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第125話 水着とプールと⑩ アブナい水着

「ううっ、こんなことならラッシュガードも用意しとけばよかったよ……」

 ラッシュガードは日焼け対策用に着用するアンダーウェアであり、男性の美意識の向上とともに着用率も上がっているというが、詞幸(ふみゆき)は日に焼けることに頓着していないうえ、肉体美を見せつけるのには邪魔だと用意していなかったのだ。

 詞幸は恥ずかしさのあまり首まで浸かって体を水中に隠した。

「それならばほかの水着に着替えるのはいかがですか?」

 御言(みこと)は両手を胸の前で合わせて伺うように首を傾けた。

「来る前にお渡しした素敵な水着があるではないですか」

 彼女の言う『素敵な水着』とはスリングショットのことである。

「ああ、あの水着ねえ……。着てみたけど乳首は全然隠せなかったよ。紐の角度が悪いのかな」

「えっ!? 本当にあれを着たのですか!?」

 度肝を抜かれて目をいっぱいに見開く御言。

「だって折角用意してくれたんだし1度は試着しないと申し訳ないよ!」

 悪ふざけのためだけに購入したとわかっているのに着用するあたり律儀な男である。

「ちょっとサイズが小さかったからお尻にやたら食い込ん――」

「感想を詳細に話さないでください! 想像してしまうではないですか! 耳が腐ります!」

 怒声を発しつつ耳を塞いで背中を向けた。

 用意した張本人なのに散々な言いようだった。

「あっ、凄い水着ならさゆりんも持ってたぞ! アレ、ミミが用意したものだったのか!」

 愛音(あいね)がポンと手を叩いた。

「ちょっ小鳥遊(たかなし)さん!? その話は――」

 慌てた紗百合(さゆり)が制止しようとするが、プールの水に阻害されて愛音の元に辿り着けない。愛音は構わず続ける。

「アタシらから離れた所で隠れて着替えてるから、女同士でなに恥ずかしがってるんだと思って覗いてたんだよ。そしたら――」

 鼻息荒く勢い込んだ。

「ほとんど紐みたいなスケベ水着に着替えてて! すぐ脱いじゃったけどめっちゃエロかったぞ! おっぱいなんてほとんど丸出しで(にゅう)り――」

「ぎゃああああああッ! そんなことまで言わなくていいのよ!」

「むぐもごもがっ!」

 絶叫を響かせ、紗百合はようやっと愛音の口を手で塞ぐことができた。

 若干手遅れだったが。

「いやぁ、ウチもナッシーと一緒に見ちゃったんですけどぉ~」

縫谷(ぬいや)さんも!?」

 嘲るように軽薄な笑みを浮かべる詩乃(しの)に紗百合は絶望する。

「ユリせんせーのスケベ水着姿マジやばかったですよねぇ~。AVでよく見るようなカッコでぇ~」

「……縫谷さん、AVよく見るの?」

「………………………………」

 無言のまま、詩乃はブクブクと水中に沈んでいった。

 着た者も着ていない者も辱める。

 スリングショットはアブナい水着だった。

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