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第3話 動揺と童謡

 月見里(やまなし)詞幸(ふみゆき)は学食派である、のだが――

 ――お弁当のおかずの交換がしたい。

 自身の好意を誤魔化すためにした無理のある言い訳のため、昼休みになった瞬間にダッシュ。学校横のコンビニで弁当を購入し、自席に帰り着いたころには肩で息をしていた。

「はぁー、はぁー、おま……たせ…………」

「そうまでしておかずの交換がしたかったのか。引くわー。マジ引くわー」

 とは詞幸の想い人である小鳥遊愛音(たかなしあいね)の言だ。

「女子のお弁当欲しさに全力疾走とは並の変態じゃないなー。いやー、キモいキモい」

 その鈍器のような言葉の暴力に少年は傷つきつつも、「そ、そんなことよりも早く食べよう?」と気を取り直して切り出した。涙目で。

「いや、少し待ってくれ。アタシの友達がまだ――お、来た来た。遅いぞー」

 手を振るその視線の先からやって来たのは、品行方正を絵に描いたような少女。

 腰まで伸びる黒髪は鴉の濡れ羽のように艶やかで、清流のごとく淀みがない。背をぴんと伸ばして歩く姿は可憐。その姿勢の良さもあるのだろうか、女性らしい曲線を保ちつつもスラリとした美しいスタイルを誇っていた。

「ごめんね、職員室までプリント運んでたから……あれ? 月見里くんも一緒に食べるんだ?」

 黒髪の少女――帯刀(たてわき)季詠(きよみ)は、隣の空席から椅子を拝借しつつ小首を傾げた。

「そうなんだよ。こいつがさー、おかずの交換がしたいとか抜かしやがって――」

「はいはい愛音。失礼な口の利き方しないの。ごめんね月見里くん。こんなぶっきらぼうな喋り方だけど、そんなに悪い子じゃないから」

「ああ、うん。俺はまったく気にしないから大丈夫だよ(むしろこの喋り方が萌えるんだよね)。それよりもしかして俺、お邪魔だったかな?(二人きりで食べたかったけど仕方ないか)」

「そんなことないよ。ご飯は大勢で食べた方が美味しいから」

 微笑み答える季詠に詞幸はホッと胸を撫で下ろす。これまであまり会話をしたことがなかったのでどういう反応が返ってくるか心配だったのだが、どうやら杞憂に終わったようだ。

「それじゃあ食べようか、小鳥遊さ――」

 詞幸が言いかけた言葉は、愛音の鋭い眼光で縫い止められてしまう。

「おいお前。いい加減あたしのことを苗字で呼ぶな。あたしを苗字で呼ぶのは敵だけだ」

「え? ご、ごめんなさい……」

 訳もわからずとりあえず反射的に謝る詞幸。季詠は嘆息して愛音を(たしな)める。

「もう愛音。漫画のセリフを急に真似するのやめなさい。いきなり言われて月見里くんが困ってるじゃない」

「漫画じゃなくて小説だよ。いやー、こういう決め台詞言ってみたかったんだよなー」

 当の愛音に悪びれた様子はない。

「よし、それじゃあお前、アタシの名前を言ってみろ!」

「なな名前で呼ぶのっ?」

 そういう関係になることを妄想してはいたが、実際に人前で呼ぶとなると恥ずかしいのだろう。

「あ……あ……」

 詞幸は顔を真っ赤にして口をパクパク動かしていた。

「あ、あい……あい……あい、あい――」

「おさぁーるさぁーんだよぉー――ってアタシはサルじゃね――ッ!」

「ヘギャッ!」

 詞幸は理不尽なるノリツッコミによる拳を顎に喰らった。

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