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第285話 あの日

「しののんと喧嘩した日があったろ? ふーみんが学校休んだのはアタシのせいだ――ってなった日。タイミングとしては、あの日の夜に答えが出たんだ。放課後キョミに告白の返事のセッティングをしてもらって、そのあとしののんと電話で仲直りして、アタシは夜まで考えて――それで、なんて返事をするか決めたんだ。1度答えが出たら、もうそれ以外の選択肢なんて選ぶ気にはなれなかったよ。そう、あのときのアタシは浮かれてたんだ。ふーみんが彼氏になるんだって考えたら、くすぐったくて、叫びたくて、全然寝付けなかった」

 そのときのことを思い出すと苦笑が漏れる。まだ3か月ちょっとしか経ってないのに、まるで大昔のことのように思えた。

 それは、あの日を境にアタシの世界が変わってしまったことを意味している。

「アタシはさ、この身体みたいに心もロリロリだったんだよ。笑っちゃうよな。アタシはなんにもわかっちゃいなかった。知らなかったんだ。恋が、重くて、苦しくて、痛いもんだって。ふーみんがアタシの彼氏になっても、ミミとしののんは友達のままだって勝手に決めつけてたんだ。アイツらはお互いが恋のライバルだってわかっててもいがみ合わなかったし、根に持つようなタイプじゃないし、妬まれたり喧嘩になったりするんだろうけど、最終的には変わらずに友達のままだって。で、ふーみんと二人きりでデートするんだって妄想してた。ふーみんはきっと張り切るだろうけど張り切り過ぎて暴走するだろうし、アタシは男との初めてのデートでどういう服装がいいかってところからわかんないし、結局二人でキョミを頼るんだろうなって。キョミは『もう、仕方ないな~』とか言って、呆れながらアタシたちのデートにアドバイスをくれるんだ、とか、バカみたいに考えてたんだ。でも、現実はそんなに甘くなくて――」

 思い出すだけで胸が苦しくなる。

「告白の返事をしたあの日――興奮して寝付けなかったアタシは、予定時間より30分も早く学校に着いたんだ。それでな、聞いちゃったんだよ。キョミがふーみんに告ってるのを」

 リュックを置こうと教室に寄ったら聞こえてきた二人の話し声。息を殺して、聞き耳を立てて――聞かなければよかったって後悔した。

『私…………詞幸(ふみゆき)くんのことが好きなの……。ずっと前から…………』

『もう私の1番は愛音(あいね)じゃないの! 詞幸くんの気持ちを独り占めするあの子に嫉妬してる……!』

『もし二人が恋人になったら、もう私、愛音の親友じゃいられない…………』

 耳にこびり付いて離れない言葉。それをアタシが口にすると、ルカは驚きに目を見開いて絶句した。

「あのときのアタシもきっとそんな顔してたんだろうな。深い谷底に突き落とされたような気分だった………………。手足も震えて――とにかく怖かったんだよ。いつもアタシに優しくしてくれる幼馴染がそれだけじゃないって初めて知って、アタシが1番大切だと思ってても相手はそうじゃないんだってわかって、キョミが友達じゃなくなることを考えたら…………怖かった。アタシはキョミのことをなんもわかっちゃいなかった」

 ただ、甘えてただけだ。

「ミミとしののんに対しても、そうだ。アタシが勝手にアイツらの心を決めつけてるだけで、実際アタシがふーみんと付き合い始めたら、友達じゃなくなるかもしれないんだ。友達がある日突然友達じゃなくなる痛みを想像したら急に怖くなった。だから――」

 部室に着くまでの間に、用意していた答えと反対の答えを必死に考えた。

「アタシはふーみんを振った。男には興味ないって嘘をついて」

 元から叶わぬ恋だったのだと思えば、ふーみんの傷は浅くて済む。そう考えたからだ。

「元々興味本位で付き合おうとしてただけだ、大切なものを失ってまで付き合う必要はない、これにて一件落着、万事解決でめでたしめでたし。――あのときは本気でそう思ってたんだ」

「でも……違ったんだな」

 アタシは頷いた。そう、前置きが長くなってしまったが、本題はここからだ。

「キョミと友達のままでいたいのに、ふーみんを好きになっちゃったんだよ…………。仲よさそうなアイツらを見てると胸が苦しくて仕方ないんだ…………。なー、アタシはこれからどうすればいいと思う?」

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