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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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パトリシアの異変

 アケルナル本人は取り逃がしたものの、ファミリーは壊滅し、旧日和見派は全てランディが仕切る様になった。街からは緊迫感が消え、復興の兆しを感ずる事が出来るようになっていた。パトリシア一行は、一週間ほど逗留し、アケルナルと言うか、デニスの行方を調べた。関所の監視は強化しているし、騒ぎの当日は、アルタイルとベガの精鋭部隊が固めていたので、魔族はもちろん、人族や犬にも目を光らせていたので、領内に居るか、野犬の様に山に潜む、若しくは山を経由して何処かに逃げて行ったと思われる。一週間調べて成果が無いのは、山経由での逃亡だろう。雪も降り足跡がリセットされてしまったので捜索は終了。一応手掛かりになるかも知れないのでアケルナルの持っていた剣を回収しておいた。

 ミザールもベガも落ち着きを取り戻したので、アテは無くなったが旅を再開する事になった。

「折角ここまで来たんやから、俺のイナカ行こか?」

一応疑問文と言うか、お誘いの言葉の様に聞こえたけど、本人は決定事項の様に準備を始めていた。


 この先、ケヴィンの実家がある西の果て迄は、かなりの距離を進む事になるが、その殆どがほぼ何もない原野か、小さな漁村がポツリポツリ。食糧の調達も怪しいので、保存食をパンパンにして馬車に乗った。

 川を渡るとアルタイルのエリアだが、元々ミザールやその他の日和見派に睨みを効かせる為に作った様な拠点で、街としてはあまりパッとしない筈だったが、アケルナルから避難した人族が商売を始めたりして、街の様子が明るくなって来たそうだ。今後は共存共栄で発展出来そうだ。

 馬車が、10分も走ると、歩いている人は殆ど居なくなり、建物も疎らになった。更に10分後には一面の雪景色。これから数日は同じ景色を見続ける事になる。

 陽が昇れば馬車を走らせ、行く先が真っ赤になったら野営の支度。流石のジョナサンも一泊しかしない氷の城を作るのも飽きた様で、装飾無しのシンプルな氷のドームになっていた。それでも風除けと保温性は充分で、安心して夜を過ごす事ができた。

 

 久しぶりに人工的な物が視界に入った。10軒ほどの民家と港と言えば大袈裟過ぎる船着き場、その周りに網や浮き玉が置かれていた。店や食堂、もちろん宿らしき物は無かった。

「あの、こんにちは。お魚わけて頂けませんか?」

パトリシアは、網の手入れをしていた男性に声を掛けた。

「おやおや、可愛らしい旅人さん、丁度いっぱい獲れた所だよ、パパと一緒かな?おじさんのウチで良かったら食べて行きなよ。」

 おじさん(・・・・)は、それ程の歳でも無さそうだが、やけに子供扱いされて、パトリシアはやや不快に思った。若く見られたらそれだけで至福という世代には達して居ない様だった。犬もオーケーと言う事で、早速お邪魔して久しぶりに防寒着を脱ぐと、

「パット?若返ったんとちゃうか?」

ケヴィンは壁に掛かっていた姿見を指差した。不思議そうに覗くと、学校に通っていた頃のパトリシアの驚いた姿が映っていた。

「何か、ケッタイな魔法やな?何時からや?」

「ミザールに居た頃は、気付かなかったから、今回出発してからかな?」

「せやったら、俺んち迄なら赤ん坊にならなくて大丈夫やな。オカンならなんとかしれくれんとちゃうかなぁ、知らんけど。」

焦っても仕方が無いと気付き、海の幸満載の漁師メシを頂いた。


 そのまま漁師さんの家に泊めて貰い、久しぶりに風呂に入った。仔犬が埋もれる程もあった膨らがかなり控えめになっていた。それでも、一般的なサイズよりはまだまだ豊かだった。

「この位の頃は下着を買うのも苦労しなかったのよね。」

独り言を言ってザブンと湯を浴びた。


 翌朝、美味しいお魚が並んだ食卓で朝食。出発の時、パトリシアが宿泊費を払おうとすると、

「ウチな宿屋じゃねぇからな、親戚のおじさんトコだと思ってくれ。」

と、支払いを断られた。

「じゃあ、コレ貰って下さい。」

『海の神の宝』として船乗りに人気の青い魔石をプレゼントした。こう言われる様な気がして用意しておいたのが役に立ちそうだ。

「こりゃ凄いな!貴族様が泊まるような高級宿でもこんなに取らないだろ?」

「私達が持ってるより、御守として活躍出来るから、魔石も喜びます!」

漁師は、遠慮していたが、四天王達の笑顔でようやく受け取った。

 その晩はテント泊。

「明日は宿屋や、もう一泊辛抱してや!」

 何時もの様に氷のドームの中でテントを張っていた。目眩を感じたパトリシアが蹲る。

「大丈夫?変身、解けちゃってるよ!満月は明後日だよね?」

変身が解けたと言うのも間違えでは無いが、新たな変身が進行していた。

「人族に変身出来るようになったのが14歳の頃だったの。それより前の魔力になっちゃったみたい。」

あどけない表情と、ややスッキリした胸元は、学校の制服が似合いそうだった。


 半日馬車に揺られ、久々の街に着いた。魔族も人族も区別無く暮している街の様で、パトリシアが魔族に戻ってのデメリットは少ないが、人族の青年達と連れ立っている事についての違和感は否めなかった。

「美し過ぎでしょ?普通のお兄さんならもうちょい目立たないんだけどな。」

「ごっつぉさん!その言葉ソックリお返ししまひょ!3段校(13から15歳が通う)入っだばっかで成長し過ぎちゃうか?」

ケヴィンの視線は成人女性に引けを取らない膨らみに向かっていたが、パトリシアは聞こえないフリをして、

「ケヴィンが良く言ってたタコ焼きってここでも食べられるんでしょ?」

「あ、あぁ。それより服やろ?合わへんやろ?下着も。」

「そう思ったんだけどね、明後日にはまた合わなくなるでしょ?ケヴィンのママに診てもらうまで我慢するわ。」

「花より団子?まぁえぇか。」

「じゃあ、ナビよろしく!食い倒れようぜ!」

手綱をとっていたショーンも乗り気だった。

 宿を取ってから街に出掛けた。おやつのタコ焼きは大満足だったが、ディナーのお好み焼きは、ビールお預けのパトリシアだけは不完全燃焼の様子だった。パトリシアを宿に送って四人は夜の街に繰り出した。逆ナンやホストのスカウトを回避しつつ、アケルナルの情報を探ったが、収穫はゼロ。逃げるならアンタレスだろうから、元々期待はしていなかったので、まぁ当然の結果だろう。


 パトリシアは、のんびり入浴タイム。徐々に慣れさせて行ったウォーレンは一緒の入浴が出来るようになっていたので、2人?1人と1匹で湯に浸かった。

浮力を感じ無くなったが膨らみのせいか、抱きしめても特別な反応はしなくなっていた。

「ウォーレン?大きくなった?いや、私が縮んだのかな?まぁ、これはこれで楽しいかな?」

呑気に呟いてベッドに潜り込んだ。

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