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第126話 水着とプールと⑪ 風紀の乱れ

(……これは由々しき事態だ)

 皆がはしゃぎ騒ぐなか、織歌(おるか)は一人暗澹たる気持ちを胸にわだかまらせていた。

(さっきから猥談しかしていない!)

 その惨状に頭を抱える。

(パイスラがどうとか官能小説だとかバイブにしか見えないペンライトとか乳首の色がどうとか乳輪がはみ出してたとか!)

 今日のことが思い出に変わったとき、《部活の仲間たちとプールに行った記憶》として蘇らせるにはあまりにも下品な内容である。

(確かに性的好奇心の絶えない年頃だというのは理解できる! だがいくら何でも明け透けに過ぎるだろう! 高校生の夏ってのはこんなものなのか!? もっと爽やかな青春っぽい感じにはできないのか!?)

 普段から話術部の会話は上品なものばかりでないのだが、今回は特に酷かった。

(特にあの2人(・・・・)月見里(やまなし)の乳首を触ってしまうし、かつてないほど風紀が乱れている!)

 夏休みで浮わついた心がそうさせるのか、水着姿という特殊な状況がそうさせるのか。恐らくは両方だろう。

 なんにしてもやることは変わらない、と彼女は決意を新たにした。

(話術部の風紀はわたしが守る! そして月見里と女たちがみだりに接触するのも許しはしない!)

 人知れず拳をぎゅっと握りしめたあと、織歌は早速行動に移った。

「おい、今度はビーチボールで遊ばないか?」

 頭よりも一回り大きい、ビニール製の透明なボールを取り出す。話が卑猥な方に向かう悪い流れを断ち切り、健全に体を動かして汗を流そうというわけだ。

「おっ、用意がいいなルカ。やろうやろう!」

 その声を合図として、全員で大きな輪を作るように広がった。

(ふっ、所詮は小鳥遊(たかなし)。ボールに釣られて目を輝かせるとはまだまだお子様だな)

「んじゃ、アタシからいくぞー。それー!」

 愛音(あいね)が打ったボールは山なりの軌道を描き、御言(みこと)の元へと飛んでいく。

 が、若干高い。オーバーハンドパスでも届かないと判断した御言は、その場でジャンプして次に繋いだ。

「はいっ」

 着地の瞬間、ぽよん、と胸が揺れた。

 何度かのラリーのあと、再びボールが愛音に回ってきた。

「おりゃー!」

 山なりの軌道、またも高い位置。今度は季詠(きよみ)に向かっていく。

「ちょっと高いけど、ジャンプすれば――――ほっ」

 空中で見事に打ち返し、危なげなく水底に足をつける。

 たゆんっ。

 季詠のボールは愛音の所に戻っていき、彼女は当然のように山なりの高いボールを弾いた。

「ぬおー!」

 その軌道の下にいるのは紗百合(さゆり)だ。

「えぇーっ。こんな高いボール届かな――あぁー……」

 伸ばした手はジャンプをしてもボールを捉えることなく、後ろに逸らしてしまった。

 ゆさっ。

 水着に支えられた胸が盛大に揺れる。

「………………………………」

 それらの様子を黙して見ていた織歌は気づいてしまった。

(おのれ小鳥遊ぃぃぃ! この巨乳好きめぇぇぇ! 跳びはねた瞬間の乳揺れを見たいがためにふざけた真似を! なんて絶妙なコントロールなんだ! やはりこいつが風紀を乱す元凶!!)

 エロに対する恐ろしい執念である。

(くっ、こいつのせいで月見里の鼻の下が伸び切っている! このままではまずい!)

 リビドーを抑えきれないほど昂った男はどんな行動に出るかわからないのだ。これ以上興奮させてはならない。

 そう考えた織歌は、

「また高いボールよ!? あたしじゃ届かな――あ!」

「ふん!」

 紗百合に飛んでいったボールをインターセプトして跳ね返した。

(お前の思惑通りにはさせないぞ、小鳥遊!)

 輪の中央に陣取り、ボールが打ち上げられた瞬間、着地点を予測して元水泳少女の素早い泳ぎで回り込み、巨乳たちに飛んでいったボールを軒並みブロック。次々と弾き返していく。

「はっ!」「やっ!」「たぁっ!」

 それは相当な運動量となり、織歌は肩で息をしていた。そんな彼女に声がかけられる。

「んふふっ。縫谷さん、今日はなんだかとってもはしゃいでるのね。部室ではいつもおとなしいからみんなと馴染めてないのかなってあたし心配してたんだけど、杞憂だったみたいね」

 紗百合が生徒を慈しむ教師の顔になっていた。そこに愛音が横槍を入れる。

「ボール遊びではしゃぐなんて意外とお子様だよなー、わははっ」

(く、くっそおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~ッ!)

 己の滑稽さが恥ずかしいやら情けないやら、歯噛みして拳を震わせる織歌であった。

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