヴィンを見上げながら悦びに浸った。

 パトリシアは、明るくなるまで何度もおねだりを繰り返した事は覚えていたが、気付いたときは、自分の布団で目を覚ましていた、急いで鏡を覗くと、

「昨日と変わらないかな?」

新しく買った洋服も丁度良いままだった。

「おはよ!おっ、昨日のままか?下げ止まりかな?」

ジョージはウォーレンの飲み水を用意しながらパトリシアの様子を確かめた。

 皆んな起きて食堂に向かったが、ケヴィンはぐったり、テーブルで居眠りしていた、

「どうした?具合いでも?」

ショーンが心配そうに声を掛けたが、

「あっ、寝かせてあげて。昨夜やっぱり満月の影響が出てね、さっきまで付合って貰ってたんだ。」

「誘ってくれれば良かったのに!」

「そうも思ったんだけどね、ウォーレンが犬のままでね、これからずっとかもしれないから、順番と思ったんだ。このままだったら来月お願いしていい?」

ちょっと気まずい雰囲気で頷いていると朝食が運ばれて来た。ショーンはケヴィンを乱暴に起こして揃って食事を始めた。

 今日は夜遅くにケヴィンの実家スピカ家に到着する予定。少し急いで出掛けると、遅めのランチを途中の街で食べられる計画だった。

 予定通りに馬車が進み、陽が落ちてから街に入った。街灯が灯り、夜でも馬車の往来が途切れていなかった。実家には使い烏を飛ばしていたので、門に近づいただけで、使用人が飛び出し、拉致されるが如く招き入れると、ファミリーを継いでいるケヴィンの兄が歓待した。


 夕食は途中で済ませていたが、久々の里帰りに、歓迎パーティーがが準備されていた。幼女になったパトリシアを見つけたケヴィンの母は、

「パトリシアちゃんやね?どないしたん?おばちゃんと会った頃と、いっこも変わってへんで??」

変身と言うか、変化の経緯を説明すると、

「じゃあ、詳しいコトは明日やね!」

気さくなオバちゃんの様には出来ず、本家の幹部として接するスピカ魔王、ケヴィンの兄は少々居心地が悪かったようだ。

「普通に、弟の友達が来たって感じでお願いますね。」

ショーンの笑いかけでなんとか正気に戻った様に見えて一安心。(多分)高級なワインで乾杯、即席ではあったけど、心のこもったパーティーだった。主役のケヴィンが寝不足で早々にリタイア、パトリシアも馬車で睡眠を補っていたが、子供の体力らしく、続いてリタイア。あまり酒が強くないジョージも続いたが、パーティーはその後も続いていた。


 スッキリ目覚めたパトリシアは、ベッドを飛び出し鏡に向かった。中には更に幼くなり、ギリギリ初段校かな?って感じ、5、6歳のパトリシアが居た。ダブダブの洋服でケヴィンの部屋に行くと、

「そのサイズやったら、タバサのが丁度ええんとちゃう?」

ケヴィンは、メイドと呼ぶと何やら説明して、少しすると綺麗な奥様、ケヴィンの義姉が現れ、後ろには小さな女の子が隠れる様にこちらを覗いていた。

「お古で恐縮ですが、この子の物でサイズは大丈夫と思います。」

 女の子は、ケヴィンの姪でタバサ、初段校の2年生。今朝のパトリシアより少しお姉さんだった。パトリシアが寝室に戻ると、既に色とりどりの洋服が運び込まれていて、スピカ夫人はピンクのドレスをパトリシアに当ててニッコリ。

「出来れば普段着っぽいのが嬉しいんですが・・・。」

「そ、そうね。」

ガッカリ様子の夫人を避けて、シンプルなワンピースをゲット。身支度をして食堂に向かった。

「姉さん、俺が買い物に連れて行くんだから、余計な事しないでよ!」

途中参加のジョージが膨れっ面。パトリシアは、ジョージが夫人の実弟な事を思い出し、さっきのドレスはジョージも選びそうだと笑いを堪えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ