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第158話 勉強会リベンジ③

「デリカシーのないお前にもっと忠告しておいてやろう」

「お願いします……」

 己の軽はずみな発言で女性から顰蹙を買う。

 指摘してもらったのにも関わらず性懲りもなく再びやらかしてしまった詞幸(ふみゆき)は小さくなって頭を下げた。

帯刀(たてわき)はあのとおり潔癖な性格だから性的な話題を振らないのは言わずもがなだ。加えて、これも何度か注意されたことがあるだろうが、視線には注意しておけ」

「視線ね。それは大丈夫」

 男としての性質上どうしても女性のセクシーな姿を目で追ってしまうのだが、話術部で女性に囲まれるなかで、その行為はマナー違反だと詞幸も学んでいた。

「ハプニングでチラ見えしたときは顔を背けてさりげなく見る、露出が多いファッションのときは堂々と見る、だよね?」

「どこが大丈夫なんだ!?」

 結局どっちの場合も見ているじゃないか、と織歌(おるか)は激しくツッコんだ。

「えっ、でも俺はこう教わったよ?」

「誰にだ!?」

「チラ見えは愛音(あいね)さんで露出ファッションは縫谷(ぬいや)さん」

「なぜその二人の言葉を鵜呑みにしたんだ! あいつらの感覚が一般的なものなわけないだろう!」

 頭を抱えたくなった。

「それはあいつらだから許されるだけだ! 小鳥遊(たかなし)は女だから同性の痴態をじっくり見ても厳しくは咎められないし、縫谷は肌を見せつけて男を誘惑するのに慣れているからそう言えたに過ぎん! 誰がやってもいいわけじゃないし、誰に対してやってもいいわけじゃないんだよ!」

「え、嘘…………やっぱりこの前のプールのとき、俺失敗しちゃったのかも……」

「……なにがあったんだ?」

 嫌な予感がした織歌だったが訊かないわけにもいかなかった。

「その…………あのときの帯刀さん凄かったじゃない?」

「ああ、そうだな」

 素直に首肯した。なにが、とは言わなくてもわかる。

「歩くたびに揺れるもんだからついつい目で追っちゃって――悪いとは思ってたからその都度目を逸らしてたんだけど、そしたら縫谷さんが『わざわざあんな大胆なビキニ選んだくらいだから、ききっぺも見られたがってるんじゃない?』って言って……」

「……それで?」

「それ以降ガン見してました」

「………………」

「そのせいか、あの日からなんだか微妙に避けられてるような気がします」

 かける言葉がなかった。

「………………まぁいい。帯刀の話はこれで終わりにして――上ノ宮(かみのみや)にも注意しろよ」

「ね、上ノ宮さんも大きいよね」

「そういう意味で言ったんじゃない…………あいつは男への耐性が極端に低いんだ。だからそこを注意しろと言いたかったんだが、なにか心当たりはないか?」

「うう~ん。まあ……なくはないかな」

 言われて詞幸はすぐさま思い出す。

 1学期最終日の前日に事故による壁ドンをして御言が慌てふためいていたことを。

 もっとも、御言から相談を受けた織歌もそのことを想定して言ったのだから思い出すのも当然ではあったが。

「じゃあ前回の勉強会のとき、お前が持ってきたコレクションの中から、上ノ宮がどんなものを選んで内容を確認していたかわかるか?」

「いや、そこまでは……漫画は読んでたと思うけど……」

「観察力が足りてないな。上ノ宮は露骨な性行為描写のない、一般の漫画しか読んでいないんだよ。18禁の本には触れてすらいない」

「え? なんで? だってこの前、兄嫁調教ものとかいって官能小説みたいなの読んでたじゃない。日頃の言動も――たまに際どいし」

「確かにな。だがそれは挿絵すらない文字だけの本だからだ。あいつも小鳥遊(たかなし)同様、そっち方面はてんでお子ちゃ――」

「好奇心は猫をも殺す」

 突如聞こえた芝居がかった声に二人は戦慄し振り向いた。

 声の主――御言(みこと)が台所の入り口に笑顔で立っていたのだ。

 目を細め、頬に手を添え、ニッコリと。

「イギリスの諺です。織歌ちゃん、意味はわかりますよね?」

「あ、ああ。知っている……」

 織歌の頬を冷や汗が伝う。

「うふふっ、ならこれ以上はなにも言いません。早くお部屋に戻りましょう? あまりにもお二人が遅いのでみんなが心配しています」

 そう言うと御言は踵を返し、幽霊のように音もなくスゥッ、と去っていくのだった。

「…………俺、いまの話は聞かなかったことにしてこれからもいつも通りに振舞うよ」

「ああ、そうしてくれ。頼む…………」

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