表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

幻想魔詩

闇の王は恐れていた 人の生命を奪うことに


かつて愛した者との約束が 闇の王を恐れさせていた


闇の王への復讐のために

人間たちは徒党を組み大軍となった


闇の王が守り住まう地に 大破壊をもたらすために


それは未来において

闇の王という脅威を人々から除き去るため


傲慢なる正義に突き動かされて


大軍となった人間は 闇の王へと歩みゆく

闇の王の心情を知らずに


闇の王が守る地には か弱き民たちがいた


人々に虐げられた民たちは 闇の王によって守られていた


緑葉の木々が満ち 神聖なる大樹がある森林

穏やかなる風が吹く 花々が咲き乱れる草原

人身未踏を成し続ける 荒美なる山々

それらから成る一つの楽園


人間という大軍は その楽園を破壊しようとしているのだ


ゆえに、楽園に住まうか弱き民たちは

己たちの住むべき場所の喪失を恐れた


仲間の生命が奪われるのを 見たくなかったのだから


闇の王は意を決した


己が守護地に迫る

人間の大軍という火の粉を払い返すことを


その意に従するように 荒美なる山々に住まう竜たちは

闇の王の言葉に従い 守護地の前線へと防壁を成した


すべてはか弱き民たちを守るために


闇の王の守護地へと

人間たちは己が得物を 掲げながら攻め立てる


闇の王と竜たちは守護地の前線にて

破壊のために進軍する

人間の大軍を退けるために その歩みを阻むために

己たちの威を持って 踏破されざる絶対の防壁と化した


人間たちのなかで 英雄と称されし者らが

闇の王の守護地に現れた


彼らの目的はただ一つ

己が内に秘めし 正義感に突き動かされるままに

闇の王を討つことだ


闇の王を望みを先入観にて誤り解する

人々の称した英雄たち


それは愚かしき暴威と称するにたるもの


ゆえに闇の王は

剣を持って英雄たちの暴威を

完膚無きまでに打ち砕く


嗚呼、人々が英雄たちに託した

愚かしき望みは ここに潰えた――


竜たちの威によって 歩みを阻まれている

人間の大軍に途方なき絶望が臨む


望みを託した英雄たちが

皆、闇の王によって敗北を喫したのだから


英雄たちによって高められていた士気は

英雄たちの敗北により地に墜落する鳥のように

墜ちていった


そして、今まで彼らが戦っていた竜たちが


英雄たちの喪失により

途方もなく強大で勝利しえない存在へと

内に膨れ上がった恐怖にて 大軍を為す人間たちの瞳に写った


ゆえに彼らは

闇の王の守護地という戦場から撤退という逃亡を余儀なくされた


そして彼らは語り継ぐ

闇の王と竜たちの恐怖を 次代を為す子らに


撤退する人間の大軍を竜たちは眺めていた


これ以上、彼らが

楽園へと攻め立てることがないと理解したから


これ以上の追撃は

闇の王が望まないと知っていたから


そして、愚かしき暴威に 立ち向かい、打ち砕いた

闇の王は安堵した


人間たちの生命を これ以上、奪わなくてすむことを


愛した者との約束を 綻びつつも守れたことを



こうして、現在と未来 双方の脅威を巡る

一つの戦争は終焉を迎えた


そして、闇の王の願いは悠久の年月の果てに

楽園に住まう民たちからの祝福とともに

叶えられたのだ――


<終>



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ