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第79話 キミへのプレゼント⑦

「なるほど。ふーみんは近所の女の子へ日頃の感謝を込めたプレゼントを贈りたかったけど、女の子がどういうものを喜ぶかわからないから、女子力の高いキョミに協力を求めたと、そういうわけだな?」

「そうそう、そういうことなんだよ。だからやましいことなんてこれっぽっちもないんだって」

 プレゼントを渡したときの驚きが半減してしまうため、まさか愛音(あいね)本人に「キミへのプレゼントのアドバイスを貰ってたんだ」とは言えず、詞幸(ふみゆき)は嘘をついたのである。

「ふーん、そうかー。そういうもんかー」

 しかし、なおも納得していない様子で、愛音はフォークでチキンフリカッセを突き刺した。

 いま5人は7階のレストランで遅めの昼食をとっていた。空腹もさることながら、店の前で大声で言い合うわけにもいかず、興奮冷めやらぬ愛音を落ち着かせる必要があったというのもある。

 ボックス席の片側に詞幸と季詠(きよみ)が並び、向かいには詩乃(しの)、愛音、御言(みこと)の3人が座っていた。

「じゃあキョミはなんでアタシに嘘ついたんだよ。ふーみんと出かけるなら正直にそう言えばいいじゃないか」

「だって正直に言っても愛音は反対するでしょ? 男と二人っきりで出かけるなー、って」

 詞幸の嘘と齟齬が生まれないよう、慎重に反論する。

「そりゃそうだろ。だって相手はふーみんだぞ? こういうなよなよした感じの顔してる奴が一番危ないんだよ。女はチャラついてる男には警戒するが、人畜無害そうな男だと油断してガードが下がる。そこをガバッと襲われちゃうんだぞ?」

「俺そんなことしないよ! 自分で言うのもなんだけど、女子に対しては硬派だよ!」

「そうでしょうか? どちらかと言えば、わたくしには女たらしに見えますが」

 御言の言葉に詩乃も同調した。

「あ~、わかるかもぉ~。ガツガツはしてないけど、やることはちゃっかりやってそう。モチ悪い意味で」

「容姿による差別がつらい!」

 詞幸は嘆いた。だが、愛音はそれを意に介さずに話を続けた。

「キョミたちがランジェリーショップに逃げたのは偶然だったって話してたよな?」

「そうなの。愛音に見つかったら嘘がバレると思って私も慌てちゃってて、近くにあったからつい……」

「もう一度確認するが、目的があって入ったんじゃないんだよな?」

「それはさっきから言ってるじゃない。私たちはそういう関係じゃなくて――」

「いや、そうじゃない。アタシはもうそのことは疑ってないんだよ。ふーみんの言葉は信じられないが、キョミの言うことなら信じる。キョミはアタシに嘘つかないからな」

「う、うん。ありがとう……」

 皮肉たっぷりの信頼が胸に痛かった。

「アタシが疑ってるのは、その近所の女の子とやらに下着をプレゼントしようなんて思ってないよなってことだ」

「思うわけないじゃない。男子が女子に下着をプレゼントなんて……ね、月見里(やまんし)くん?」

「そ、そうかっ、その手があったか!」

「月見里くん!?」

 詞幸の頭の中に電撃のごときひらめきが生まれた。

 健康的な男子高校生が女性の下着姿を想像するのは自然なことであり、想い人がどんな下着を身に着けているのか知りたいと思うのもこれまた自然なことである。しかし、その情報を得るのはハードルが高いのもまた事実。

 だが、こちらからプレゼントしてしまえばどうだろうか。想いを寄せる彼女が服を脱いだとき現れるのがどんな姿か、より鮮明に想像できるようになるのではないか。

 つまりこうだ。プレゼントを貰った側はそれが嬉しかったことを表すために、ちゃんと使用していることを報告するだろう。「今日はお前のくれた下着を着けてきたんだ。キャッ(*ノωノ)」となる! からの、「折角だから見てみるか? チラッ(*’ω`*)」となる可能性も秘めているのだ!

(凄い! 下着を贈るだけでそんなとこまでいけるなんて……完璧なロジックだ!!)

「ふーみん、お前いまエロいこと考えてるだろ」

「ええっ? そんなことないよ!? 俺エロいことなんて考えたことないよ!」

 見え透いた嘘に、ジト目で愛音が呆れていた。

「『その手があったか』なんて言っておいてよく誤魔化せると思ったな。女に下着贈るなんて変態以外のなにものでもないぞ」

「うっわアンタ、んなこと考えてたん? 単純に死ね」「やっぱりきみはストーカー気質が抜けないんだね」「知能と品性がお猿さん並です」

 皆に罵られ、涙目になってしまう詞幸だった。

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