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始まりの始まり

「おい、嘘だろ?」


「起きろよ、アイツはどうするんだよ!」


「お前……な…ら………できる…」


「ここで置き去りにしないでくれ!」


「だ…じょうぶ……また……会え…」

















 この日本には武力が無かった。法律や国のあり方、他国への融資や技術提供など、全て戦勝国によって決められていたからだ。だが今から8年前の2026年、戦勝国が謎の消滅。一説には、地獄の悪魔共が焼き払ったとされている。だが俺は、いや俺達世界中の人間が、その事件の全貌を知らない。日本の政治家たちは、本気で悪魔対策を始めた。真偽が分からない噂程度の話を鵜呑みにし、4年前の2030年に政府悪魔対策部隊、通称SATSを結成。16歳から40歳までの男子が駆り出された。当時17歳だった俺も、当然SATSに強制入隊。父親も母親もいなかったが、たった1人の家族の妹を残して家をあとにした。

 そして現在、2034年5月29日16時34分、三等兵の俺は一等兵の軍司さんに会議室に来るようにと呼ばれた。

「君が閃君かな?」

「はい、三等兵の閃です。ご要件は何でしょうか。」

「横浜あたりで不自然な穴が見つかったんだ。調査に行ってくれないか?」

「分かりました。」

「支度が出来たら言ってくれ。私は外で待っている。」

 そう言うと、軍司さんは会議室から出ていった。俺は自分の部屋に戻り支度をする。

 動きやすい格好に着替え、政府から支給された軍用の剣を腰に回し、拳銃を太もものホルスターに入れる。ライトや水筒を装備し、SATS隊員の目印である黒いマフラーをする。

 準備を終え外に出ると、軍司さんの隣にもう1人いた。長く薄い金髪に鋭い目、腰には支給された剣とは少し違う獲物。明らかに俺より強そうだ。

「お待たせしました。軍司さん、そちらは?」

「こいつもお前と一緒に行くやつだ。互いに自己紹介を済ませておけ。」

「こんにちは、閃と言います。今日はよろしくお願いします。」

「光だ。」

 光さんは怖い顔をしていた。話しかけて欲しくなさそうな。まぁこのミッションしか関わらないと思えば気が楽だ。

「よし、じゃあ行ってこい。」

「「了解。」」



 道中、光さんとはほとんど会話をしなかった。話を振っても、帰ってくるのは「ああ」か「そうだ」しかなかった。無視されないだけマシだが、これはこれでやりにくいな。

「着いたぞ。」

 現場付近に止まった軍事車両から出た俺たちは、穴のある場所まで歩いた。もちろん会話無しで。

「思ったより小さいですね。でも深そう。」

「深いが埋めれば何とかなりそうだな。」

 その時、急に体が重く感じた。立っているのがしんどい程に。

「閃、後ろだ。」

 光さんに言われて振り返ると、目を疑う光景があった。

 大きな機械のような顔に、太くて指の形が歪な片腕、下に行くほど細くなっていくチューブの連なった体、足は無く、その場に浮いているように見えた。今まで見た事がないソイツに、何をどうすればいいか分からず、俺と光さんは佇んでいた。

「☆♪¥○$%#*△」

 ソイツから出たであろう大きな音にに耳を塞ぐが、意識が朦朧としてきた。光さんの方を見ると既にぶっ倒れていて、近寄ろうとするも、体が重くてうまく動けない。

「☆♡¥$○×%♪□!!!!!」

 耐えきれなくなり、俺はその場に倒れ込んだ。俺が最後に見たのは、得体の知れない"何か"が俺を穴に入れ、差し込んでいた光が消えていったところだった。




「人間、貴様らに使命を科す。この地の六の神を討ち、その力を宿せ。ただし、13日間しか時間は与えん。それ以上経ったなら、貴様らは灰になるだろう。」


「来るべき時に我は現れる。死にたくないなら戦え!!!」



「おい、起きろ。」

 目が覚めると、見慣れない場所にいた。日本の住宅街やビルの並ぶ風景では無く、見たことの無い獣が駆け回っている草原だった。周りを見渡すと、遠くには六本の大きな塔が草原を中心に、円を描くように並んでいた。

「ここはどこですか?」

「俺にも分からん。だが、確実に日本ではないな。」

「寝ている間、声を聞きました。神をどうたら、13日間がどうたらみたいな。」

「お前もか。どうやら、さっきのバケモンは俺たちをオモチャにしたいらしい。」

「これからどうします?」

「ヤツの話が本当なら、13日で俺達は死ぬ。その前に六の神を殺すしかない。」

 ということは、あの六本の塔に神とやらがいるんだろう。

「とりあえず塔に向かってみましょう。そうすれば何かわかるかもしれないですね。」

「……。」

「どうしましたか?」

「敬語はやめてくれないか?」

「わ、わかった。光……」

「『さん』もいらない。」

「わかったよ、光。」

 すごい怖いと思ってたし、今でも少し怖いけど、もう少しで打ち解けられる気がする。

「それじゃ、まずは一本目目指すか。」

「了解。」


 しばらく草の上を歩いていると、1匹の獣がこちらに向かってきた。

「構えろ。」

 獣は光に、歯を剥き出しにして噛み付いてくる。が、光が拳銃を取り出し、獣の口の中に二発弾丸を撃ち込む。放たれた弾丸は、獣の歯をへし折り口に侵入。そのまま奥へ進み肉を押しのけ、獣の後頭部から血液と思われる液体と共に出てくる。獣は動きを一瞬止めたが、まだ襲いかかってくる。続けて光が、胴に四発弾丸を放つ。弾は胴にめり込み内側に入っていくが、貫通はしなかった。

「なんだコイツは。全然死なないぞ。」

 光は銃の効果が薄いと分かると、腰に携えていた剣を抜く。

 ボアアァァァァァァ━━━━!!!

 獣は咆哮し、またもやこちらに向かってくる。光は剣で応戦するが、切れ込みを入れるのが精一杯のようで致命打にはならない。

 自分も参戦しようと、ホルスターに入った拳銃を抜き構えると気づく。自分の右手の甲が、グローブ越しに光っているのを。

 グローブを外し確認すると、XⅢというローマ数字と『雷』という文字。訳が分からず、一旦放っておき銃を構える。獣に照準を合わせ、弾丸を放つ。

 すると、光が放った弾丸とは違い、紅い電のようなものが弾丸の後を追っていった。獣に着弾した雷は、いとも容易く獣の体を貫いた。

 右手が軽く痺れている。弾丸に雷を纏わせるだけじゃなく、剣にも、はたまた雷自体を撃てるのではないか。昔やったRPGの魔法のように。

 俺は好奇心に勝てず、撃てるかどうか分からない魔法を撃とうとした刹那、獣が凍りつく。

「なるほど、魔法ってやつかな?」

 光が獣に手をかざしていた。俺が撃ったアレで気づいたのか?それとも、元々知っていたのか?いいや、後者はありえない。光はここに来て驚いていた。知っているなら、わざわざ演技する必要なんてない。

「光、戦闘センスいいね。」

「ああ。」


 魔法の存在に気づいた俺たちは、各々の魔法を色々試した。どうやら、俺は雷、光は氷の魔法が使えるらしい。この場所で少しでも有利に戦うためのギフトだと思う。ありがたく使わせてもらうことにした。

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