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第74話 キミへのプレゼント②

 季詠(きよみ)に連れられてやって来たのは、地下3階、地上11階から成る複合型商業施設だった。

 様々なテナントやレストランのほか、ギャラリーやミュージカル劇場まである人気スポットだ。今日は休日ということもあって大いに賑わっており、特に若い女性客が多い。

 詞幸(ふみゆき)たちはその1階、化粧品やファッション雑貨がメインのフロアに来ていた。

「女子高生の1番の関心事はオシャレで可愛くなること。愛音(あいね)はいつも色気より食い気って感じだけど、ああ見えて人並には見た目に気を使ってるんだよ? だからプレゼントも、やっぱりその方面がいいと思うの」

 季詠の説明に詞幸は首を傾げた。

「オシャレっていうなら俺が探したあのネックレスはダメなの?」

「う~ん食い下がるね……。私ね、ああいうアクセサリーはまだ愛音には早いと思うの」

「それは愛音さんがまだロリロリだから? でも俺、愛音さんが背伸びしたオシャレしてたらそれはそれで凄く可愛いと思うけど」

「……月見里(やまなし)くんの趣味は置いておくとして。問題は愛音の体型とか見た目じゃなくて、月見里くんとの関係性。高価なアクセサリーは恋人から貰うなら嬉しいけど、男友達から貰っても困っちゃうと思う。申し訳ないというか、やっぱり重く感じちゃうよ。それよりはほら、こういう――」

 彼女は木目調の棚が並ぶショップに足を踏み入れた。

「普段使いができる、スキンケア用品とかメイクコスメがいいんじゃないかな? 女子が誕生日に貰って嬉しいものって言ったらこのあたりは定番だもの」

 そこはオーガニックコスメを取り扱う専門店だった。店内には若い女性客しかおらず、詞幸は一瞬たじろいでしまう。

「うわあ、こんな場違いなところ一人じゃ絶対入れないよ……」

 その反応が面白かったのか、季詠はくすくす笑いながら手招きした。

「今日は私がいるから大丈夫だよ。ね、一緒に選ぼう?」

 詞幸は季詠に促されて店内を探索する。しかし、彼にはそこで売られている商品がどんな用途で使われ、どんな価値があり、ほかとどう違うのかまるでわからなかった。

「はあ~、女子の世界は俺には難しいね。化粧品もだけど、考え方も。帯刀(たてわき)さんからこっぴどく言われるまで、ネックレスをプレゼントするのが重いなんて考えもしなかったし」

「うっ……ごめんなさい。私もちょっと言い過ぎたかなって反省してる……」

 俯きながらの謝罪に、詞幸は首を振った。

「ううん、謝らないでよ。まあ俺が想われるとしたら、個人的には少し束縛されるくらい重い方が嬉しいけど」

「へー、意外。普通なら自由な方がいいと思うけど、そういう人もいるんだぁ」

「女の人にも、少し強引に引っ張ってくれる方が男らしくていいって言う人がいるでしょ? あんな感じだよ。引っ張るのはおんなじ。道を切り開くように前に引っ張るか、逃げられないように後ろに引っ張るかの違いだけ。俺は後ろに引っ張るのも愛のカタチの一つだと思うよ?」

「ふーん、そういうのがいいんだ……」

 どう反応していいのか、季詠はあまり腑に落ちてないような表情になった。

「だって束縛したいくらい好きってことでしょ? その方が想いの強さが伝わってこない?」

「う~ん……でも普段から、あれしちゃだめ、これしちゃだめって言われるんだよ? そうやって行動を縛られるのもいいの?」

「構わないよ」

 詞幸は強く、信念を込めて言った。

「むしろ好きな女の子にならきつくギチギチに縛られたいね!」

「表現が悪い!」

 季詠もつられて大声を出してしまい、慌てて口に手を当てた。

 しかしもう遅い。

 近くにいた女子高生と思しき二人組が「うっわ、あの子カレシがドMとかかわいそー」「あたしだったらマジ無理なんだけど」と話していたのだ。

「~~~~っ!? 行こう月見里くんっ? もっと色々見て回らないと!」

 早く、一刻も早くこの場から立ち去りたい。

「え、でもまだこの店ちゃんと見てないよっ?」

「いいから! 私に任せて黙って付いてきて!」

 季詠は詞幸の手を掴んで、強引に引っ張っていくのだった。

(え、なにこれ。前に引っ張られるのもいいかもっ?)

 詞幸にも、女心が少しわかった。

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