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第32話 素の自分

「それにしても――にひひっ、物は言いようだなー、しののん」

 意地の悪い笑みを浮かべながら愛音あいね詩乃しのの肩に手を置いた。

「『ここにいるとき、ウチは素の自分でいられんの』とか『自分が可愛いか気にしないで楽に笑えんの』とか、よく恥ずかしげもなく言えたもんだなー」

 この馬鹿にした口ぶりに詩乃はカチンと来たようだ。肩の手を振り払い、語気を荒らげる。

「はぁっ? なにその言い方ムカつくんだけど。別に間違ったこと言ってなくない? アンタみたいなお子ちゃまにはわかんないかも知んないけどねぇ、高校生の人間関係って複雑なの。誰が誰を好きとか、誰が誰にフラれたとか、そういうとこ気にしながら変な空気になんないように、絡みづらいヤツとか思われないように、場の全体を盛り上げつつ自分自身もアピールしてくの。わかる?」

 ただならぬ雰囲気に詞幸ふみゆきはハラハラしながら季詠きよみを見たのだが、いつものことだ、と言わんばかりに肩を竦めるだけだった。

「これけっこー大変なんだかんね? 誰がどんな地雷持ってるかわかんないし、発言力のパワーバランスもあるし、めっちゃ神経使うの。でもウチがいるグループとここの部員じゃ接点なさそうだし、気軽に笑えるってのはマジ助かる――って、アンタのことも一応認めてやったつもりだったんだけど」

「ああ、アタシにもお前の言いたいことはわかるぞ。よーくわかる。女同士で気楽にやるのも楽しいもんな」

 愛音は腕組みをしてうんうんと頷き、「でもな」と続けた。

「気取った言い方をするなとアタシは言ってるんだ。お前の言う『素の自分』ってのはそれだけじゃないだろ?」

「それどういう――」

「スカートの中を団扇うちわであおいだりすることもだろ」

「っ!?」

 詩乃の顔が勢いよく詞幸に向く。その表情は鬼気迫るものがあった。

「してないから! そんなことしてないから!」

「この前、今日は蒸すわーって言いながら大股開いてパタパタしてたじゃないか」

「嘘! これぜんぶコイツの嘘! 真に受けちゃだめだかんね!」

「……帯刀さんそうなの?」

「ノーコメントで……」

 季詠の反応が、それが事実であることを雄弁に物語っていた。

「それだけじゃないぞ。そんときコイツ、おならしたクセに謝りも恥ずかしがりもせず大口開けて笑ってたんだぞー」

「あぁぁぁぁ~~~~~~~~ッ!! コイツ殺す! マジ殺す!!」

 愛音に掴みかかる詩乃。その怒りと羞恥で真っ赤になった顔と涙を浮かべる瞳があまりにも哀れで、詞幸は直視することができなかった。

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