第152話 初めての共同作業③
『これはアタシだからこそ言えることだが、ロリコンはダメだぞ。アイツらは精神異常者だ。おっぱいがない女に欲情するなんて正気の沙汰とは思えないからな。ならロリ巨乳はどうかと言われると深い議論が必要になるが――』
「ちょ、ちょっと待ってっ。俺そういうつもりでこのキャラ作ったんじゃないから」
愛音が危ない方向へ話の舵を切ったので詞幸は慌てて止めに入った。
彼はロリコンではないが、だからといって想い人である愛音のロリロリな魅力を否定することは言いたくないのである。
「このキャラはその――さっきの男キャラの妹っていう脳内設定があるから」
そんな苦し紛れの言い訳でロリコン疑惑への言及を回避。
『む、そうか。ロールプレイを楽しむのはMMOの醍醐味だからなー。設定を固めるのはいいことだな』
「そうそう。それにしても、愛音さんのキャラは可愛いし随分スタイルがいいねえ」
すぐさま話を逸らしたのは追及を逃れるためだ。
『おっ、そうだろうそうだろう』
自慢気な愛音の操るアバターは標準的な身長の女性キャラである。
優しげで穏やかな目元。女性的な柔らかさを感じさせつつもスラリとした手足。輝くように白い肌と、鴉の濡れ羽のように艶やかな黒髪が織り成すコントラスト。そして、歩くたびに揺れるたわわな胸。
「なんだか既視感のある見た目だけど…………クラスメイトに似てるっていうか…………」
というより、モロに季詠であった。
まるで彼女の生き写しかのようにそっくりだ。
『凄いだろ! ヴァーチャル・キョミの完成度は!! いやー、ここまでエロ可愛く完璧に仕上げるのに20時間くらいは試行錯誤したかなー! これもキョミへの愛のなせる業だな!』
腰に手を当てて薄い胸を反らす愛音の姿が目に浮かぶ。
『あ、ちなみに実物と違う点が1か所だけあってな、どこだと思う?』
「え、えーと…………」
と口にするが、これは考えているフリだ。詞幸には既に分かっていた。ただ即答するのが憚られたのである。
間近で見た彼女の水着姿、そしてその部位の凄まじい破壊力を思い出す。
「うう~ん………………胸……かなあ……?」
『正解! このこのー! ふーみんのドスケベ巨乳大好き野郎め!!』
文言自体は罵倒だがその声には喜びが満ちていた。
『そう、このキョミはバストサイズを若干盛ってある。アイツのおっぱいはまだまだ成長中だからなー、将来このくらいになるだろうという期待を込めてみた!』
勝手に期待されて季詠もいい迷惑だろう。
『にひひ、本人が絶対しないようなエロい格好させるのがまた愉しいんだよなー! 見てくれよこのきわどい装備! レアドロップ何十回も粘った甲斐があるってもんだろ!』
「確かにこれはきわどい……っ!」
と改めてまじまじ見た詞幸は生唾を飲んだ。
いわゆるビキニアーマーに近い恰好なのだが、プールのときの季詠のビキニ姿よりも全体的な布地は多い。しかし隠すべき部分の露出は逆に過激で、穿いているのはほぼTバックだし下乳など半分近く出てしまっている。
正に愛音の欲望の具現化と言えるだろう。
『このヴァーチャル・キョミを着せ替えてあんなことやこんなことをするのも最高なんだが、さらにそれをキョミ本人の前でやって恥ずかしがらせるのもまた格別だぞ!!」
酷いセクハラだ。詞幸はそう思ったが、ヴァーチャル・愛音を作った彼にはその危険な趣味を否定することができなかった。