第122話 水着とプールと⑦ 悲しい告白
「ごめんごめん! ちょっと取り乱しちゃって」
冷静さを取り戻した詞幸はにこやかで爽やかな笑顔を作った。
「みんな水着が似合っててとってもエロ――ゴホンッ。とっても魅力的だよ!」
「スケベ心が出てるわよ」
「言い直しても全然取り繕えてないよ……」
紗百合が半目で睨み、季詠は胸を抱くように隠した。織歌も追い打ちをかける。
「ふん、猿だな。まぁ月見里ごときに紳士的な言動など期待していないが」
「てか相変わらずボキャ貧だよねぇ。そういうありきたりで誰に対してでも一律同じな感想じゃつまんないからさぁ――」
詩乃が女性陣全体を示すように腕を広げた。
「ハッキリ答えて。この中で誰が1番エロいと思う?」
「そんなこと聞かないでよ! 言えるわけないじゃん!」
詞幸はブンブンと首を横に振って回答を拒絶した。
しかし。
「――――――(チラッ)」
目は口程に物を言う。
どうしても視線が吸い寄せられてしまうのだ。
1年生の中で1番大きいと男子生徒たちがよく話題に挙げる、豊満な季詠の胸元へと。
「もおっ、月見里くんのエッチ……!」
その視線に気づいた季詠は胸を隠すどころか完全に背を向けてしまう。
「はいはい、わかってましたよぉ~だ」
興味の失せた投げやりな表情で肩を含める詩乃。
「わはははっ、お前がキョミのエロさに勝てるわけないだろ。その胸のフリフリもサイズを誤魔化すためのものだもんなー。同じ貧乳としてアタシの眼は騙せないぞ、しののん!」
「誤魔化してるんじゃないし! デザインが可愛いから選んだだけだし!」
「おいおい見栄張るなよー。パッド入れて嵩増ししてるのはバレてんだぞー?」
「くっ! こいつ!」
「にひひひっ、怒った怒ったー」
掴みかかろうとした詩乃の腕をひょいっ、と避けて愛音は御言の後ろに隠れた。
「こら逃げんな!」
「うっさいバーカ! お前の悩みは贅沢なんだよ! 胸が成長しないから誤魔化そうなんてズルいぞ! アタシなんてなー! 誤魔化してどうにかなるレベルですらないんだぞ!」
御言の背から顔を覗かせた愛音は、悪戯な笑みから一転して涙目だった。
「これ小学生のときに買った水着だぞ! 毎年毎年『今年はもう入らないだろ』って期待してんのに全然キツくないんだよ! ジャストフィットだよバカヤロー!!」
それはあまりにも悲しい告白だった。
「一緒に遊んでると兄貴が悲壮感漂う目になるから今年は家のビニールプールにも1回しか入ってないんだぞ!!?」
「え……高校生にもなってビニールプール……マジ?」
「しかもお兄さんと………………うっ、愛音さん……」
あまりにも、あまりにも悲しい告白だった。