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第20話 上ノ宮御言の策略②

 人手が当初の予定より少ないので、役割を決めて効率よく掃除しなければ終わらない、と御言(みこと)が部長らしく指示を出すこととなった。

「それではまず愛音(あいね)ちゃん、掃除用具を取ってきてくれませんか? 踊り場にロッカーがありますので、箒とチリ取りを一つずつお願いします」

「えーー、なんでアタシがー。メンドクサー」

 顔面一杯に難色を示して抗議する。しかし御言も愛音の扱いには慣れたもので、

「それでは代わりに力仕事をお願いします。ロリロリな愛音ちゃんには辛いかもしれませんが、とっっっても重い荷物を――」

「はい。アタシが取りに行ってきます」

 言い終える前に脱兎のごとく部室から出ていった。

「では、季詠(きよみ)ちゃんは棚の上の段ボールを下ろしてください。詞幸(ふみゆき)くんはこの重そうな本の束を全部そちらに」

 御言の指示で二人が動く。

 季詠は壁に立て掛けられていたパイプ椅子を広げ、座面に乗った。ギシリと軋む音と同時に上体が揺れる。

「ねえ、俺が棚の上やった方が良くない?」

 詞幸は女子双方に向けて提案する。身長と腕の長さを考慮すれば、その方が楽で安全だろう。

「んん……背伸びすればぎりぎり届きそう、かも……」

「荷物自体は軽い物だと確認済みなので季詠ちゃんでも容易に――あー、ガムテープが転がってしまいましたー。詞幸くん取ってくださいー」

「うん、いいよ」

 本の束を一度下ろし、しゃがみ込んで転がってきた輪っかをキャッチした。

 と、そこで御言は何かに気づいたように指をさす。

「あれ? 左にあるのはなんですか、詞幸くん?」

「え、左――ぃぃっ?」

 驚愕の声が轟く。

 季詠は椅子の上で爪先立ちをして棚の上に手を伸ばしている。それは詞幸が顔を向けた先のことで、対して詞幸は屈んで低い体勢をとっていた。

 ちょうど、季詠の臀部を下から覗き込むようなかたちで。

「え――きゃあっ!」

 状況に気づいた季詠はスカートの裾を押さえて椅子から飛び降りた。

「ごごごごごごごめっ――!」

 詞幸は両手を振って後ずさる。しどろもどろになりながら謝るその顔は真っ赤に燃え上がっていた。

 同じく顔を火照らせた季詠が半目で睨む。

「…………見た?」

「見てない見てない見てない! いや、太ももは見ちゃったけどそれより上は見てないから!」

「ホントに?」

「ホントホント、マジマジ! 嘘じゃないって!」

「いえ、嘘ですね」

 冷静な声が必死の抗弁を否定した。

 御言だ。

「嘘じゃないよ! あの位置からじゃ見えないって!」

「うふふ、そんなその場しのぎの言葉で誤魔化せるなんて思わないことです。だって――」

 不敵な笑みを浮かべてスマホをかざす。

「この角度でパンツが見えないわけありません!」

 画面に表示された写真には、詞幸が季詠のスカートの中を覗く、まさにその瞬間が捉えられていた。

「なんで写真が!?」

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