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第148話 勉強会⑦

「んっ――ああ~~~~~~」

 腕を上げて首を回すとポキポキと小気味いい音がした。

 閉め切った室内のためわからなかったが長いこと集中していたようで、カーテンを薄く透かす陽の光は西から射すようになっていた。

 詞幸(ふみゆき)が伸びをしていると、弛緩した空気が伝播したように皆も顔を上げて肩の力を抜いている。

 織歌(おるか)は眼鏡を外して目頭を揉み、詩乃(しの)は足を横に投げ出している。

「このあたりで少し休憩といたしましょうか」

 御言(みこと)も軽く首を動かしながら言った。

「『15・45・90の法則』というものがあります。人が深い集中ができるのは15分間のみで、通常の集中が保てるのも45分までと言われているのです。大人なら90分持続するそうですが、わたくしたちの場合は授業時間とほぼ同じ45分で休憩をとるのが適切でしょうね」

「そうだね。折角だし上ノ宮(かみのみや)さんが持ってきてくれたお菓子を出そうか」

 詞幸が首肯し立ち上がりかけた、そのときだった。

「皆さんいらっしゃあい!」

 快活な声と共に、一人の女性がドアを勢い良く開けて入ってきたのだ。

 よそ行き姿の、三十代後半と見えるショートカットの女性だ。

「母さん!?」

 その闖入者を、詞幸は驚愕と焦燥が合わさった声で迎える。

「こんにちは、詞幸の母です」

 女性――詞幸の母親は口をパクパクさせている息子の隣で膝を折り、3人の少女に向かって慇懃な自己紹介をした。

「お邪魔してます」「お邪魔してま~す」「お邪魔しています、お母さま」

 三者三様の返しを受けた詞幸の母親はどこか満足げにうんうんと頷く。

 そして彼女は、期待に満ちた目で3人の顔を順繰りに見ながらこんなことをのたまった。

「ところで、皆さんは詞幸とどういったご関係なんですか? 男女の仲に発展してますか?」

「ちょおおおおぉぉぉぉぉぉっ!?」

 飛び上がらんばかりの勢いで母親の暴走を止めに入る息子。

「いきなりなに言ってんの!? そもそもなんでいるの!?」

 学生時代の友人と出かけてくる、と言って出ていったのだが、予定よりも随分早い帰宅だ。

 本来であれば皆をこの母親に会わせずに済んだのに。

「なんでって――友達に急用ができちゃったのよ」

 唇を尖らせて言う。

「そんなことより! 友達と勉強会するって言うから男の子が来ると思ってたのに、帰ってきたら玄関にあるのは女物の靴ばっかりだからビックリしちゃったじゃない! どうして言ってくれなかったのよおっ!」

「どうしてって……嘘は言ってないよ、みんな同じ部活の友達なんだからっ。わかったでしょっ? ほらもう出てってよ!」

 腕を持って無理矢理立たせようとするが、物凄い力で抵抗されてしまう。

 3人を吟味するようになおも重ねられた質問には、母親としての務めを果たさんとする強い意志が籠められていた。

「実際、この子のことはどう思ってます? あ、もちろん恋愛的な意味ですけど」

「もうお願いだらかやめて!! ていうかなんでさっきから敬語!?」

「あら、だって仲良くしておきたいじゃない。未来の義理の娘になるかもしれないんだから」

「母さんんんんんん!?」

「で、あんたはぶっちゃけどの子狙いなの?」

「俺もうこの人の息子やだああああああああああぁぁぁぁぁッ!!」

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