第181話 夏の夜空に咲く花は⑭ テレビの知識
愛音たちとはぐれて3人減ったら、新た仲間が3人増えた。
仲間と言っても迷子だが。
「おねえちゃんたちもプリキュアすきななのー? マリアもねー、パパにおめんかってもらったのー」
「そうなんだぁ。可愛いよねぇ、プリキュア」
「いいなー! リカもママにかってもらおーっと!」
詞幸が腕に、詩乃が頭に斜にかぶっていたお面が功を奏したのか、女の子たちとはすぐに打ち解けることができた。
一人目の迷子・リカと二人目の迷子・マリアは詩乃がそれぞれ手を握って連れている。
彼女らを見守るように、詞幸は三人目の迷子・レナを肩車して後ろを歩く。
これはレナが甘えん坊というのもあるのだが、人混みのなかで三人もの幼女たちの手を引いて歩くのは危ない、またはぐれてしまう、ということでとられた措置だ。保護者から見つけてもらいやすいという狙いもある。
出会ったときこそ泣きじゃくっていたレナだが、いまはもうケロッとしていて、
「おにーちゃんとけっこんする~!」
詞幸に随分と懐き、彼の頭を抱きしめていた。
「あしたにはひろーえんしよ~?」
「はははっ。嬉しいけど、俺もレナちゃんもまだ結婚できる年齢じゃないよ」
「え~~~~~、なんさいならいいの~?」
「レナちゃんいま年中さんだっけ?」
「うん!」
「じゃあ、あと14年くらい経たないと無理かなあ」
「じゃあそれまでまってて! おとなになったらすぐけっこんする~!」
「うう~ん、そのころには俺も30歳手前だけどいいの?」
「いいの! かわりにおかねいっっっっっぱいためといてね!」
「はははっ、お金かあ。小さいのに考え方が現実的だなあ」
キャッキャと楽しそうにじゃれる詞幸とレナ。
そんな二人の会話に意識を割いていた詩乃は、手をぐいぐい引かれて我に返った。
「どうしたの? マリアちゃん」
「おねえちゃんなんでそんなにおこってるのー?」
「え、怒ってなんかないよ?」
「リカわかる! かれしとられちゃうからヤキモチしてるんだよ!」
「ち、違うよぉ~。あのお兄ちゃんは彼氏なんかじゃないから~……」
しかし当たらずといえども遠からず。幼稚園児に痛いところを突かれ、ぎこちない笑顔を浮かべるしかなかった。
「えっ、かれしじゃないのー? あんなにイチャイチャしてたのにー」
「イチャイチャ!? そんなことないと思うけどぉ……」
「してたよ! リカ見たもん! すっごくラブラブだった!」
「ほら、やっぱりー」
「うぅ~~~~………………」
幼いとはいえ女子は本能的に色恋に敏感なのか、二人の猛攻撃に詩乃もタジタジである。
「でもかれしじゃないならー、もしかしてあいじんー?」
「それもないからぁ……」
「あっ、リカわかっちゃった! からだだけのかんけーでしょ!」
「ふァっ!? どこで覚えたのそんな言葉!」
「ママがみてるかんこくのドラマ!」
「教育への悪影響がヤバすぎるぅ……」
眩暈がしそうだった。
「リカちゃんもマリアちゃんも勘違いしてるみたいだけどぉ、お姉ちゃんは別にあのお兄ちゃんのこと好きでもなんでもないからねぇ~。わかった?」
これ以上変な話にならないよう、言い含めるように大元から否定する。
するとマリアは大きな目をパチクリ、首を傾げさせた。
「好きでもないのにイチャイチャしてたのー? あ、じゃあつつもたせだー」
「難しい言葉知ってんね! 最近のコ怖い!」