表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
239/301

第238話 愛音がいない部活 中編

「ナッシーいないから聞くけどさぁ、詞幸(ふみゆき)ってエロゲーとかするの?」

愛音(あいね)さんがいなくても聞かないでほしいやつ!」

 詩乃(しの)はニヤニヤしながら言う。

「や~、やっぱナッシーの前だとさぁ、10歳くらいのヒロインしか出てこないようなゲームばっかやってるって答えづらいかなーって」

「いい加減俺のそのロリコンイメージはどうにかならないのかな!?」

「なりませぇ~ん」

 何度となく否定しているのだが、想い人が愛音である以上覆ることはなさそうだ。

「まあ父さんのパソコン使ってコッソリやったことはあるけど、1本だけだねえ」

「え?」

 素直に答えると彼女はキョトンと目を丸くした。

「なに? 意外そうな顔して」

「いや、だっていつものアンタなら『そ、そんなものやったことなんて1度もないよ! そもそも仮にやったことがあっても言わないけどね! まったく、失礼しちゃうなあ、ブヒブヒ』とか言いそうじゃない?」

「なにそのブタっぽい語尾は!」

 悪意を濃縮したようなアテレコだった。

「…………勉強会のときに家探しされて俺の趣味は露呈しちゃってるんだから、ここで否定する方が嘘くさいでしょ」

「それもそっか。でも……ふぅ~ん。どんなエロゲーやったの? やっぱロリ系?」

「食い下がるなあ……。確かにそういうヒロインもいたけど、ああいうゲームのヒロインって体型的にグラマラスかロリか二極化されるからねえ。別に属性に特化したのじゃなくて、至って普通のゲームだよ?」

「うふふっ、ですよね。詞幸くんは大きなお胸が大好きですものねぇ」

「……まぁ否定はしないけど」

 と、御言(みこと)がチラリと視線を横に向けたので詞幸は釣られてしまう。

 そこには季詠(きよみ)がいた。

「なんでそこで私を見るの!? 月見里(やまなし)くんのエッチ!!」

「いやこれはっ、御言さんが!」

 上手いこと視線誘導されてしまっていた。

「でもそこがよくわかんなくてさぁ、そんなおっぱい星人の詞幸が、どーしてあんな《ザ・まな板》って感じのナッシーを好きになるのかねぇ」

「それは俺の恋がプラトニックなものだからだよ。色欲に惑わされない真実の愛ってやつさ」

 フッ、と前髪を掻き上げる。

「はいはい、本人に向かって言えもしないクセにそーゆー恥ずかしいセリフ使わないの」

「う゛っ……」

「てか生理が来てるか気になってる変態が言っても説得力なさすぎ」

「う゛う゛っ……」

 痛いところを突かれ返す言葉もない。

「あははっ……でも私も知りたいかな。どうして月見里くんが愛音のことを好きなったのか」

「わたくしも知りたいですっ」

 季詠と御言は揃って身を乗り出した。

「ええー、恥ずかしいから言いたくないんだけど……」

「話さないと例の写真をバラまきますよ? 季詠ちゃんのパンチラ姿が全校生徒に晒されるのです。それでもよいのですか?」

「それはダメぇーーー! お願い月見里くん! 私のために話して!」

「はぁ………………わかったよ」

 人質を取られてしまっては彼にはどうすることもできない。

 彼はスマホを取り出し、画面を操作してテーブルに置いた。

 やがて流れてきたのはピアノとヴァイオリンが織り成す優しい旋律。イギリスの作曲家エドワード・エルガーの楽曲『愛の挨拶』である。

「なにそれ……?」

 詩乃が訝し気に問う。

「え? 演出だけど。こうした方が盛り上がるでしょ?」

「……アンタ、ホントは話したかったんじゃないの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ