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魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!  作者: グレープヒヤシンス
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ベガ

 昼は馬車、夜は宿で順調に進んで、ベガファミリーが仕切るエリアに入った。    

 ベガは、魔族の第3勢力で、アルタイルとは友好関係にある。好戦的なアンタレスを嫌い、元々は敵の敵って仲ではあるが、かなり長い付き合いで、魔族界のパワーバランスには欠かせないパートナーになっている。

 アンタレスがどちらかと事を構えれば、背後を取られる構図が成り立っている為、表立っての抗争は殆ど起きていない。その結果、日和見の小規模の魔族が、実質的にアルタイル・ベガ連合の傘下の様な立ち位置なので、アンタレスの牽制に役立っていた。

 ジョナサンは、ベガを始めとした、アルタイルでもアンタレスでもないエリアに潜伏していると見立てている。アルタイルなら、行動が筒抜けだろうし、アンタレスでは、住み辛いだろう。魔法を見られたらアルタイルの系統だってハッキリしてしまう。封印されたままなら、その封印でも、アルタイルの者と認識されるはずだ。

「まだ陽が高いから、ギルド覗いて見ようよ!」

パトリシアは調査する気満々。

「それも悪く無いが、今夜は満月だぞ。支度はいいのか?」

ショーンがカレンダーを見直しながら、心配そうに言った。

「うん、平気よ!魔法陣を描いたシーツが有るからね、宿のベッドに敷くだけだから。それにね、なんとなくだけど、理性を保てる様な気がするの。ちょっと頑張って見ようと思う。いよいよ暴れちゃったら助けてよね。」

「助けるっつうてもな、パット嫌なんちゃう?ワンちゃんの前で。」

ケヴィンはパトリシアとウォーレンの頭を撫でてニッコリ。取り敢えずギルドに行って見る事にした。

 これと言った情報は無く、鉱石採取の依頼を受けて来た。他の冒険者から何か聞き出せるかも知れないので、少し様子を見る事にした。


 パトリシアは宿に入り、魔法陣のシーツをセット、変身を解いて、銀貨に魔力を込める、錬金魔法だが、金にするには魔力が全然足りないので、無駄に魔力を消費するだけになってしまう。夜中、理性を失い、暴れた時の被害を少なくする対策だった。

 既に陽は沈んでいて、体調に変化は感じていたが、理性は保てていた。四天王を自分の部屋に返して、ウォーレンとベッドに入った。しばらく静かに時が流れ、日付が変わった頃、柔らかな快感が全身を包み、更なる刺激が欲しくなって来た。このまま我慢すれば朝を迎え、理性を持続出来るのだろうか?パトリシアは葛藤した。心拍数が上がり、呼吸が乱れてきた事を自覚した時、鮮やかな快感が身体を突き抜けた。

 快感の源は人族に戻ったウォーレンだった。赤い首輪はたくましいその首にしっかり対応していた。快感は繰り返しパトリシアを突き抜け、キスをねだれば叶ったが、ウォーレンには意識は無いようだった。朝まで揺れ続け、気付くと陽は昇っていて、仔犬のウォーレンは柔らかな肉塊に埋もれ幸せそうに眠っていた。

 目を覚ましたウォーレンは、慌ててベッドから飛び出て、ソファーで背中を向けていた。

「ねぇウォーレン、『何で浴衣ぬいでるんだ?』って思ってない?」

『自分で脱がせたのにね!』って言いたそうなパトリシアはその言葉を飲み込んだ。抱き上げてキスをしようとしたが、顔を背けられてしまった。


 朝食を誘いに来たケヴィンがやって来た、 

「ちゃんと人族の姿やったで!」

パトリシアは、ウォーレンが変化していたのか、自分の妄想なのかが気になっていたので、夜中に様子を見に来て貰うように頼んでいた。

「本人希望っつうても、めっちゃ罪悪感やったで。まあ、謎は解けて一件落着やから、安心やな。」

理解はしていたけれど、改めて言葉で聞くと、パトリシアの耳は真っ赤になっていた。

 ウォーレンのご飯を用意してから食堂に降りた。ペット同伴には緩い所が多かったが、この宿の食堂はNGでウォーレンは部屋でお留守番。

「今朝は、なんか嬉しそうだね!」

ジョージが更に嬉しそうに声を掛けた。

「うん、朝まで意識が有ったって言うか、理性を保っていられたの!」

「ワンちゃん大活躍?」

「あ、うん、、、まぁ。」

パトリシアの耳がまた赤くなった。


 日中は、昨日受けてきたギルドの依頼でダンジョン攻略。鉱石の採取で夕方には戻れる筈。量が多いので、他の冒険者10人と共同で仕事をする。道中、世間ばなしをしながら、街の様子を聞くのが目的だ。具体的にデニスに付いて聞くことは出来ないので、それ程の情報は期待して居なかったとはいうものの、残念ながら想定通りにほぼ収穫ゼロ。

 依頼の方は、四人が魔物を薙ぎ払い、他の10人は採取と運搬に専念、通常の倍くらいを集められたらしい。情報は街の様子位だったのとは大違い。

 夜は、ショーンとジョージ、ジョナサンとケヴィンのペアで盛り場に繰り出した。ダンジョンで聞いた情報で、魔族も呑みに来る店があり、身内ばなしを大声で騒いで居るそうだ。パトリシアは、絡まれるのが目に見えているので、ウォーレンと治安の良さそうなレストランでディナー。

 パスタとサラダ、ハウスワインをグラスで頼んだ。ややボリューム控えめだが、パトリシアには丁度良く、味も気に入っていた。コスパも良く、ご機嫌で店を出ると、見るからに『ナンパします』って雰囲気のお兄さんが2人で待っていた。無視して通り過ぎようとしたが通せんぼ。

「呑みに行こうよ、奢るからさ!」

裕福な貴族のご子息の様だ。断ってもしつこいので、

「じゃあ、私の行きたいお店でいいかしら?」

「「是非!」」

と言うので、ギルドの酒場に誘った。

 煙草の煙で霧が掛かったような酒場は、一旦酔い潰れて、復活した2回戦の酔っ払いが殆どで、昼間一緒に鉱石取りに行ったオジサン達が、パトリシアを見つけて、

「今日はいい稼ぎだったから、思いっきり呑んでるぞ!兄ちゃん達も来いよ!」

ナンパのお兄さんを引き渡して、さっさと退却した。

 

 宿に帰って、ウォーレンとお喋り。人族のウォーレン殿下が変身しているのは間違い無いが、人族の知識をそのまま継承して居ない様に思える。言葉が通じている様な反応を示す事もあるが、普段はお利口さんな仔犬って感じ。パトリシアもすっかりペットとして付き合っていた。他愛のない話題を振って反応を待つが、毎回答えてくれる訳でも無かった。

「一緒にお風呂入る?」

ウォーレンはキッパリ首を振った。

「また、フラレちゃったね!」

先にウォーレンのシャンプーをしてから自分もシャワーを浴びてベッドで寛いだ。暫くすると、両隣の部屋に気配がしたので、4人が帰って来た様だった。パトリシアの部屋に灯りが無かったので、そのまま眠りいついた様だった。

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