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第2話 そのワケは

 ことあるごとに後ろをチラチラと振り向き、前を向いたかと思うとそわそわと身じろぎする。

 詞幸(ふみゆき)は明らかに授業に集中できていなかった。

(あー、小鳥遊たかなしさんとお話ししたいなー)

「おい……」

(なにかきっかけがあるといいんだけど、流石に授業中に話しかけるわけにもいかないしなー)

「おい、お前っ」

「でゅひぇえッ?」

 声に振り向くと間近に少女の顔があり、派手なリアクションを取る詞幸。

 間抜けな声を出してしまったのを取り繕うように平静を装う。

「あー、びっくりした……な、なに? 小鳥遊さん」

 授業中ということを考慮して小声で行った問いに返されたのは、半眼でのこんな言葉だった。

「お前、一体なんなんだよ?」

「なんなんだよって――あ、自己紹介がまだだったね。コホン。俺は月見里やまなし詞幸、9月10日生まれの乙女座で、座右の銘は――」

「あーもういいもういい。同じクラスなんだから名前なんて知ってるし、お前の座右の銘に興味ない」

「あ、はい、なんかスイマセン……」

「視界の中で無意味に蠢くな、鬱陶しい。お前のせいでこんな席になったのに、その図体のせいで余計見づらいだろうがバカヤロー」

(はぁ~、小鳥遊さんは毒舌吐く姿も可愛いな~)

「アタシは見てのとおりのロリロリ体型だから一番後ろからじゃ黒板が見づらいんだ。なのに、なんでアタシをこの席に引き止めたんだって聞いてるんだよ。全く意味がわからんぞ」

「え……? そ、それは……」

「それは?」

 詞幸は答えに窮してしまう。正直に理由を言うことはできないし、なんとか誤魔化さなければならない。

「お、お弁当のおかず交換が楽しそうだったから……」

「はぁ?」

 あからさまに馬鹿にした顔をされたが、詞幸はもう引き下がれなかった。

「小鳥遊さん、お昼に周りの女の子とおかずの交換するじゃない? あれ、すっごい楽しそうだなって思って、それで俺もやりたくなって――」

「わかった。わかったからもう喋るな。お前、女々しいヤツなんだな」

 その瞳の冷たさに、心がかじかむような思いをした詞幸だった。

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