第151話 初めての共同作業②
愛音の猛抗議を受けた詞幸がアバターを作り直し、ようやっとゲーム本編を開始することとなった。
要望通りに女性となった詞幸のアバターを見て愛音が一言、
『随分ロリロリなキャラだな……』
呆れたように零した。
詞幸のアバターは設定の下限まで身長を小さく、胸も極限まで小さくされており、顔は少し丸みを帯びた形で、幼い印象を受けるものだ。
これには深い理由がある。
詞幸が作った男性アバターは一応愛音に披露したのだがやはりあえなく却下され、かといって新しく一からアバターを作り始めると時間がかかって愛音に迷惑をかけてしまう。
そう考えた詞幸はとある既存のデータを流用することにしたのだ。
愛音にそっくりなアバターを。
このゲームをダウンロードし、アバターを自分好みに設定できると知った彼は、迷うことなく惑うことなく、神の啓示でも受けたかのように『愛音さんそっくりに作る』と、考えるよりも先に手を動かしていたのだ。
誰が彼を責められようか。
そのときの彼は一心不乱だった。邪な気持ちなど一切抱かず、ただ本物の美を追求するために、寝る間も惜しんで作業に没頭した。それはさながら、敬虔な信徒が祈りのために聖女の像を彫るようであった。
そうして出来上がった愛音の似姿。
ロリロリな体型、ツーサイドアップの髪型、少し勝気だがパッチリした瞳に愛らしい顔立ち。
そんな彼女が画面の中で歩き、飛び跳ね、表情をコロコロ変えるだけで、詞幸は『はわあ~~~』と気色悪い声を出していたものだ。
彼自身その出来は快作であるという自負はあったが、しかしそれをそのまま使うことなどできはしない。もし使ったならば、
『え? これアタシ? こんなに可愛く作ってくれるなんて……。うー、て、照れる///』
となるか、
『は? アタシにそっくりな自キャラ作ってナニさせようとしてたんだよ。キモすぎるだろ。死ね』
となるか。――十中八九後者であろう。
(そんなことになったら本当に死んでしまう!)
そう考えた詞幸は、時間をかけずに誤魔化そうと、髪型と目の色だけ修正し、顔の印象を変えることに成功したのである。
だが物の数分で作り終えてしまったがために致命的な問題が発生していた。
『デフォルトカスタムじゃないのにこんなに早くできるなんて、お前このキャラ元々作ってたヤツだろ』
このゲームを熟知している愛音にはバレバレだったのである。
『はー……、まったく嘆かわしいな。おっぱいはぺったんこだしちんちくりんで全体的に肉付きが悪い。顔もどことなく攻撃的で女らしくない。こんな女の魅力がカケラもないような貧相なキャラを作るなんて正気を疑うぞ』
まさか自分の姿が忠実に再現されているとは思わず盛大な自爆を披露する愛音。
「は、はは……そうかな……」
言葉にできない憐憫と罪悪感から、詞幸は渇いた笑いでその場を凌ぐしかなかった。