第24話 策士(仮)
「まーなにはともあれアタシたちの仲間になるんだ。新入りだからって容赦しないでビシバシいくからな。覚悟しとけよ!」
「うん! これからよろしくね!」
向かいに座る愛音から小さな右手が差し出される。詞幸は制服で掌を拭い、自分の手を重ねた。
「私も改めて、よろしくね、月見里くん」
「男の子が入ってくれるのは大変喜ばしいです。これから友好を深めていきましょう」
季詠、御言ともそれぞれ握手を交わす。
(こんなに女子の手に触れたのは中学の林間学校でやったマイムマイム以来かもな)
男子の無骨な手とは全く異なる柔らかな肌の感触に、詞幸は心臓の高鳴りを抑えられなかった。
女子に慣れてないな、と己の経験不足自覚し、自嘲する。こんな調子で明日から大丈夫なのだろうか。
と、これからの部活動生活に思いを巡らせていたところで下校を促す放送が流れた。
「ではわたくしたちもそろそろ帰りましょうか。皆さん、明日も来てくださいね」
御言に頷き、帰り支度をする。
鞄を肩にかけたところで、季詠にポンと背中を叩かれた。
「ごめんね、御言の悪ふざけに巻き込んじゃって」
愛音と御言は先に廊下に出ており、夕焼けに染まる部室内には詞幸と季詠だけだ。
「いやいや、俺は気にしてないから気にしないで。それに巻き込まれたのはむしろ帯刀さんの方だし……」
詞幸の顔が赤くなる。
「思い出さなくていいから!」
季詠は照れ隠しに顔の前に鞄を掲げた。
「ご、ごめん……」
すっかり片付いた部屋を振り返って続ける。
「大変な思いはしたし、画像も消してもらってないからまたからかわれるかもしれないけどさ、女子ばっかの部活に入る勇気はなかったから、結果的には良かったのかなあって思ってたり」
「あー、そう言われると確かに勇気要るかも。その点だけは御言のおかげね」
「そうそう、強引に誘ってくれてむしろ感謝だよ!」
「ふふふふっ。まるで月見里くんのために話の流れを誘導してくれたみたい」
「ははは、まっさかあ」
「…………」
「…………」
「そんな、まさか」「まさか、ね……」
ドア越しに、御言がニヤリと嗤った気がした。