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第47話 顧問のお仕事④

 紗百合(さゆり)の巨乳鑑賞会が終わったころ、詩乃(しの)が「あ!」となにかに気づいた。その顔には薄い笑みが浮かんでいる。

「そういえばさぁ、ユリせんせーも部室掃除サボったって話してなかったっけ~?」

 詩乃の言わんとしているところ察した御言(みこと)は口角を上げる。

「そうですっ。うふふ、よくぞ言ってくださいました。実はですね――」

 おもむろに立ち上がると、部屋の隅に置かれた段ボールから大きな紙袋を取り出した。

「ちゃらららっちゃら~。コ~ス~プ~レ~い~しょ~う~」

 ニコニコしながら猫型ロボットのモノマネを披露した。

 詞幸(ふみゆき)は首を傾げる。

「コスプレ衣装? そんなものなにに使うの?」

「もちろん、ユリちゃんが着るのですよ?」

「え! なんでっ!?」

「なんでと言われても、部室のお掃除から逃げたからに決まっているじゃないですか」

「だってあの日は職員会議が――」

「問答無用です。連絡の一つもしないで言い訳が通用すると思わないでくださいね。それに詩乃ちゃんも既に罰として折檻を受けたのです。それなのに、立場のある者だけがなんの制裁も受けないというのは筋が通りませんよね?」

「そうだそうだぁ!」

 詩乃が拳を突き上げて楽しそうに煽る。

「ご安心ください。このコスプレ衣装はオーダーメイド。製作者にはユリちゃんの身長、体重、3サイズをお伝えしたうえで作っていただきました。ピッタリのはずですよ?」

「どうやって調べたの!?」

「……………………」

「なぜ無言!?」

 紗百合は疑問を口にするが詞幸たちは聞こえないフリをした。気にしたら負け。そういうことも世の中にはあると彼らは知っているのだ。

 かくして――

 紗百合とその着替えを手伝うという御言を残し、一同は部室の外で待機することとなった。

 中から「これ見えちゃう!」とか「えっ、ブラ外すの!?」といった声が聞こえてくるたび、詞幸は縮こまり、愛音(あいね)は興奮の度合いを強めていった。

「どうぞお待たせしました。心ゆくまでご堪能ください」

 そう御言に促されて入室すると、目に飛び込んできたのは愛らしくも扇情的な魔法使いの姿だった。

 短いながらも杖を持ち、先の尖った帽子を被っているので辛うじて魔法使いのコスプレだとわかるが、その姿はあまりにも大胆だ。

 肩から胸元にかけては布地がなく、深い谷間が露出してしまっている。また、短いスカートは前側部分が開いていて、上の服から続く前垂れが心許なく隠すのみだ。白く肉付きのいい太ももが(あらわ)になっているのはもちろん、下手に動けば中身まで見えてしまう。

 そんな危うい衣装を身に纏い、紗百合は羞恥に身悶えしながら半泣きになっていた。

「見ないでぇーっ!」

 心からの哀願だったが、生徒たちはその艶姿に感嘆の声を上げる。

「おほ、すっげー! ブラック・マジシャン・ガールだ!」「やっば! エッロ!!」「ほう、随分本格的だな。生地に安っぽさがない」「俺には刺激が強すぎるよお!」

 口々に感想を言いながら紗百合を囲む。愛音は興奮を抑えきれないのか、ふんふんと鼻息荒く紗百合の周りを忙しなく跳ねていた。

「うおーっ、どっから見てもエロい! おっぱいなんて半分近く出ちゃってるじゃないか! どれどれ下は……」

「きゃっ! ちょっと、めくらないで!」

「お客様、キャストへのお触りはご遠慮ください」

 腰を落としてスカートの裾に触れた愛音に御言が待ったをかける。

 しかし昂りの矛先を失った愛音は不満げに唇を尖らせた。

「えー! カラダには触ってないのにダメなのーっ? じゃあ写真、いや動画で撮る!」

「あっ、ウチも撮りたい! こんなエロかわいいユリせんせー、ウチらだけで見るなんてもったいないもん!」

「申し訳ありませんが、当店では撮影行為も禁止しております。彼女の痴態は、しっかりと目に焼き付けてくださいね、うふふふっ」

「痴態って言わないでよ!」

「ちぇー、仕方ない。脳内エロフォルダに保存するか」「めっちゃおっぱい揺れてる! いいなぁ~ウチもあんくらいおっきかったらなぁ」「そもそも上ノ宮(かみのみや)はなんの店のつもりなんだ」「見てるこっちまで恥ずかしくなるけど、俺さっきの教訓を活かしてじっくり鑑賞します!」

 上を隠せばいいのか、下を隠せばいいのか。全身を視線で舐め回され、紗百合は身を捩った。

「もうサボったりしないからぁ! お願い、許してぇ~っ!」

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